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土地神様は吸血鬼  作者: 大介
第3章 神国シェリル

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閑話 ハーラルト 神国シェリルの見学

獣人連合の会議の後、アンゼルムが見学に行こうと誘ってきた。

他の2人はヴィーネ様に圧倒されて行く気がしないそうだ。


馬鹿な里長だぜ。


俺とアンゼルム、それに必要ないが護衛としてそれぞれ2人ずつの計6人。

里長だし流石に護衛なしは格好がつかないからな。


アンゼルムと合流し神国シェリルに向かう。

魔獣と遭遇するが大した相手でもないので気にする必要はないな。


討伐するのも面倒だし気配を消して素通りする。

神国シェリルまではあっという間だ。


この大陸にある厄介な国は全て潰されている。

同じように王族や貴族が生まれ始めている国もあるが、動きがあるのはかなり先の話だろう。


それに、動いたところで何がどうなる訳でもない。

死人が増えるだけの話だ。


アンゼルムは相当楽しみのようで、かなり早歩きをしている。

今回の護衛には馬鹿(ドミニク)を連れてはこなかったようだな。


妥当な判断だと思う。

あえて連れて行く必要もないからな。


近付くと世界樹に圧倒される。

途轍もない大きさだ。


あれなら大陸のどこからでも見えるのではないだろうか?

そんな巨木が国の中にあるのだから笑ってしまうよ。


さて、どんな対応をすればいいのか。

検問に着いた俺は考えていたがアンゼルムは普通に声を掛けていた。

まるで顔馴染みのようだな。


「よお、久しぶりだな。ヴィーネ様から話は聞いているか?今日は里長として見学に来たんだ」

「お久しぶりです。勿論聞いていますよ。アンゼルム様とハーラルト様ですね。後ろの方は護衛でよろしいでしょうか?」


話を通してくれていたのか。

有言実行で助かるが、何でもできる人が有言実行は正直怖い。


「ああ、里長として1人で歩くのも格好が悪い気がしてな。武器はどうすればいい?」

「今回はそのまま通って頂いて構いません。差別だけは気を付けて下さいね」


獣人が差別する相手はハイオークに限られる。

絶対に差別しない護衛を選んだから大丈夫だ。

アンゼルムも一緒のはずだ。


「絶対に差別はしないから問題ない。今回は好きに動いてもいいのか?誰か案内が付くのか?」

「案内が必用なら付けますが、自由に動きたいのであれば構いませんよ。どうされますか?」


自由に動きたい気もするが施設を知りたい思いもある。

アンゼルムは施設を知っているから大丈夫か?


「俺が前来た時より発展しているだろ?誰か説明できる人を付けてくれないか?」

「あの時よりかなり発展していますね。別の国と言ってもいいかもしれません。アーベル、お願いできますか?」

「勿論です。私の仕事ですからね。どのような質問にも答えられるように勉強をしておりますので大丈夫ですよ」

「それは頼もしい、是非よろしく頼む」


検問を抜けて軽く街を見ただけで別世界だ。

家の窓に嵌まっている透明な板はガラスか?

あれ程の大きなガラスが当たり前のように窓に嵌まっているのか?


「早速だが、家の窓に嵌まっているのはガラスか?」

「建物は見学用の家がありますので、そこに行きましょう。窓に嵌まっているのはガラスですよ」


あれ程の大きさのガラスがどの家の窓にも嵌まっている。

それだけで技術の高さが伺えるな。


それに、見学用の家まであるのか…。

皆が疑問に思うから用意したのだろうな。


家に入ると既に意味が分からない。

「すまん、この家では何ができるのか教えてくれないか?」

「街の家では好きな時に水が飲めて、好きな時に好きな温度でお風呂に入れます。トイレも汲み取りではなく水で流すだけです。料理も火の魔石が台所に置いてありますので楽にできますよ」


無茶苦茶だな。

家の情報だけで俺の常識が壊れそうだよ。


実際に水を出してもらったが余りにも簡単だ。

風呂は水浴び場の事らしいが火の魔石で温度調節をするみたいだ。

台所にも火の魔石が置いてある。


魔石はこんなに簡単に手に入るものなのか…。

しかも、加工できるのか。


「何故こんな事が可能なのか簡単に説明してもらえるか?」

「実はこの街の地面の下は全て地下室になっているのです。そこで水の魔石を使って常時水を出しているのです。汚水は光の魔石を使って浄化して川に流しているのですよ」

「想像以上だな。とんでもない環境だぞ」


言っている事は理解できるが、そんな事が可能な意味が分からない。

特別大きな国では無いが、街全体が地下室の上にあるなんて想像できないぞ。


家の説明だけで頭がおかしくなりそうだよ。


「道に立っているこの棒は何をするんだ?」

「夜に街を照らすのですよ。先端に光の魔石が置いてあります」


魔石が当たり前過ぎる。

そんな物だったのか?

俺が知らないだけで簡単に手に入るのか?


「魔石はそんなに簡単に手に入るのか?そして簡単に加工できるのか?」

「魔石を探すのは子供でもできますよ。シャーロット様の秘儀が必須ではありますけどね。加工はシャーロット様とヴィーネ様、あとエルダードワーフができますので問題はありません」


秘儀は途轍もないようだ。

確実に教えてもらう事はできないだろう。


子供を大切にしていて子供だけに教えている事が驚きだ。

子供は絶対に誰にも話さないそうだからな。

口止めもしてないのに驚きだ。


エルダードワーフ。

伝説の鍛冶職人は実在したのか。

そして、この国に住んでいるのか。


街を北に歩いて行くと噴水があり、奥に途轍もない大きな建物が3つ並んでいる。

「こちらの建物が左から孤児院、病院、学校ですね。孤児院は保護された子供が100人以上暮らしています。病院は回復魔法だけに頼らないように日々病気や怪我の研究をしております。学校は子供の教育です。夜は大人にも教育を行いますよ」


孤児院の大きさがシャーロット様の気持ちを表しているな。

やはり全力で子供を保護している。


「前よりでかくなってるな。とんでもないぜ。建物はシャーロット様が大きくしているんだろ?」

「その通りです。シャーロット様の魔法で大きくしています。設計図があればどんな建物も魔法で作る事ができます。街の人は余り頼らないようにしていますが、3つの建物はこの国の基幹ですのでシャーロット様も力を入れていますね。ちなみに今の国長はヴィーネ様ですから移住される方は全員に家が付いて来ますよ」


建物を魔法で大きくするとか意味不明だぞ。

それに、あの家が当たり前のように貰えるのか。

この国だけ世界から確実に浮いているだろうな。


3つの建物を抜けて俺は圧倒された。

なんだこれは。


どれだけの種族が住んでいるんだ?

色々な店があるが様々な種族が買い物を楽しんでいる。


「今日は学校が休日では無いので人魚の魚屋は営業していません。そして、世界樹の精霊様のお店は夕方からしか営業しません。学校に通っていますし、子供たちと遊んだ後にお店を営業しますから」

「とんでもないな。人魚が住んでいるのか。そして精霊様の薬屋も実在した訳か。情報通りだが頭がおかしくなりそうだぞ」

「本気で移住を検討するべきだろ?こんな環境は絶対に世界中でどこにも無いぞ」


その通りだな。

紹介している内容は外部用だと思う。

まだまだ隠されている情報が山程あるだろう。


「よければ土地神りんごを買って食べてみて下さい。200ギルで安いですが移住の決め手になると思いますよ」

「そんなに美味いのか?…まじか、妖精が売っているのか。もう訳が分からないぜ。とりあえず6つ買おう」

「ハーラルト、俺が払うよ。俺の希望で見学している訳だし安いもんだからな」


アンゼルムが妖精に1200ギル手渡すと、とんでもない速さで妖精が飛んでいる。

こんな速さで飛んでいたら人間に捕まる訳が無い。

絶対にシャーロット様の秘儀だろうな。


「はい。土地神りんご6つです。どうぞ」

「ああ、ありがとう」


見た目は普通のりんごか。

どれ、シャク。

シャク、シャク。


おかしいだろ!

絶対りんごじゃないぞ。

俺の知っているりんごの味じゃない。


美味すぎる!

これが200ギルなのか?

毎日食いたくなったじゃないか。


「実は土地神りんごを使ったお酒があるのですが、それがこの国で一番人気なのですよ。1人1日1本しか買う事ができず1万ギルしますが、一度飲んだら今まで飲んだお酒の味を忘れますよ」


このりんごを使った酒か。

冗談じゃない。


りんごだけで病みつきになりそうなんだぞ!


「俺は買って飲みたいな。宣伝が上手すぎるぜ。売り切れてないよな?」

「分かりません。ドワーフが追い出されてから売り切れは減りましたが人気ですからね」


ハイエルフとドワーフを追い出したんだよな。

あの2種族が暮らしていた事にも驚いたが、追い出した事にも驚いた。


この国にとっては邪魔だと言う事だからな。


ドワーフの武具は逸品だと言うが、この国では必要ないな。

ハイエルフも排他的だから邪魔だったのだろう。

この国は種族も権力も関係ないな。

住民に有益かどうかだけだ。


実に分かりやすいな。


酒屋に案内してもらって土地神りんご酒があるか確認するつもりだな。

アンゼルムが飲む気満々だからな。

売っていたら俺も飲むか…。


流石に怖いぜ!


「土地神りんご酒は6本買えるか?」

「ああ、在庫はあるぜ。あんたら、この国の住民じゃないだろ?飲んだら移住したくて仕方が無くなるぞ。本当にいいのかい?」


店主の言葉は嘘じゃないな。

脅している訳じゃなくて心配されている気がする。


「ハーラルトはどうするんだ?俺は買うぜ!」

「それなら俺も付き合うよ」


お互いに3万ギルを支払い自分と護衛の分を購入した。

「ドワーフはこのお酒で追い出されたんだ。間違っても独占しようとか考えたら駄目だぜ」

「その通りです。ドワーフはこのお酒で喧嘩をし続けて追い出されました。気を付けて下さいね」


そんな酒を勧めるなよ!

あの酒好きが独占を考えて喧嘩し続けた酒か。


せっかく買ったんだ、飲むか…。

ゴク、ゴク、ゴク・・・・。


駄目だ!

これはやばすぎる。

土地神りんごで限界だったんだ。


この酒だけで移住決定と言いたくなる。

明らかに異常だぞ。

美味過ぎる!


これが酒か?

俺が今まで飲んでいたのは何だ?

訳が分からなくなってきたぞ。


空か…。

ああ、空になったか。

この国に住まないと明日も飲めないじゃないか。


予想通りだぜ。

アンゼルムの大馬鹿野郎!


「ハーラルト、説得とか必要か?俺たちだけ移住すれば良く無いか?」

「そう言うと思ったぜ。言い訳ないだろ!俺たちは里長だぞ。最低限の仕事はしろよ」


土地神りんご、土地神りんご酒。

絶対に美味い食い物は他にもある。


何なんだこの国は!


常識ってなんだ?

欠片も残ってないぞ。


泊ってくか?

いや、流石に里長が里を何日も空けるのはまずい。


移住を前提に里を整理する方が健全だろう。

獣人連合で移住を検討すると時間が掛かり過ぎる。


里単位で移住したければ移住申請をするべきだな。

「獣人連合での申請は無いな。里長が自分の里を整理して申請するべきだ。他里の事を考える時間が勿体無いな」

「移住決定で里の獣人を選別する。説得とか面倒だ。駄目な奴は放置する。俺は移住したい。今すぐに移住したい!仕事は何だっていいんだろ?畑でも魔獣狩りでも何でもいいんだ。まずは移住だ!」


アンゼルムは移住希望が強かったが、更に強くなったな。


当然だろうな。

護衛も黙っているが移住する気満々だからな。


「泊って飲み食いしたいが我慢するか。帰れなくなりそうだぜ。帰って仕事して移住だ!」

「ああ、それが一番だな。とっとと選別しようぜ。差別する奴は他里に引き取ってもらえば都合がいいじゃねーか。見学に来なかった馬鹿な里に押し付ける」


「そうだな。怖がって見学に来なかったんだ。移住する気も無いだろう。差別する馬鹿は引き取ってもらおう。選別がより楽になるぜ」

「最高じゃねーか。びびって動けない奴は馬鹿を見るんだよ。あの力を見て里に引き籠る意味が分からん。普通はどこにいても一緒だと考えるはずだがな」


本当にその通りだ。

あの力を見て引き籠る意味が分からないな。


見学に来て正解だったぜ。


移住は決定で差別する馬鹿は押し付ける。

動かなかった里は労働力が増えて大助かりだろ。

お互いに特しかない。


この国は魅力があり過ぎだ。

情報以上だよ。


百聞は一見に如かずだな。

仕事をする気が久しぶりに湧いてきたぜ!

仕事を頑張るのは良い事ですね。

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