閑話 ジェラルディーン 竜の国
愚兄の計画にドラゴンが使われているとはね。
流石に度が過ぎればヴィーネが滅ぼしに来る可能性が高い。
馬鹿の相手って本当に面倒なのよ。
ここに帰って来るのも久しぶりだわ。
「「お帰りなさいませ。竜王様」」
「ああ、ただいま戻った。王の間に族長を集めてくれ」
「「かしこまりました」」
検問兵をしているドラゴン2人(人型)に族長を集めるように指示を出す。
ドラゴンは人間の階級社会と似ている。
階級を決めるのは産まれではなく力だけどね。
しかし、ほとんどのドラゴンは産まれてから強くなる努力をしない。
年齢を重ねれば強くなると考えており、結果的に産まれが階級を決めてしまっている。
情けない限りだよ。
別に指導する気も無いけどね。
私は王の間に直接行き、椅子に座って族長が集まるのを待つ。
ドラゴンは人型で生活する事が多い。
楽だからね。
ドラゴンだと広い場所が必要になる。
だから、家も人型で生活するように作られている。
人型になれない未熟なドラゴンは森で生活している。
意思の疎通は図れるので問題は無いが、私が干渉する事はほぼ無い。
弱いドラゴンが嫌いだからね。
クリスタと組手をしてから、より強く思うようになったわ。
恵まれた環境で強く産まれたのに努力をしない。
私が強いからドラゴンが恐れられている事を分かっているのだろうか?
集まったようだな。
私を含めて20人の古代種ドラゴン。
色々なドラゴン種が住んでいる竜の国だが、王の間に入れる族長は古代種ドラゴンだけだね。
20人に選ばれるには、この中の誰かを倒す必要がある。
選ばれた20人の中で更に強さを競い合い、一番強い者が竜王となる。
古代種ドラゴンに挑戦する他のドラゴン種はいない。
産まれの時点で勝つ事を諦めているからね。
シャルの国に攻めた族長は20人に選ばれた族長ではない。
兄に直接命令されたのか、この中の誰かから命令されたかは定かではない。
私は姉を封印した後、すぐに竜の国を訪れて竜王になっている。
親の記憶のせいで竜王にはなるべきものだと思っていたからね。
ほんとに失敗だったよ。
力の使い方は姉の近くにいた事でより理解できた。
姉もシャルもよく似ているよ。
強くなる為には自己犠牲も厭わない。
天才が努力して更に強くなろうとする。
私も天才なのだろう。
見るだけで大体同じ事ができてしまうからさ。
「久しぶりだな。この中で私の兄に命令をされている者はいるか?今なら殺さずに許してやるから正直に手を挙げろ。兄は既に死んでいるぞ」
笑えない状況だな。
半数も手を挙げている。
シャルに呼ばれて良かったよ。
放置していたら確実に竜の国は滅んでいたね。
「お前らが命令されている内容はシェリル国の破壊だろ?その国は私の娘たちが管理している。今の所、馬鹿な族長が2人攻めたみたいだが、奇跡的に許されている状況だ。今後は絶対に攻めるなよ。そして、攻めさせるな。この国が滅びる事になるぞ!」
「そんな馬鹿な!ドラゴンを滅ぼせる存在など地上におりません」
「その通りだ。その国を滅ぼせば俺が竜王になれるのか?」
勘違いした馬鹿の相手は本当に嫌になる。
我慢にも限度がある。
自然と殺気が漏れているのが分かるよ。
【お前ら殺すぞ】
「雑魚共が調子に乗るな。私の命令に逆らうなら殺す。どうした?かかって来ないのか?」
「あ、ああ、俺はまだ若いからな。もっと強くなるまで待つさ」
残念だがお前は歳を重ねる事はできない。
愛娘がやって来たからな。
「君は殺すよ!私たちの国を滅ぼすと口にしたからね。本当に勘違いした馬鹿ばかりだ。ほら、産まれたばかりの私が相手になってあげるよ。かかって来ないの?君が滅ぼす予定の国からわざわざ来てあげたんだよ?」
やっぱり来ちゃったか。
馬鹿共が腕試しで挑む可能性が高いからね。
自分たちが強者だと勘違いしている種族だから。
死に直面して初めて考えを改めるから面倒なんだよね。
でも、今回は改める機会が無さそうだ。
こんなに小さな女の子が世界最強なんだから面白いわね。
全員がヴィーネの力に恐怖して声も出せないのか…。
人型だからほとんど力を解放していないのに。
こいつら全員クリスタより弱くないか?
本当に同じ古代種ドラゴンなのか疑いたくなるな。
「ヴィーネ、何人殺すつもり?」
「私たちの国に攻めて来そうな馬鹿は皆殺しにするよ。話の流れは予想通りだからね」
私の知識もあるし予想されちゃうわね。
実際、私も予想通りの展開だったし。
シャルがいないという事は止める気も無いんだね。
じゃあ、私も静観しよう!
ヴィーネはシャルの技も使えるから便利よね。
念力で固めて、全員の記憶を覗いているわね。
「ドラゴンは火に強いよね!火魔法、火の中で何秒生きていられるかな?私は竜王と違って優しくないよ?」
丁寧に結界で対象以外燃えないようにしているわね。
煩くないように声も消しているわ。
そういう所がシャルにそっくりよ。
まあ、早いか遅いかの違いしかない。
苦しんで死ぬんだね。
「今度ふさげた真似したら更に苦しませてから殺すからね。バイバイ。転移魔法」
兄から指示されていた奴と滅ぼすと発言した奴は殺されたね。
記憶を覗いて言葉では止まらないと判断した訳だ。
本当に馬鹿で面倒な種族だわ。
「私の娘は強いだろ。言葉で止めようと考えた私が間違っていたみたいだ。兄の指示を聞くような奴は殺す必要があったようだな」
「竜王様。これを許していいのですか?半数以上が殺されてしまいまいしたが…」
本当に分かってないな。
古代種ドラゴンの上位が軽く殺されたんだぞ。
ヴィーネが強いのもあるが上位19人が弱過ぎるんだよ。
「力が全てだ!許す許さないじゃない。止められないんだよ。お前は止められるのか?私は楽ができて良かったと思っているぞ。記憶まで覗く事はできないからな。本来ならあの子が竜王だ。私は優しいから良かっただろ?お前たちがどれだけ歳を重ねようともあの子には勝てない。もう一度だけ言っておく。私の娘たちが管理している国に手を出すな。理解できたな?」
「理解しました。この国の全てのドラゴンに伝えます」
結果的には良かったかな。
今の結果を見た族長たちが必死に伝えるだろう。
竜の国が滅びる事が容易に予想できるだろうからな。
ドラゴンに2回も攻められたらヴィーネは怒るわよね。
私だって同じ事をされたら怒るからね。
古代種ドラゴンを灰にするとはね。
静かだし後には何も残らないなんて最高じゃない。
今度私も採用しよう!
よく考えれば、この国が無くなれば娘たちと一緒に暮らせたわね。
ああ、失敗したなー。
ヴィーネちゃんはゴロゴロタイムを邪魔されてイライラでした。
ジェラ姉ちゃんは3人で暮らしたいと考えています。




