世界樹の秘密
実は不安な事が1つあるんだ。
それは、世界樹の事なんだけど、精霊まで宿る木がエルフや妖精の為だけに存在していたとは思えないんだよね。
これは本人に聞いた方がいいね。
後から絶対に後悔する気がするから。
夕暮れになりドリュアスはお店に戻っている頃だと思う。
「ヴィーネ。ドリュアスに会いに行こうよ」
「どうしたの?何か用事があった?」
前から気になっていたんだけど、色々と忙しかったからね。
「世界樹を燃やしたのはジェラ姉ちゃんだけど、世界樹ってただの木なのかなと思ってね。この星で本当は何か役目がある気がするんだよ」
「あー、それはありそうだよね。精霊まで宿ってたからね。聞きに行った方がいいね」
「じゃあ、行こうか。転移魔法」
セイレーンが店番をしているしドリュアスも宿っているね。
ドリュアスのお店は凄い人気なんだよ。
研究材料として買う人も、仕事の疲れを取る為に買う人もいる。
ほとんどの病気を治す事ができると思うし、まさに万能薬だね。
「ドリュアス、話があるんだけどいいかな?」
世界樹の中から小さな女の子が顔を出した。
何故こんなに小さな精霊が巨木を制御しているんだろう?
世の中不思議だよね。
「どうしたの?真面目な話みたいだね」
「かなり真面目な話だよ。世界樹が本来の大きさで存在しないと、この星ってどうなるかな?」
ドリュアスが驚いた顔をしているよ。
何に驚いたのかな?
「凄いね。エルフも妖精も気にしたが事ないのに良く気付いたね。簡単に説明すると崩壊するよ」
凄い簡単に説明してくれたよ!
とんでもない事が起きそうだけど。
「その割に平気そうなのは何でなの?ドリュアスだって皆が死んだら寂しいでしょ?」
「皆の寿命の間は大丈夫だよ。確かに世界樹は焼かれたけど根が地下世界を支えているからね。木は焼かれても根は簡単には腐らないから」
「母さん、叔母さんがとんでもない事してるよ。私も責任感じちゃうよ」
ドリュアスは今仲良くしている人が死ぬ間は根が支えてくれると思っているんだ。
そして、世界が崩壊しても私やヴィーネが死なないから問題ないと考えている可能性があるね。
「例えばだけど、世界樹を必要な大きさまで成長させればドリュアスが宿っていなくても世界の崩壊は防げるの?」
「勿論防げるよ。私だけしか世界樹を成長させる事ができなかっただけだからね。物凄い大きさが必要だよ?幹の太さがこの国の半分ほどになると思う。高さが10000mあれば世界の崩壊を防ぐ事はできるかな。焼かれた時は1000mも無かったけど今もまだ崩壊してないでしょ。意外と根はしぶといんだよ!」
なるほどね。
ドリュアスには世界樹を成長させながら世界を見守る役目があるんだ。
1000mの時に焼かれても5000年以上世界を支えているんだから、やっぱり神樹だね。
それに、地下に根が残っていたからドリュアスは死ななかった可能性があるね。
「混沌期に焼かれたと聞いた時から不思議だったんだよね。そもそも混沌期ってジェラ姉ちゃんの姉の責任だと思うんだよ。地上で魔人が活動できる程に瘴気が溢れたのって、瘴気で産まれる魔物や魔人が地下で殺され過ぎたんだよ。それが原因でダンジョンから溢れてきたと思うんだよね。古代種ドラゴンと魔人が覇権をかけて争ったって嘘だと思ってたもん。例え魔人が勝っても地上で生活できなくなっていたはずだからね。そうでしょドリュアス?」
「凄いねー。たぶん正解じゃないかな。魔人が古代種ドラゴンに勝ってたら、結局瘴気は地下まで引いたと思うからね。世界樹の役目は世界を3層(地下、地上、空)に分ける為だから。生物が世界の理を変える事はできないよ。理を壊す事はできるけどね。その場合は世界が崩壊するだけだね。あと1000年は持つと思うけど世界樹を育てるの?」
「叔母さんは姉が撒いた種を一生懸命に刈り取っていただけだったんだね。凄く納得できる話だよ。ドラゴン馬鹿だし、古代種ドラゴンは全員が勘違いしていそうだね」
予想通りか。
本当に迷惑な姉妹なんだから。
でも、ヴィーネに会えたし許してあげよう。
「ハイエルフの国があった場所に世界樹を限界まで育てよう。神国シェリルだし、世界の聖地にすればいいよね!」
「流石母さんだね!星も管理してあげるって事だから逆らう奴は殲滅だよ」
「やる事が大きいねー!私も偶にはそっちに宿るかもしれないから楽しみにしてるよ」
今回は魔力消費が大変なだけでいい事しかないね。
全力でやるしかない!
「じゃあ行こうか!」
「そうだね。頑張らないとね!」
ヴィーネと2人でドリュアスに手を振って別れ、ハイエルフの国の跡地まで飛んできたよ。
国の半分ほどの大きさの幹になる事を考えると、最初に植える場所が肝心だね。
それは、ヴィーネに任せれば大丈夫。
「ヴィーネ、よろしくね!」
「まかせてよ!創造魔法【世界樹】」
よーし、私の魔力の限界を見せてあげようじゃないか。
「行くよー!世界樹、私の魔力の限界までおっきくなーれ!」
あー、私が世界樹に押されていくよー。
周りの木々もなぎ倒して大きくなっていくね。
うっ、流石に魔力を一気に大量消費するときつい。
魔法が使える程度まで自然界の魔力を吸収しよう。
ふぅ。
時空魔法、予備の魔石から全ての魔力を吸収する。
自然界の魔力を私が吸収し過ぎると、街に問題が出るかもしれないからね。
「ヴィーネ、十分成長したかな?」
「うーん…、もう1回全力で成長させれば問題なさそうだけど大丈夫?暇な時にやった方がいいんじゃない?」
「予備の魔石から魔力は回復したから大丈夫だよ。いつ何が起きるか分からない世界だから、やれる時にやっておくよ」
「じゃあ、私が社まで母さんを運ぶよ」
ヴィーネがいるから魔力を使い切っても安心なんだよね。
私1人だったら危険過ぎてとてもできないよ。
「よーし!世界樹、私の魔力の限界までおっきくなーれ!」
今回は押される前にヴィーネに運んでもらえたよ。
世界樹の最上部まで連れて行ってもらった。
雲を突き抜けて枝や葉が大きく扇状に広がっているね。
世界を包み込んでいるように見える。
普通の木だったら、ここまで成長できないよね。
やっぱり特別な木だよ。
最低限の魔法が使える分だけ魔力を吸収しておく。
動けないからね。
「もう十分だね。帰ろう」
「本当に凄いね!世界の名前が付くだけの大きさだよ。転移魔法」
社に帰ると安心するね。
「お風呂に入って寝よう」
「そうだね。今日は働き過ぎだね。お風呂に入って寝よう」
一緒にお風呂に入って、一緒に布団に入る。
「じゃあ、おやすみー」
「おやすみー」
ヴィーネがいるから安心して寝られるよ。
私は10日間寝続けた。
ヴィーネも隣で一緒に寝ているけど大陸を監視してくれているからね。
本人に言うと怒るから言わないけど大陸王だからね。
「よーし、復活したよ!ドリュアスに感想を聞いてみようか?」
「そうだね。精霊の感想を聞きたいね。転移魔法」
ドリュアスのお店に移動したね。
「ドリュアス、どうかな?かなりいい感じに成長したでしょ?」
「ここまで成長させちゃうんだね。流石に驚いちゃったよ。焼かれていなかったとしても、ここまで大きく成長はできてなかったと思うよ。世界樹も防護壁で国の中に入れておいて。何もしていない人たちに世界樹の恩恵を渡すつもりはないからね。私は平等じゃないのさー」
「その通りだね。この国にある世界樹って事にしておこうよ。世界樹を巡って争い合いとかされそうだし、その方がいいよ」
その可能性はあるね。
世界樹は神樹だと思っている種族は他にもいるかもしれないし、悪戯されても嫌だからね。
念話。
「巨大な世界樹を国の中に入れるから、東の防護壁の近くにいる人は移動してね」
誰もいないね。
魔獣も入らないね。
一度防護壁を壊して。
土魔法。
子供たちの遊び場が広がったね。
ヴィーネと一緒に作った国が1000年で終わるのは勿体無いよ。
流石土地神様です。




