勇者?
国の拡張は難しいよね。
どうしても食糧問題が発生する。
作物の研究をしてくれる人はいるけど、育てるのは重労働。
人気がある職業では無いね。
給料を上げるか補助金を出すか、何か役得があるのもいいのかもしれないね。
一番は野菜などの作物を育てるのが大好きな人に仕事して欲しいな。
多くの奴隷を解放して、この国で農作業に就いてもらう事は可能だと思う。
だけど、将来的に必ず他の住民と問題を起こすと思う。
それが凄く嫌だ。
獣人の中に作物を育てるのが好きな人たちがいたらいいよね。
子供を勉強させるのは一緒でも大人が農作業をしてくれる。
子供が全て親の職業を継ぐとは思えないけど、最初に仕組みができればいいんだよ。
大農場を作って、区ごとに担当制にするとか何か方法が無いかな。
やっぱり、私も知識が足りないね。
私の力で大量の作物を育てる事が出来ると思うけど、それは違うよね。
難しい問題ばっかりだけど、絶対に解決策はあると思いたい。
んん?
珍しい反応だ。
検問兵が対応に困ってる。
冒険者の一件の後は国の中に入れる人は相当少なくなったはず。
すぐに追い返せばいいのに困っているのが不思議だよ。
あれ?
だんだん検問兵が怒り出している。
大きな問題になる前に私が出て行こう。
念話。
「マリアンネ。入り口で問題が発生しているから付き合ってもらってもいいかな?」
「はい。大丈夫ですよ」
転移魔法。
マリアンネを連れ去るように検問所に向かった。
「お疲れ様。どうしたの?」
「シャーロット様。ここに来てはなりません」
「そうです。すぐにお帰り下さい」
あれれ。
追い返されそうだ。
代わりにマリアンネが話し始めた。
「どうしたと言うのだ?」
「勇者の一行が来ました」
何それ?
勇者って名前の人?
マリアンネは驚いているみたい。
「勇者だと!どこにいるんだ?」
「ああ、検問所の奥に押し込んだのですが、出て来てしまいましたね」
「おい。邪悪な吸血鬼。今すぐ討伐してやるよ」
「あれが噂の吸血鬼ですか。そんなに強いのですか?」
「どうでしょうねー。所詮は噂ですから」
「油断しないで下さい。勇者だからって何でもできる訳ではないのですよ?」
私を殺しに来たの?
男性2人と女性2人の4人だ。
剣士2人と魔法使い2人みたいな格好だね。
「マリアンネ。私を殺しに来たって事は殺してもいいの?」
「勿論です。相手から殺されに来たのですから」
魔法使いの1人がマリアンネに魔法を使おうとした。
魔法取消。
「おい、お前。マリアンネに魔法攻撃をしたな。殺すの決定だ!闇魔法」
「魔法攻撃されましたか?分かりませんでした」
倒れた男に女の魔法使いが駆け寄っている。
無視しよう。
「魔法の発動を消したから大丈夫だよ」
「そうでしたか。ありがとうございます」
「死んでいます。これでは助けられません」
女の魔法使いが必死に声を出してる。
「許さんぞ!仲間を殺した報いを受けさせてやる」
男の剣士が喚いている。
「馬鹿かお前。そっちから殺すつもりで攻撃してきたんだろ。死ぬ覚悟もないなら攻撃するな」
私の言葉を聞いて怒ったのかな?
剣を向けて走ってきた。
闇魔法。
また、倒れた男に女が駆け寄っていく。
「死んでいます。助けられません。相手が強過ぎます」
「俺は勇者だ。絶対に逃げない」
「逃げなくてもいいけど、死んでもいいんだよな?」
「笑わせるな。俺に即死魔法は効かない。お前の得意な魔法は俺には関係ない」
「そうなんだ。試すね。闇魔法」
「魔法を使ったのか?効かないだろう。勝負が見えたな」
特殊な防具を身に着けているのかな?
闇魔法。
「何だこれは?俺の体を喰っているのか?痛っ、痛い、痛いよ」
「勇者様大丈夫です!」
女の魔法使いが魔法を使おうとしている。
魔法取消。
念力。
「痛い?死なないんだよね?もう少し痛い方がいいかな?」
「助けてくれ。おい、何で助けない?どうした?」
必死に女の魔法使いに助けを求めている。
自分の力じゃ何もできないのか?
本当に馬鹿じゃないか。
「喰われているみたいだけど死なないの?知識として知りたいから見せてもらうよ」
「私も気になります。死なないのですかね?」
「ちょっと味気ないからもう少し分かりやすい魔法にしよう。闇魔法」
「なるほど。首飾りだけ魔法をかき消しているように見えます」
「闇魔法だけかき消すのかな?光魔法」
「光の雨はかき消していないようですね。闇魔法だけですね」
「そういう首飾りは作れるの?」
「ダンジョンの中に落ちていたりします。古代の遺物と言われています」
「幸運だね。ダンジョンに潜らなくても貰えるよ」
「そうですね。運がいいですよ」
マリアンネと話しているのに男の悲鳴がうるさいな。
そうだ、あいつの声だけ聞こえなくしよう。
沈黙。
「煩いからあいつの声だけ聞こえなくしたよ」
「本当に何でもありですね」
「大切な事を忘れていたよ。女の記憶を覗こう」
誰だろう。
こんな馬鹿に噂を吹き込んだの。
最悪だよ。
あの大バカだよ。
暇潰しにしては意味が分からない。
こいつらに何か言っているな。
「私の祖国を救って下さい。勇者様、私も後から追いかけます」
男がそろそろ喰われそうだ。
誰も気にしていないけど。
「マリアンネ。もうすぐ世界一のバカがやってくるよ。煩くしてごめんね」
「凄い嫌な予感がしますが誰ですか?」
「ジェラルディーンだよ。あいつ煩いんだよ。面倒くさい」
「え、え、ええーー!シャーロット様、何を言っているのですか。その名前は厄災ですよ?」
マリアンネが壊れた。
いつも冷静なのにどうしたの?
「ただの火吹きドラゴンだよ。今度来たら5回目だよ。4回も相手してるんだよ?酷くない?」
「4回も相手しているのですか…。本気で街長辞めさせて下さいよーー!」
マリアンネがおかしいね。
そんなに慌てる相手かな?
「そんなに慌てなくてもいいよ。あいつ、私が記憶を覗くの知ってて、こいつらを伝言扱いしたんだよ。有り得なくない?ところで、勇者って何?」
「え、え、ええとですね。勇者とは魔王を倒す為に存在する人の英雄みたいなものです」
人の英雄が勇者なんだ。
「じゃあ、魔王って何?」
「そのままです。魔族の王様です」
「この世界に魔族って種族いるの?」
「ダンジョンの底にいると言われていますが、私は見た事がありません」
「じゃあ、この勇者馬鹿じゃん。何で地上の私を倒しに来たんだろう?」
「確かにそうですね。何がしたかったのでしょうか?」
あ、男が食べられた。
ネックレスは貰っておこう。
触ってみると効果が分かった。
「このネックレスは魔石を加工してあるだけだよ。マリアンネにあげる」
「いいのですか?それでは頂きます」
ああ、女を止めたままだった。
動けるようにしてあげよう。
「ねえ。君たちジェラルディーンに遊ばれただけだよ。本当に何しに来たの?」
「勇者は勇者です。神に選ばれた剣も持っているのです」
あの剣も凄いのかな?
持ってみよう。
ふーん。
これも魔石を加工して光魔法を入れただけだね。
「こんな剣は何本でも作れるよ?騙され過ぎだよ。それで一応、君は襲ってこなかったから生かしてあげてるけど、やっぱり私を殺すの?」
「そ、それは…。私たち3人は厄災のドラゴンに攫われていたのを勇者に助けて頂いたのですよ」
「それは、あいつの演技だよ。自分で攫ってきて、馬鹿な男を持ち上げて、魔石の剣をあげて倒された振りをしただけ。ドラゴンから人型になるだけで封印が解けたとか言ったんでしょ?」
「そ、その通りです。私たちは本当に馬鹿なのですね…」
「君は私に殺意がないから故郷に帰してあげようか?」
「私の故郷は厄災のドラゴンに焼かれているのです」
ほら、焼いてるよ。
とりあえず、火を吹く癖を止めろって言ったのに。
「ごめんね、私がちゃんと言ったのに。とりあえず、火を吹いて遊ぶ癖が治っていないみたいだよ」
「シャーロット様の会話を聞いてると、厄災のドラゴンを説教したように聞こえますが?」
「するよ。悪意無く火を吹くとか馬鹿でしょ?強者がいないのが悪い!とか言って笑ってるんだよ?人が少ない時は尻尾を斬って皆に食べてもらったけど、今は人数分なさそうなんだよ。どうしよ?」
「悩む所がおかしいですし、食べたって…。壊れたと思っていた私の常識がまた壊れました」
「君は悪意無いし街で一緒に暮らす?」
「はい!よろしくお願いします、シャーロット様。私はレナーテです」
凄い切り替えの良さだね。
生き残る為に身に着けたのかな?
それはそれで、少し悲しいな。
「レナーテは何が得意なの?」
「特に無いです。すみません」
「じゃあ、孤児院を手伝ってあげて。子供の相手はできるかな?」
「はい。子供の相手なら大丈夫です」
「マリアンネ、問題あるかな?」
「孤児院は人が足りないと思っていたので助かりますね。お願いします」
あー、探知範囲を出たり入ったりして挑発してる馬鹿がいるよ。
殺そうとするなら殺される覚悟も必要ですよね。




