お祭り
「シャーロット様、ヴィーネ様。本日はお祭りです。よろしくお願いします」
外からマリアンネが声を掛けて来た。
「ヴィーネはどうする?」
「私はいつも通り国の監視をしているよ。叔母さんがクリスタ目当てに来そうだしね」
間違いなく来るね。
前回よりも早く来る可能性がある。
お金持って来るかな?
「じゃあ、私はいつも通り適当に行動するね。リンゴ飴の時間になったら呼ぶよ」
「はーい。待ってるね」
ヴィーネに手を振った後、私は社から飛び出してマリアンネに話し掛ける。
「お祭りの準備で問題はないかな?私にお願いはないかな?」
「お祭りの準備はいつも通り万全です。私のお願いはシャーロット様に自由にして頂く事です」
相変わらず謙虚なんだから。
偶にはお願いを言えばいいのに。
「分かったよ。何かお願いがあったら社に来てね」
「ありがとうございます。では、失礼します」
マリアンネは一礼をして去っていった。
さて、いつも通りの行動をしようかな。
転移魔法。
海底に作った砂浜に移動した。
濡れたくないからね。
セイレーンの族長ユリウスに話し掛ける。
「今日はお祭りだよ。前回と同じように夕暮れの少し前に噴水前で歌を歌ってくれないかな?」
「はい。精一杯歌わせて頂きます」
ユリウスに20万ギルを手渡す。
「歌ってもらう仕事料ね。それと、ユリウスも子供を産みたいと考えているなら教師を他のセイレーンに代わってもらえばいいからね。前以てマリアンネに話せば問題ないからさ。今は国長がヴィーネだし、部族を再興するいい機会だと思うからね」
「お気遣いありがとうございます。部族の再興は悲願でもありますので、マリアンネさんに相談させて頂きます」
ユリウスはセイレーンの代表として教師を頑張っていると思う。
でも、部族の再興の方が大切だと思うからね。
「教師の仕事は大切だけど、気を張り過ぎないでいいからね。セイレーンが増えた方が街も盛り上がるからさ。大勢で歌を歌ってくれる日を楽しみにしているよ」
「本当にありがとうございます」
ユリウスは涙を流して頭を下げた。
そんなに大層な事は言ってないんだけどね。
ユリウスは一礼して洞窟に入って行った。
教師の話を仲間にするのかもね。
念話。
「クラウディア、ちょっと砂浜まで来て欲しい」
「シャーロット様、どうしましたか?」
人魚の長女クラウディアに10万ギルが入っている袋を渡す。
親が死んだばかりだし、お祭りを全力で楽しんで欲しいな。
「はい、皆にお小遣い。今日はお祭りだから街に来てね。皆で楽しんでよ」
「ありがとうございます。必ずお返しをしたいと思います」
みんな気を張り過ぎだよ。
「そんなに気を張る必要はないよ。お金は私が持っているより皆が使った方が街が盛り上がるんだから。魚屋を休日にやってくれるだけで十分街は盛り上がっているよ。お金を返そうなんて考える必要はないからね。学校を卒業しても偶に魚屋をやってくれるだけで十分なお返しだよ」
「ありがとうございます。魚屋は必ず継続します」
「何事も思い詰めないでね。困った事があれば社に来てくれればいいからさ。今日はお祭りを楽しんでね。範囲高位回復魔法。またねー。転移魔法」
クラウディアに手を振って別れ、中央区の噴水の上空に移動した。
国全域に念話をする。
「今日はお祭りだよ。みんな全力で楽しんでね!範囲高位回復魔法。病人や怪我人はいないよね?何か問題があるなら私は孤児院か噴水の近くにいるから声を掛けてね。神国シェリルのお祭り開催だよー!」
「シャーロット様、ありがとうございます!」
「シャーロット様、愛とはなんでしょうか?」
「やっぱり疲れてないわ!世界樹の薬のお陰ね」
「腕の痺れが取れたー!」
「さあ、気合を入れるか!」
マリアンネの言葉が変わったね。
前に歩き出してくれたかな?
転移魔法。
鼻息荒いグレートボアを見ながら考える。
うーん…、足りない気がする。
転移魔法。
グレートボアの倍の大きさのギガントボアを見て頷く。
これなら十分だね。
ギガントボアの心臓を氷魔法で一突きする。
リザードマンの集落に迷惑を掛けない川の位置でギガントボアを綺麗に洗う。
大きいから皮を剥ぐのも内臓を取り出すのも大変だよ。
まあ、半年に1回だし別にいいかな。
転移魔法。
孤児院に移動する。
ギガントボアを念力で浮かせたまま子供たちに声を掛ける。
「さあ、鉄板焼きの準備だよ。全力で行動だよ!」
恒例の掛け声だけど、反応がないね…。
「でかいね…」
「凄くでかいね!」
「でか過ぎない?」
大きさに驚いたみたいだね。
確かにグレートボアの倍だからね。
全長4mくらいあるから、絶対に食べきれない量だよ。
「大きさはいいから鉄板焼きの準備だよ。さあ、全力で行動!」
「「はい!」」
動き出したら子供たちは速いからね。
問題なく準備が進んでいくね。
「カーリンはいつも通りクラーラとハイディをお願い。クリスタとビアンカは大皿持って来て。レナーテとチェルシーは子供たちがしっかりと焼いたお肉を食べてるか確認をお願い。クリスティーネとエルネスタは流れを覚えてね」
「「分かりました」」
大人たちもギガントボアを見て驚いているね。
クリスティーネとエルネスタは唖然としているよ。
やっぱり慣れが必要だね。
「シャーロット様、準備できました!」
「よーし。食べる準備をして焜炉の前に全員集合!」
「「はい!」」
ギガントボアを斬り分けて、鉄板の上と大皿の上に乗せていく。
やっぱり人数が多いからグレートボアでは足りなかったね。
流石に大きいから燻製にもしておこう。
皆が食べている横で燻製の準備を始める。
「シャーロット様、私がやりますので…」
「カーリンは仕事があるでしょ。暇な私がやるから子供たちの面倒を見てあげて」
カーリンの言葉を遮って自分が燻製にすると主張する。
絶対に言われると思ったからね。
「分かりました。よろしくお願いします」
「気にしなくていいよー。暇だし皆が食べているのを見るのが好きだからね」
燻製にしながら皆の様子を見る。
「クラーラとハイディは私と一緒にフルーツパイを食べましょう」
「物凄い美味しそう。色々な果物がいっぱいだね!」
「本当だね。ハイディも楽しみだよ!」
やっぱりこれだよね。
天使と小さな天使が甘い果物を食べる横で、肉に群がる子供たち。
癒される光景だよ。
あ、やっぱり来た。
絶対にクリスタ目当てだね。
途中から転移してきたから、ちゃんと成長したみたい。
1回だけだと信用できないからね。
「また鉄板焼きなのね。シャルは燻製を作ってるし。さあ、クリスタ。遊びに行きましょう」
「クリスタの成長を見せつけてあげなさい。ヴィーネは討伐を期待していたよ」
「ほんと止めて下さい。死んじゃいますから。遊びでお願いします」
「前回と同じように夕暮れまでよ。またねー」
クリスタは大皿をチェルシーに渡した後、ジェラ姉ちゃんに連れ去られた。
本当はクリスタも楽しみにしていたのは知っているよ。
勇者の力を見せつけて欲しいね。
「あの、今の方は誰でしょうか?クリスタの知り合いみたいでしたが?」
クリスティーネはジェラ姉ちゃんが気になるみたいだね。
せっかくだし説明をしておこう。
「クリスティーネとエルネスタは知らなかったね。残念美人な火吹きドラゴン、ジェラルディーンだよ。クリスタと組手をするのが楽しみで早く来たみたい」
「今の方が厄災のドラゴンなのですか?とても綺麗な方で驚きました」
「残念美人だからね。お祭りに必ず来るから気にしないで。本当は優しい人なんだよ」
「そうなんですね。この国は本当に楽しいです」
「そう思ってくれたなら良かったよ。気楽に孤児院で働いてね」
「分かりました。私たちを助けて頂きありがとうございます」
「助けたのはヴィーネだよ。気にしなくていいから楽しんで生活してね」
2人が私に頭を下げたけど助けたのはヴィーネなんだよね。
話を掘り下げてもいい事がないから、この話は終わりにしよう。
「孤児院で働く事になったのだから、この話は終了。今後気にしないように!子供たちはお腹いっぱい食べたかな?お風呂に入って昼寝だよ!」
「「はい!」」
大人たちはまた強くなってるね。
どこを目指して強くなってるの?
君たちの成長速度が私は怖いよ。
あっという間に子供たちの昼寝の準備が整ったよ。
皆の動きを見て、クリスティーネとエルネスタは唖然としてるじゃない。
カーリンが問題ないと判断したら2人にも身体強化を教えてあげようかな。
念話。
「カーリン。クリスティーネとエルネスタに身体強化を教えてもいいと思ったら社に来て。仲間外れみたいで可哀想だからさ」
「分かりました。2人がシャーロット様の歴史を学んだ後に考えたいと思います」
どういう事かな?
孤児院での仕事を見て判断するんじゃないの?
駄目だね。
気にしないようにしよう。
カーリンに任せたから大丈夫!
子供たちと一緒に昼寝をして目を覚ます。
既に着替え始めているね。
もしかして、いつも寝起きがいいのかな?
祭りの時だけだと勘違いしていたのかもしれない。
1階に下りて整列を始めるのは祭りの時だけだね。
連れて来たばかりの子に整列する理由を教えてあげてるね。
恒例行事みたいなものだし、掛け声も必要だよね。
「全員整列!お小遣いをあげるから並びなさい」
「「はい!」」
「お姉ちゃん達の言う事を守れるね?」
「「はい!」」
「光る雨が降ったら帰って来るわね?」
「「はい!」」
全員に1000ギルを手渡していく。
配っていくと実感するよ。
本当に大勢になったね。
「よーし、お祭りに参加してきなさい!」
「「行ってきます!」」
孤児院の子供たちがお祭りに参加すると賑やかになるね。
駆け足で屋台に向かうけど、目的は土地神リンゴ飴だろうね。
「前回と一緒だけど、7人にもお小遣いをあげるね。クリスタの事は気にしないで。大丈夫だから」
全員に20万ギル手渡していく。
「すみません。毎回ありがとうございます」
「ありがとうございます!」
「・・・・」(拝んでる)
「天国だよ!」
「私たちまで貰えるのですか?」
「中立派は難しそうだよ…」
エルネスタは中立派を維持するとクリスタと約束したのかな?
チェルシーは孤児院に染まったんだね。
頑張れクリスタ!
「前回と一緒だね。夕暮れまでは子供たちを見ててあげて」
「「分かりました」」
念話。
「ヴィーネ。土地神リンゴ飴買いに行こー」
「はーい!」
私の隣に来たね。
じゃあ、買いに行こう。
みんな街の決まり事を守っているね。
小さい子の手を引いてる大人以外は並んでないよ。
「おじさん。土地神リンゴ飴を2つ下さい」
「ああ、シャーロット様にヴィーネ様。落ち着いたお祭りはいいですね。400ギルになります」
そうだよね。
お祭りは皆が楽しまないと駄目だから。
おじさんに400ギル手渡し、土地神リンゴ飴を2本もらう。
「これからも住民の招待は気を付けるから、おじさんも美味しいリンゴ飴をお願いね」
「ハイエルフとドワーフは駄目だったね。今後もこういうお祭りが続くように気を付けるよ」
「よろしくお願いします。リンゴ飴はお任せ下さい!」
おじさんに手を振って別れ、いつもの場所に座る。
ベティーナとエラもお祭りを楽しんでいるね。
屋台の人がエラに話し掛けられて驚いているのが面白いよ。
他の妖精犬はエラから指示が出ているのかな?
しっかりとした団体行動ができているね。
これなら大丈夫そうだよ。
初めてお祭りに参加する子も皆に混ざって楽しんでいるね。
実にいいお祭りだよ。
土地神リンゴ飴を舐めながらヴィーネと話す。
「こういうお祭りを維持しないと駄目だね。やっぱり皆が楽しまないとお祭りじゃないよ」
「そうだね。獣人の里から申請が来ているけど、差別は絶対にしない人だけに絞ったみたい。差別をする獣人は他の里に押し付けたようだよ。仕事はマリアンネと相談だね」
「差別だけは絶対に許さないからね。それを理解しているなら大丈夫そうだね」
「うん。私たちの力も理解しているし問題ないと思う。形だけでも国を守る組織を作る?」
「住民が自然に組織するならいいと思うけど、私たちから声を掛けるのは止めておこう。今の大人たちでは力不足だし、だからといって身体強化を教えても鍛錬はしないと思うから」
「私たちが偶々国を守っていると理解しているのは子供の方だからね。子供たちが大人になれば組織しなくても国を守るだろうし様子見するよ。私は母さんの側にいたいだけだからさ」
本当に甘えん坊で可愛いね。
私もヴィーネがいれば十分だよ。
「勇者クリスタが2人を中立派にしようと頑張っているみたいだね。余りにも厳しい戦いだよ」
「面白いよね。孤児院は特に信者の力が強いから。やっぱり勇者は孤独なんだよ」
「勇者は竜王を討伐する為に頑張っているよ」
「本当に勇者だよね。世界樹を燃やした邪竜を討伐しないといけないからさ」
本当だよ。
魔人討伐と引き換えに世界崩壊は割りに合わないよ。
「勇者が笑顔で帰って来たよ。邪竜も元気そうだから、討伐失敗だね」
「黒剣使えばいいのに。不意打ちで撃破だよ」
ジェラ姉ちゃんに不意打ちは無理だよ。
それに、黒剣使ったらクリスタが危ないよ。
「クリスタ強くなってたよ。やるわねー。まだまだ強くなれそうだし、次のお祭りが楽しみだよ。ヴィーネはこの後付き合いなさいよ」
「こんなに様々な種族がいて、知り合いもいるんだから一緒に飲めばいいじゃない。何で私に絡むのよ?」
「ジェラ姉ちゃん、お金は持って来たよね?」
絶対に持って来てないと思うけどね。
一応聞いておかないと。
「お金は蜥蜴の死体処理に使ったわ。本当に面倒な事をさせるんだから。慰謝料を請求するわ!」
「流石に意味が分からないよ。私の頭をおかしくさせる作戦かな?」
「母さん、叔母さんは本物だよ。本物の馬鹿なんだよ。考えたら負けだよ!」
ジェラ姉ちゃんに10万ギルを手渡した。
本当に躊躇いもなく受け取るよね。
「ヴィーネ。蜥蜴の飼育料の土地神りんご酒は社に置いてあるのを飲ませてあげて」
「飼育料まで請求していたの?頭がおかしいよ。しかも、殺しておいて慰謝料請求してるの?完全に病気だよ。世界樹の薬を飲ませた方がいいよ!」
「早く行くわよ。ヴィーネも私に言いたい事があるでしょ?いいから付いて来なさい」
こっちの言葉は全部無視だよ。
強引にヴィーネを連れて行こうとしているね。
「母さん、なるべく早く来てよ。酔っ払いの相手は本当に面倒なんだからね」
「はいはい。いいから行くわよ」
結局付いて行くんだよね。
仲良しだよ。
「勇者クリスタお疲れ様。尻尾斬れそう?」
「絶対に無理です。限界まで身体強化したとしても、かすり傷も付けられませんよ」
それが分かるだけでも十分に強いよ。
相手の強さが分かるのも凄い事なんだよ。
「楽しめたみたいで良かったよ。次の特別報酬は尻尾を斬った時にあげよう」
クリスタに20万ギルを手渡した。
「不可能な依頼ですね。お小遣い貰えるだけで十分ですよ。組手は楽しいですからね。あの人の尻尾を斬り続けたシャーロット様がおかしいですよ。私たち長生きするみたいですから100年では死なないと思うんですよ。ですから、100年に1度の勝負は他の星でやって下さいね。世界一迷惑な勝負ですから」
中立派の言葉は容赦がないね。
その通り過ぎて反論ができないけど。
「もう100年に1度の勝負は無いと思うよ。ジェラ姉ちゃんも楽しんでいるからね。それに、ヴィーネが絶対に私の味方をするから勝負にならないよ。瞬殺だよ」
「間違いなくそうなるでしょうね。ジェラルディーン様も分かっていると思うので、もう勝負しないでしょうね」
「それで、どれくらい魔力吸収できるようになったの?」
「魔石から少しだけ吸収するのが限界です。やはり魔力量を増やすのは怖いですね。無意識に止めてしまうのです」
なるほど。
魔力量を増やせば破裂する可能性もあるからね。
破裂しないと分かっていても消極的になってしまうんだね。
「クリスタは私と違って破裂させて魔力量を調整した事がある訳ではないからね。その怖さは分かるよ。自分の感覚を信じるしかないね。絶対に大丈夫だと確信を持たないと恐怖心に負ける。少しでも魔力の吸収ができたのなら、後は自分との戦いだね。少しずつ増やして自信を得て行くのもいいと思うよ。それか、一度破裂する時の感覚を覚えるかだね」
「本当は一度破裂させれば体が感覚を掴んで楽だと思うんですけどね。異常者じゃないと無理ですよ。私は普通の女の子ですから、ゆっくり増やしていきます」
私は異常者ですよーだ!
でも、クリスタが普通の女の子は無理があるよ。
「勇者クリスタも人間卒業したんだから異常者なんだけど、理解してないの?普通の女の子がドラゴン殴り殺していたらドン引きだよ?」
「あーー!聞きたくなーい!私は普通の女の子です。では、子供たちの様子を普通に見て来ます」
逃げたよ。
ジェラ姉ちゃんに似てきたかな?
クリスタは十分頑張っているよ。
そろそろ夕暮れだね。
噴水前にセイレーンが集まって歌い始めてくれた。
前回と同じように歌っている間中、光魔法で街中を色鮮やかにしたよ。
本当にいいお祭りだよ。
心が洗われるようだね。
目を閉じて歌に浸っていたら、あっという間に歌が終わっちゃった。
街の皆から盛大な拍手が送られてセイレーンの皆が照れているね。
まだ褒められるのは慣れてないみたい。
時間も夕暮れだし完璧だね。
念話。
「子供は家に帰る時間だよ。大人は引き続き楽しんでもいいけど、お酒の飲み過ぎには注意してね」
これで大丈夫だね。
「皆、孤児院に帰るよー」
「「はーい」」
孤児院に子供たちと一緒に入る。
カーリンたちに子供が揃っているか確認をお願いする。
「皆揃っているか確認をお願いね」
「「分かりました」」
・・・・。
「皆揃っています」
確認作業が早過ぎる!
担当する子供が決まってるみたいだね。
でも、カーリン軍は担当と関係ないんだよね。
天使のカーリンは人気あり過ぎだよ。
子供たちの寝る場所が2階と3階に別れたからゲームは難しいね。
どうやって全員を寝かしつけようかな?
昼寝の時に覚えておけば良かったよ。
「ありがと。皆、どこで寝るか教えてくれない?まず2階で寝ている子からね」
「「はーい」」
子供たちは素直に自分の布団に行ってくれる。
「そこが皆の寝る場所なんだね。範囲睡眠魔法」
1階に戻り、同じように声を掛ける。
「残りは3階で寝ている子だね。寝る場所を教えてね」
「「はーい」」
同じように布団に行ってくれるね。
「寝る場所は間違ってないね?範囲睡眠魔法」
1階に戻り大人たちに声を掛ける。
「さあ。子供たちは眠らせたから飲みに行っておいで」
「本当にありがとうございます」
「運動の後はやっぱりお酒だね!」
「ありがとうございます」
「・・・・」(拝んでいる)
「天国だね!」
「えっ?飲みに行っていいのですか?」
「中立派無理だね。厳し過ぎるでしょ」
エルネスタは何と戦っているんだろう。
気になるけど、気にしない事にする。
皆が飲みに行ったのを見送って、2階と3階の子供に布団を掛けてあげる。
そして1階に戻って色々と振り返る。
マリアンネに何かあったのかな?
変わろうと努力している。
今まで仕事を頑張って来たのだから無理をしなければいいけど。
孤児院に新しく入った2人はどのようになるのかな?
レナーテのようになるかクリスタのようになるか。
楽しみだよ。
クリスティーネは素直に色々と学ぼうとしている。
王女だったけど余りいい扱いはされてなかったのかもしれない。
孤児院の生活を純粋に楽しんでいるからね。
エルネスタは近衛騎士をしていたからクリスタの強さに興味を持った。
そして、余りの強さの違いに唖然としたね。
鍛えてどうにかなる強さではないからね。
秘儀を求めるかと思ったけど、そうでは無かった。
知りたいとは思っていても焦ってはいない。
クリスタに何か言われたんだろうね。
2人が助かったのは偶然だけど運命だから。
この国での生活を楽しんで欲しいな。
前回のお祭りから考えても国としては成長しているね。
ヴィーネと一緒に作っているからいい国になって欲しいな。
過去の出来事を色々と思い出しながら目を瞑る。
やっぱりカーリンは凄いね。
天使のカーリンのお陰で孤児院は安泰だよ。
カーリン軍がいるから下手な男は近付けない。
孤児院の卒業生の中にもカーリン軍所属はいるからね。
子供を愛する気持ちが伝わっているんだろうね。
カーリン軍の強さを知っているのに、それでも心配できるのはカーリンだけだよ。
私もカーリン軍に混ざって魔法を放ちたかったな。
子供たちは手加減も覚えれて一石二鳥だったね。
ヴィーネがきつく制裁したからいいけど、カーリンに不細工はないよ。
殺して下さいと言っているようなものだからね。
もしかして私もカーリン軍?
戻って来たみたい。
カーリンはいつも通り可愛い敬礼だね。
今後も不細工と言った男は死刑にしよう。
前回と同じようにクリスタとビアンカにレナーテは担がれているよ。
仲間の前だから安心してお酒を飲めるのかな?
「ただいま帰りましたー!」
「ありがとうございます」
「本当に弱いんだから!信者は学習しないのかな?」
「恒例だよ。お祭りだからいいじゃない」
「お祭りはとても楽しいのですね。最高の1日でした」
「本当に楽しいお祭りでした。ありがとうございます」
「楽しめたみたいだね。じゃあ、私は行くね。またねー。転移魔法」
皆に手を振って別れりんご林の机に移動した。
「母さん、この叔母さん反省する気が無いよ。全然駄目だよ!」
「ヴィーネが世界樹を植えなければ私が植えました。世界の崩壊は防げましたー」
「物凄い嘘吐いてるじゃない。もしかして反抗期なの?」
「本当だよ。偶には素直に反省するべきだよ」
「ヴィーネが世界樹を植えれるのは私の力でしょ?つまり、私のお陰な訳なの。何度言っても本当に理解しないわね」
「確かにそうだけど、世界樹を吹き飛ばした竜王の台詞じゃないよ。子供みたいな言い訳だよ」
「そもそも、何でお祭りの度に酔っ払いの相手を私がしないといけないの?知り合いいるんだから一緒に飲めばいいじゃない」
「ヴィーネはお母様と会話できる時間に感謝をするべきよ。反抗期はヴィーネじゃないの?」
「酔っ払いの会話に終わりは無いからお風呂入って寝ようよ。十分話したでしょ?」
「そうだね。お風呂入って寝よう。転移魔法」
やっぱりジェラ姉ちゃんも連れてきているよ。
ヴィーネも反抗期かな?
お祭り恒例だね。
3人で一緒にお風呂に入って、3人で一緒に寝る。
当然1人はみ出しているけどね。
私もヴィーネも大人になるし大きい布団を用意しようかな。
「実に楽しいお祭りだったよ。次回も楽しみにしているわ。まったねー。転移」
前回のお祭りと同じ言葉を言って、残念美人は笑顔で去っていった。
「母さん、ゴロゴロしようよ。お祭りは疲れるよ!」
「そうだね。ヴィーネは大変だよね。ゴロゴロしよう!」
ジェラ姉ちゃんは酔わないとヴィーネと話せないのかも。
恥ずかしがり屋さんだから。
ゴロゴロという名の封印だよ。
2人とも布団に封印されたみたいだよ。
ヴィーネも楽しんだみたいだし、本当にいいお祭りだったね。
みんな楽しんだ良いお祭りでした。
慰謝料を請求された土地神様は困惑です。




