閑話 チャド 宝の山
おうおう。
どんだけドラゴンが攻めて来たんだ?
多過ぎて数えきれねーじゃねーかよ。
本当に馬鹿な種族だぜ。
力の差を理解しねぇ。
自分たちが強いと思っているから相手の力量を計れねぇ。
自分より上位種のドラゴンには勝てないと思っているだけだな。
住民の何人かは恐怖しているみたいだが、お前らが理解しないでどうするよ?
この国には誰が住んでいるのか知っているだろうが。
そして、シャーロットの嬢ちゃん達がドラゴンを連れ去った。
あっという間の出来事だったな。
それに、念話でドラゴンの角や翼をくれるって言うじゃねえか。
本当に気前がいいなー。
嬢ちゃん達が帰ってきたら集落に急いで行かないとな。
いい素材を取られちまうよ。
シャーロットの嬢ちゃんから戦いが終わった念話が入った。
傲慢なドラゴンを臆病な蜥蜴に変えたそうだ。
可愛い顔してえげつない事をするじゃねーか。
最高だぜ!
俺は走って集落に向かった。
古代種ドラゴンの角や翼は絶対に確保したいからな。
やはり素材に集まってやがるな。
それにしても素材の量が凄いな。
小高い山のようだぜ。
1000体近くの全てのドラゴンを蜥蜴に変えたみてーだな。
ますます最高じゃねーか!
「おい、素材の優先権は俺にあるからな。勝手に持ってくなよ!」
走りながら牽制をする。
素材だけは譲れないからな。
どうしたんだ?
誰も手に何も持ってねーじゃねーか。
エルダードワーフらしくねーな。
職人魂を刺激する物ばかりじゃねーかよ。
「チャド、これは何だ?色々なドラゴン種の角や翼だとは分かるが、何でこんな量が突然この場所にあるんだ?」
「あん?ああ、地下にいたから見てねーのか?馬鹿なドラゴンがこれだけ攻めて来たんだよ。シャーロットの嬢ちゃんが素材に欲しいか聞いてきたから欲しいって俺が言ったんだぜ。俺が最優先な。次はアーロンだ。その後は勝手に決めてくれ」
近くで見るとすげーな。
まじで宝の山だぜ!
「お前が欲しいって言ったからお前が優先なのは理解した。だが、何故次はアーロンなんだ?」
「ああ、剣を打って欲しいって依頼があったんだが、シャーロットの嬢ちゃんは支払いが足りていないと感じてるんだよ。だから、ドラゴンの素材を好きに使って支払いの足しにしてと言ってきたんだよ」
俺は100万ギルと巨大な隕石で十分過ぎると思うんだがな。
まあ、太っ腹なのはいい事だぜ。
「はぁー?古代種ドラゴンの角や翼が金で買える訳が無いだろ。長命種の俺たちですら手にするのが一生で一度あるかないかだぞ。それをこれだけただで使っていいのか?とんでもなく太っ腹だな」
「ああ、シャーロットの嬢ちゃんは太っ腹だぜ!」
「あれだけ巨大な隕石をくれたのに足りてないと感じているんだ。しかも、古代種ドラゴンの角や翼を好きにしていいのか…。神様じゃないか。ああ、創作意欲が湧いてくる。できた物は神に奉納しておこう。また素材をくれそうだよ。実用、保存用、観賞用だけ作れればいいから、あとは皆で好きにしてよ」
実用は分かるが、保存用と観賞用は一緒じゃねーのか?
アーロンの思考はほんと分かんねーな。
「決めるも何も人数分は余裕であるだろ。軽く見ただけでも古代種ドラゴンの角が100本以上はあるぞ。本当に凄いな。切断面も綺麗だしさっきまで生えていた角や翼だろ?最高の素材じゃないか。攻めて来たドラゴンはどうなったんだ?」
「ああ、1000体近く攻めて来たみたいだが、蜥蜴に変えて竜の国に送り返したみたいだぜ。笑えるだろ?」
「あんなに可愛い顔して結構やるねぇ。蜥蜴に変えたからこれだけ素材があるのね。最高じゃないかい。ただで貰うのは流石に悪いし、アーロンは剣を打つんだろ?じゃあ、私が鞘の装飾をするわ」
「そうだね。剣を2本奉納しよう。鞘の装飾は頼んだよ。初めてで少し緊張しちゃうね」
古代種ドラゴンの角や翼は手に入らねーからな。
あいつらは地上で死ぬ事がまず無いからな。
ドラゴンが馬鹿で最高だぜ。
自分たちから素材を落としに来やがった。
手に入らない素材は無いと言っていたが、素材から寄って来やがった。
最高の環境じゃねーか。
俺ですら素材を持つ手が少し震えちまうぜ。
これを使って何をしようか…。
考えるだけでも何年かかるか分かんねーな。
ああ、たまんねーぜ!
値段が付けられない宝が社に持ち込まれそうですね。




