閑話 クリスタ カーリン軍
神国シェリルには絶対に怒らせてはいけない人がいる。
精霊様と妖精は除外してね。
この星で絶対に敵対してはいけない見た目は可愛い2人の女の子。
シャーロット様とヴィーネ様。
死ぬ!
痛み無く自分だけが死ぬ事を祈るしかないね。
次は不本意だけど私。
生徒が親に話して街で噂になっているんだよね。
見た目通りの可愛い女の子なんだけどね…。
不思議だよ。
最後に孤児院長のカーリン。
カーリンも結構強いけど、子供からの人気が凄過ぎるのよね。
街中で殴り合いが許可されたら、カーリンを怒らせたり悲しませたりした男は死ぬと思う。
その日、馬鹿な男が孤児院まで来てカーリンに声を掛けたんだよ。
男は大商人らしく、たくさん珍しい物を買い漁っていたのを横目にしたくらい。
買い出しに来ていたカーリンを見かけたのが切っ掛けじゃないかな?
すぐに街の住民からカーリンの情報を聞き出していたから。
別に隠す必要もないし恥ずべき事は何も無いからね。
住民は親切のつもりで教えたんだと思う。
この国では孤児院で働いていると尊敬されたりするからね。
それに、孤児院を馬鹿にする住民はいないから。
シャーロット様を良く知る古くからの住民ほど、その思いは強いんだよ。
男は孤児院を訪れると偉そうにカーリンを呼び出した。
男にとって不幸だったのは、今日は学校が休みだった事だね。
その瞬間に子供たちの目が狩人のように変わったよ。
カーリンが男にほとんど興味ない事は住民の間では有名なんだ。
シャーロット様に夢中だからね。
そこは教えてもらってないのかな?
それとも、自分なら大丈夫だと思ったのかな?
予想通り無視に近い形であしらわれたよ。
男が高圧的だったから余計にね。
男の負け惜しみの一言が最低だったよ。
「孤児院で働いている不細工が偉そうにしやがって!俺の誘いを断った事を後悔するんだな」
一瞬で100人近い子供に囲まれたよ。
完全に身体強化を使っているね。
最高に笑える状況だよ!
「皆、私は気にしていないから別にいいわよ」
カーリン軍の怖ろしさを一番知らないのはカーリンなんだよ。
いつも子供たちの心配をしているから。
絶対に天然だよね?
「カーリンお姉ちゃんは気にしないで。私たちの問題だから!」
「そうだよ。俺たちの問題だから、カーリン姉ちゃんは仕事していてよ」
カーリンの問題からカーリン軍の問題に変わったね。
どんな風に対応するのかな?
「あー、ついにカーリン軍を怒らせた馬鹿が現れたよ。本当に世間知らずなんだから」
この後の展開が楽しみ!
「ちょっと。止めないと大変な事になるわよ。街での暴力は禁止されているのよ?」
ビアンカはいつも真面目だよね。
この子たちがそんな事する訳ないじゃない。
「神が黙認されていると言う事は、子供たちの行動は許されているのでしょう」
レナーテは拝んでいるよ。
でも、黙認されているのは間違いないね。
シャーロット様はカーリン大好きだからね。
それに、ヴィーネ様は笑っていると思うな。
突然子供に囲まれて馬鹿な男も流石に慌てているね。
「な、なんだこのガキどもは。俺が誰だか知っているのか?」
「カーリンお姉ちゃんを馬鹿にしたゴミだよね?」
「そうそう。ただのゴミだよ。早くゴミ箱に行こう!」
「こんな大きなゴミ捨てる場所あったかな?」
早速ゴミ扱いだよ!
カーリンを馬鹿にしたらゴミなんだよ。
カーリン軍はやっぱり怖ろし過ぎるね。
ゴミ箱は森かな?
森で制裁するのかな?
身体強化も許可されているからね。
でも、直接攻撃するのは許可されていないから、何か嫌がらせするのかな?
どんどんと森の中に押されていくね。
男は叫んでいるけど、街の住民も完全に無視だよ。
孤児院の子供に囲まれている時点で男に非があると思われるからね。
あれ?
森に行くかと思ったら魔法練習場に向かっているよ。
まさか、魔法の的にしちゃうのかな?
それは禁止だから流石に止めないといけないね。
「誰か穴掘ってー」
「はーい。土魔法」
なるほど。
人に魔法は使ってないね。
でも、少し遠い的の近くなのは気になるなー。
「とりあえず埋めてから考えよっか」
「そうだね。まずは埋めよう」
「それがいいよ。早く埋めよう」
生ゴミだから埋められるのかな?
誰の指示もなくここに来たのが怖いよ。
男を穴に突き落とすと、どんどん上から土をかけていく。
魔法で土を出してい子もいるよ。
カーリン軍の怖ろしい所は圧倒的な連携力だね。
穴から必死に出ようとしているけど無理だろうね。
首から下が全て土の中に埋められちゃったよ。
生首に見えちゃうね。
「今日も魔法の練習するでしょ?」
「当然だよ。でも、始めたばかりだから的からずれても仕方が無いよね?」
「それはそうだよ。完璧に的に当てれるのはシャーロット様とヴィーネ様だけだからね」
「お、おい。お前ら何を言っているんだ?何をするつもりなんだ?」
そこからは地獄絵図だったね。
100人近い子供が的を狙わず、男の顔の近くを狙って魔法を放っているもん。
勿論当たっても死なない強さだけどね。
教師としては…、黙認だね。
だって、あの距離の的に当てるの本当に難しいから。
近くに偶然ゴミが埋まっているだけだからね。
「おー、みんな真面目だねー。休日なのに魔法の練習してるよ」
子供たちの魔法の命中率高くない?
的確に外し過ぎだよ。
「本当にもう…。これはいいのかしら?後から怒られても知らないわよ?」
ビアンカは本当に真面目だよね。
絶対に大丈夫だよ。
「神は全てご存じです。本当なら孤児院を馬鹿にした時点で死刑ですから」
そうなんだよね。
この前ヴィーネ様が言っていたから。
カーリンとチェルシーは一生懸命仕事をしているだろうね。
私たちがさぼっているからだけど、後で怒られるかな…。
でも、万が一の為に現場を見ておかないとね。
「今日はこの辺にして帰ろうか?」
「そうだね。疲れたし帰ろう!」
「いやー。いい練習だったね!」
子供たちは笑顔で走って帰って行ったよ。
帰りも当然のように身体強化を使っているけどね。
あのボロボロの生首はどうなるんだろう?
「助けてくれー!誰か穴から出してくれー!」
一生懸命に男が叫んでいるよ。
最初から叫んでいたのかもしれないね。
「君は孤児院を馬鹿にしたんだよね?」
あー、終わったよ。
「俺は不細工な女に文句を言っただけだ。孤児院を馬鹿になんてしてないぞ!」
「ふーん。カーリン馬鹿にしたから埋まってるんだ。孤児院長だって知ってたんでしょ?」
カーリンが不細工なら世の女はほとんど不細工だよ。
なんだか殺したくなってきた!
「孤児院長が何だって言うんだ?俺は大商人だぞ。こんな事をして許されるはずがない!」
「へぇー。この前密入国した貴族と一緒の国から来たのかな?そろそろ滅ぼさないと駄目かも」
「他国で大商人だからなんだって言うの?本当に馬鹿だね」
「そうだ!君は国に帰してあげるよ。3重結界、念力。バイバイ」
ヴィーネ様に飛ばされたよ。
余りの速さに流れ星のように見えたよ。
結界を張って飛ばしたと言う事は死なせないつもりだね。
「いやー、面白いものが見れたよ。流石カーリン軍だね。じゃあ、またねー。転移魔法」
「人間大砲だよ。城に突っ込むだろうね。でも、あいつは死なないから大変かも」
「まあ、仕方が無いでしょう。子供たちが殺さなくて良かったわ」
流石に殺しはしないでしょう。
街の決まりだからね。
子供たちは賢いよ。
「終わった後も身体強化して全力で帰っていったから、カーリンの隣の奪い合いだね」
「孤児院名物よね。本人が何故気付いていないのか不思議で仕方が無いわよ」
きっと孤児院では笑顔の子供たちに囲まれてるんだろうなー。
全員がドラゴンを楽に殺せると思うと凄いよね。
平和な光景に見えるから怖ろしいよ。
やっぱりカーリン軍は最強だね!
圧倒的な連携力。
個人でも強い。
隙が無いよ。
全員を一度に相手にしたら私もきつそうだね。
カーリン軍の行動は大概許されます。
天使のカーリンですから。




