閑話 ジェラルディーン 愛娘たち
クリスタは少しずつだけど着実に強くなっていくわね。
組手が最高に面白いわ。
体が破裂するのを恐れているから魔力の吸収に手間取っているのね。
姉やシャルみたいにどんどん破裂させる異常者じゃない限り仕方ないわ。
今回のお祭りの前は色々とあった。
絶対にヴィーネが話したがっているはずだわ。
お酒を適当に買った後、ヴィーネを連れてりんご林に来た。
土地神りんご酒を飲みながらヴィーネに話し掛ける。
「さあ、ヴィーネ。話したい事があるんでしょ?言ってみなさい!」
「叔母さんのせいで世界崩壊しそうだったの知ってる?知らないでしょ?」
私のせいで世界が崩壊する?
姉のせいなら分かるけど私が何かしたかしら?
「姉のせいなら分かるけど記憶にないわよ?」
「母さんが全てを解明してくれたよ。混沌期は地下世界で魔人を殺し過ぎた叔母さんの姉の責任だよ。そして、世界樹を吹き飛ばしたせいで、あと1000年で世界崩壊するところだったよ。反省してよね!」
もしかして、姉が魔人を殺し過ぎたせいで瘴気が地上に溢れたの?
魔人が極端に減っていたから瘴気の消費が少なくなっていたのね。
私は一生懸命に姉の尻拭いを地上でしていた訳か…。
それよりも、世界樹を吹き飛ばしたのは確かに私だけど、世界崩壊するの?
世界樹って世界を守る木だったって事かしら?
精霊がこの国にいるし、新しい世界樹を植えたのはその為だったのね。
よし…!
計算通りね。
「知っていたわよ。まだ余裕があるから放置していただけだわ。姉の尻拭いもしたし完璧な対応じゃない。どこに反省する要素があるのかしら?」
「平然と嘘を吐くね。正直に反省したらどうなの?母さん大変だったんだからね。母さんが全力で魔力放出を2回もしたんだよ。その後10日も寝込んだんだから」
シャルの全力魔力2回分。
この星を何回破壊できるかしら?
「逆に気になるけど、シャルは何で世界樹を育てられるの?ヴィーネはできないでしょ?」
「世界樹は世界を3層に分ける為に存在するって精霊が言っていたからね。地下と地上と空。予想が付いたでしょ?母さんには3層の血が入っているの。私は能力的には母さんと同じ事ができるけど、血はドラゴンなのよ。だから育てる事ができないの」
どんな偶然なの?
いいえ、運命かしら?
姉がシャルに血を与えてシェリルが育てた結果、シャルには3層の血が入っている。
更に私がシャルにヴィーネを任せていなければ世界樹を植える事ができない。
私は植える気がなかったからね!
「奇跡みたいな状況ね。でも、私のお陰であなたは世界樹を植える事ができるのよ?分かってる?」
「何で自分のお陰みたいに言えるの?そもそも世界樹を吹き飛ばす方がおかしいよ。世界の名前が付いてるんだから少しは考えようよ。頭悪過ぎるよ!」
本当に生意気な娘ね。
私とシャルに似ているから余計に腹が立つわ。
「何を言ってるのよ?私がシャルにあなたを任せた結果、あなたは世界樹を植える事ができたのよ。全て私のお陰じゃない。完璧な対応だわ!」
「全然反省する気ないじゃない。そもそも、私に反省しろとか言ったけど、竜王が国にいないから馬鹿な兄に誘惑される馬鹿なドラゴンが大量にいたんじゃない。竜王が馬鹿だから竜の国は馬鹿なんだよ」
ドラゴンがあそこまで馬鹿だとは思わないじゃない。
私に勝てると思っているなんて身の程知らず過ぎて驚いたわよ。
「私が竜王になる前からドラゴンは馬鹿なのよ。致命的な程馬鹿なの!もう無理なのよ。シャルの見せしめを見ても誰も鍛えようとしないもの。蜥蜴は生きているから負けてませんとか言うのよ。流石に笑えないでしょ?泣きながら帰って来た蜥蜴が全く反省してないのよ。殺すしかないじゃない」
「だから島に時空魔法を放ったんだ。あそこまでやられて負けてませんは笑えないね。島に飛ばしてから殺したのは長老もついでに殺そうとしたの?長老を探す気がないからどうなったか知らないけど、まともな状態ではないだろうね。島の半分吹き飛ばすとか、本当はもっと醜悪な事言ったんでしょ?腕も足も切り落として見せしめでも良かったんじゃないの?」
この子はどれだけ把握しているのよ…。
力の解放もせずに世界の状況が手に取るように分かってそうね。
我が子ながら強過ぎるわ。
確実にシャルの魔力が濃過ぎたわね。
「殺さないとシャルが気に掛けるでしょ?あなたが元気無いから蜥蜴を回復しようとか考えてたんだから。そうじゃなかったら強烈な見せしめにしたわよ。蜥蜴はシャルに負けたんじゃなくて、あなたに負けたと思い込んでたわよ。グレーゴールと一緒で殺したくなったけど、我慢して話を聞いた私を褒めなさい!」
「そこまで馬鹿なの?そんなの、私だって適切な対応できないわよ。古代種ドラゴンまで相手の力を見る事ができないなんて知らないわよ。褒めるどころか、私に謝って。ドラゴンが馬鹿な責任を竜王として謝って。あんなに怖い母さんを見たのよ」
私だって知らなかったわよ。
同じ古代種ドラゴンか疑いたいくらいよ。
本当に醜悪な種族だわ。
ヴィーネは知らない方がいいわね。
確実に殲滅する。
私が我慢しているくらいだからね。
見せしめ行為をするシャルが怖かったのね。
ヴィーネはシャルが優しくて甘いと思い込んでいたからでしょうけど…。
そんな訳が無いじゃない。
状況によって使い分けているだけよ。
全て自分で対応できるから優しくて甘い対応をしているのよ。
今回はそんな事をする価値のない相手だから見せしめにしたの。
「本当に赤ちゃんなんだから。シャルはあなたの命が狙われたら常に同じような対応をするわよ。殺すか殺さないかは別としてね。優しさや甘さなんて一切ないわよ。それが分かったからいい勉強になったでしょ?私のお陰で勉強できたのですから褒め称えなさい!」
「分かってるわよ。でも、何で褒めないといけないの?竜王が仕事したら何も起きなかったのよ?竜王になった時に殺しておかないからいけないのよ。馬鹿な兄を放置するし謝ってよね。世界樹の件も含めて謝って」
あー、土地神りんご酒の飲む量が増えるわ。
美味しくお酒を飲ませなさいよね。
「本当にしつこいわね。そういう所がシャルにそっくりよ。どれだけ濃い魔力を貰ったの?影響受け過ぎよ。私のお陰でシャルの子になれたのよ。感謝しなさい!あなたには母親が2人もいるのよ。偉大な私の事はお母様と呼びなさい。シャルは母さんでいいわ」
「母さんの子供になれたのだけは感謝しているわ。偉大なのは母さんの方ですけどね、叔母さん!」
本当に私とシャルにそっくりよ。
生意気な所が実によく似ているわ。
「可愛くないわね。照れているだけで、本当はお母様と呼びたいのでしょ?素直になりなさい。あなたが竜王にならないように私が対応しているのよ。感謝するべきでしょ?」
「どんな頭の構造をしていたらそんな発想ができるの?私が竜王になるくらいなら竜の国を滅ぼすわよ。とりあえず、私と母さんに謝ってよね。本当にどっちが素直じゃないのよ。謝罪くらい素直にできないの?」
やっぱり竜の国を滅ぼす気なのね。
まあ、私でも滅ぼしたいから仕方が無いわね。
それにしても、しつこい。
どれだけ謝らせたいのよ。
私が謝る理由が全く無いじゃない。
「全てが私のお陰で上手く行ったの。謝る訳が無いじゃない。ヴィーネはもっと反省しなさい。足りてないわよ?まずはお母様と言えるようになる事ね。お母様のお陰で世界樹を植える事ができましたと言いなさい。まあ、あなたが植えなければ私が植えたけどね」
シャルが来るわね。
どう見ても双子よ!
2人とも生意気な私の娘だわ。
一緒にお風呂に入って、一緒に寝るなんて親子じゃない。
何回お祭りを経験すれば気が付くのかしら?
それも含めて楽しいお祭りだから良しとしましょう。
似た者同士ですから、常に平行線ですね。
じゃれ合っているだけです。




