閑話 アンゼルム 歴史の授業
ハーラルトから話を聞いて歴史の授業を受ける事にした。
神国シェリルの事はある程度知っているつもりだったが受けた方がいいらしい。
里長命令で全員強制参加させる事にした。
せっかく移住できたのに簡単な事で手放すのは馬鹿らしい。
妖精犬の女王がわざわざ忠告しに来てくれたみたいだ。
それを踏みにじるのは愚か者だろう。
歴史の授業を受けるという事に少し不満気な奴もいるが選別をもっと厳しくするべきだったか?
移住した国の歴史を知る事は大切な事だろう。
住民として知るべき知識がたくさんあるはずだ。
学校に皆で入り歴史の授業を受ける。
一度で全て学べる訳ではないそうだが、それも当然だろう。
500年以上の歴史があるのだから。
そして、歴史の授業を受けて心の底から安堵した。
絶対に知らなければいけない内容だ。
知らずに過ごしていたら、どんな勘違いをしたか分からない。
軽く歴史に触れただけの授業なのに、里長として持っていた情報と大きく違う。
シャーロット様が人間と獣人を住民として受け入れてくれるのが奇跡的だと思ってしまう。
常に人間と獣人が加害者だ。
そして、この国は被害者ばかりが住んでいる。
シャーロット様を苦しめてきたのも人間と獣人だ。
自分たちの都合のいいように利用してきた。
流石に連れて来た奴らも黙っているな。
ここで不満を言い出すなら追い出してもらっていたところだ。
「ハーラルト、ここまでとは思っていなかったな。知っていた情報は役に立たないぞ」
「本当にそうだな。人間と獣人が愚か過ぎて嫌になるぜ。他種族と一緒に暮らせるのは確実にシャーロット様のお陰だろう。絶大な信頼があるから人間や獣人の所業が許容されている」
俺たちは何もしていないから関係ないとは言えない。
子供を多く攫われていたから同じ被害者だとは言えない。
人間と獣人はそれだけ酷い行いをしてきたのだから。
恐らく現在進行形で酷い行いをしている国もあるだろう。
シャーロット様はそれを理解しているから他国の情報を知ろうとしないようだ。
知ってしまうと子供を助けたくなるから。
子供を助けると言っても無制限に受け入れる事はできない。
だから、シャーロット様は我慢をしている。
孤児院に空きがない限りは動かないそうだ。
子供をとても大切にしているし国の事も考えている。
ヴィーネ様はシャーロット様を理解しているから、知っていても何も言わない。
国長をしているのもシャーロット様の為であり、絶対に守ってもらえると勘違いしてはいけない。
シャーロット様が土地神様としてこの地にいるから国長をしてくれているだけ。
そして、シャーロット様もこの国を守る理由は特に無いそうだ。
ここまで守ってきたのだから途中で投げ出さないようにしてくれているだけ。
余りにも知っていた情報と違い過ぎる。
絶対に守ってもらえると勘違いした奴らが選別で飛ばされている。
考えれば当然の話だろうに。
土地神様と崇めながら自分たちを守れと命令している訳だからな。
「本当の意味でこの国の住民になる為には歴史の授業が必須なのが良く分かる。酒の席で軽口を叩く馬鹿がいたかもしれない。知らないからでは済まない事は分かっているからな」
「ああ、その通りだ。獣人が口にしてはいけない言葉がある。獣人がしてはいけない行動もある。この国の歴史を知り、シャーロット様の歴史を知り、この国に住んでいる種族の歴史を知る。妖精犬の女王、エラの言っていた通りだ。知らない事が多過ぎる。勉強を続けるしかないな」
過去を知る事で今が分かる。
何気ない事にも歴史がある。
土地神りんごが美味しい理由まであるとは。
美味しいからと食べていても問題は無いだろうが、知っていると重みが違う。
土地神りんご酒を独占しようとしたドワーフは追い出されて当然だと思う。
あいつらは歴史を知らず、ただ美味しいからと飲み続けたのだろう。
確実に住民から不満が出る行為だ。
シャーロット様の植えたりんごを独占した訳だ。
許されるはずがない。
「今後も歴史の授業は里長命令で強制参加させる。この国の歴史は知らないとまずい事が多い。当然だが全てにシャーロット様が関わっているからな。その他の授業は就きたい仕事に応じて個人の判断に任せるよ」
「それが一番だな。仕事はなるべく好きな職業に就かせてやりたいし、それが許される国なのだから」
自由がある国だからといって、何も知らない訳にはいかない。
里から連れて来た同胞も分かっただろう。
恵まれた環境に移住できたんだ。
この国の歴史は住民として必須の知識だと思わなければいけない。
この国の歴史は重いですからね。
何も知らずに見当違いな発言をすると飛ばされてしまいますね。




