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土地神様は吸血鬼  作者: 大介
第3章 神国シェリル

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閑話 アードリアン 世界樹

ダークエルフに古くから伝わる世界樹。

それを生きているうちに見る事ができてとても嬉しく思っていた。


しかし、あれ程の巨大な世界樹が1日で突然現れた。

何が起きたというのだ?


その世界樹を国の中に入れてしまった。

いいのだろうか?


世界樹は世界を見守る木だと伝えられてきたが、1つの国が独占しているみたいに見える。

それ程の事が可能な国があるのだろうか?


余りの出来事に言葉も出ない。


「最長老様、あの世界樹は何を意味していると思いますか?」

「素晴らしい事じゃないか。恐らく世界を守る為に必要な大きさまで成長させたのではないかな?国の中に入れたのは精霊様のお願いだと思うわね。この国の為に世界樹の力を使うおつもりなのさ」


そんな事が有り得るのですか?

精霊様が1つの国の為に世界樹の力を利用するなど想像もできません。


「精霊様はそのような考えをする方なのですか?」

「どうだろうね。言い伝えでは、とても優しく穏やかな方だと聞いているけれども、本来ならこの場所にいる方では無いからね。理由があってこの国に留まっていると思うわよ。せっかくだし、会って話を聞いてみようじゃないかい。この国では精霊様と自由にお話ができるのだからね」


そうでした。

ダークエルフは遠慮して精霊様とお話をしておりません。

このような姿になってしまったエルフを嫌悪するかもしれないと恐れているのです。


精霊様は学校に通い子供たちと遊んだ後にお店の世界樹に宿るようです。

ダークエルフの子供たちは既に一緒に遊んでいるのです。


しかし、世界樹についてはまだ話していません。

子供たちには、この意味を理解する事はできないでしょう。


私ですら混乱しているのです。


最長老様を伴って精霊様のお店までやって来ました。

セイレーンが店番をしているというのも不思議な話です。

気になる事ばかりですね。


「精霊様とお話がしたいのですが、よろしいですか?」


私の声に反応して世界樹の中から小さな女の子が顔を出しました。

緑のくねくねとした髪が特徴的で、まるで妖精のようです。


「どうしたのかな?あれ?そのお婆ちゃんはエイヴリルの子供か子孫かな?懐かしい感じがするね」


最長老様の目が見開かれました。

そして、大粒の涙が頬の皺を伝わっていきます。


「私の曾祖母を覚えていて下さったのですね。当時は世界樹の巫女をしていたと聞いています」

「そうだね。私の姿を見る事ができたのはダークエルフと言われている君たちだけだったからね。遠い昔の話だけど1人や2人の名前くらいは覚えているし、雰囲気も覚えているよ」


最長老様の曾祖母様となると何年前の話なのか想像もつきませんね。

最長老様は2000年以上生きているはずですから。


「君たちの姿もかなり変わったね。苦労したみたいだし世界樹の力をいっぱい取り込みなよ。私はこの国を贔屓する事に決めているからさ。君たちが世界樹の力を取り込めば本来の体に戻れるはずだよ。ダークエルフには最安値で世界樹の薬を分けてあげる。勿論ただじゃないよ?それがこの国の決まりだからね」

「では、2人分薬を買います。お願いします」

「はーい。少しお待ち下さい」


私が薬をお願いすると、セイレーンの子が世界樹の葉を千切り薬にしています。

手馴れている所を見ると、結構な数の薬を作っているみたいですね。

本当に不思議な組み合わせです。


「ドリュアス様、値段はどうしますか?」

「そうだね。葉っぱ1枚の値段でいいよ。2人分で200ギルだね」

「ありがとうございます」


私は200ギルをセイレーンの子に手渡して薬を受け取りました。

「なるべく毎日飲む事をお勧めするよ。あとはこの国で生活する事かな。ほんと何がダークエルフだよ。ハイエルフたちが追い出されてからシャーロットが連れてきてくれて良かったよ。この国の住民を差別しないでね。私もそういうの嫌いだからさ。それとドリュアスと呼んでね。シャーロットに名前を付けてもらったんだよ」

「分かりました。部族の者にもドリュアス様の言葉として伝えさせて頂きます」


私たちはドリュアス様に一礼をして家に帰りました。

そして、すぐに薬を飲みました。


「これは…、体が軽くなったようです。世界樹の力を分けて頂いた気分になりますね」

「ああ、素晴らしいね。部族の者に伝えて毎日飲むようにしなさい」


「はい。それとドリュアス様はこの国を贔屓すると言っていましたね。とても驚きました。世界の誰に対しても中立の立場だと思っていましたから」

「それ程シャーロット様が好きなのさ。あの巨大な世界樹も、やはりシャーロット様が育てたのだと思うわね。ドリュアス様が1つの国の為に力を使って下さるなんて奇跡みたいじゃないか。本当に運が良かったね」


最長老様の予想通りでしょうね。

シャーロット様とヴィーネ様が必要な大きさまで世界樹を育てたのでしょう。

そして、ドリュアス様は世界樹をこの国の為に使うと宣言されているのです。

私たちがこの国で生活をすれば本来の体に戻れるとまで言われました。


長い歴史の中で過酷な環境に適応する為に変化したのがダークエルフです。

変わってしまった私たちの体が元に戻るなど、本当に奇跡ではありませんか。


差別をしない事は徹底させていますが、ドリュアス様も差別を許していないのです。

ハイエルフが追い出された事を喜んでいるみたいでした。


部族の者にドリュアス様の話しを伝え、薬を買う事を勧めると共に、勘違いする者が出ないようにしなければいけませんね。


ダークエルフがドリュアス様に贔屓されている訳ではないのです。

シャーロット様が作った国を贔屓しているのです。

その違いを徹底的に教え込みましょう。


精霊様にお名前を付けたのがシャーロット様だと知れば勘違いする者もいないでしょう。


「族長としての仕事の重さに驚きますね。これ程重大な仕事になるとは思いませんでした」

「頼んだよ。私もまだまだ死ねそうにないね。本当に若返ってしまいそうだよ」

全てが神の奇跡なのです。byレナーテ

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