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土地神様は吸血鬼  作者: 大介
第3章 神国シェリル

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閑話 カーリン 知らない人

天使様のお姿を見るだけで幸せです。

孤児院長になったあの日から毎日が幸せで溢れています。


クリスタも言っていました。

不幸は突然やって来ると。

ジェラルディーン様はそれを伝える為に火を吹いていると。


私は納得してしまいました。

不幸には何の前触れもありません。

自分の不注意で巻き込まれる事も、無関係に突然巻き込まれる事もあります。


私は自分の体でそれを知っています。


ですから、強くなれる秘儀を教えてもらえたのはとても嬉しかったのです。

魔法の特別授業の助手に選ばれた事も、とても光栄でした。


シャーロット様に魔法を覚えさせたいと思って頂けたのですから。


私は努力し続けます。

回復魔法は本当に難しく、レナーテも努力している状態です。

水魔法は手から水を出す事はできても、形を作り飛ばす事は難しいです。


秘儀を続けると長生きできると知りました。

努力を続ける事が長くできるのです。

少しでも長くお仕えできるように身に付けなければいけません。


クリスタの力を実際に目にしたかったので訓練場で見せてもらいまいた。

はっきりと次元が違うと分かりました。

視界には残像も映らないのですから。


私は何も知る事ができませんでした。

皆がそう感じたと思います。


ここまで到達して尚、終わりがない。


弱者の為に体を犠牲にし続け生み出したシャーロット様の秘儀です。

先に知っていたクリスタが強いのは当然の事なのですが、悔しい事に変わりありません。

冒険者の頃にはそれほど差が無かったのです。


必ず追い付き、追い越して見せます。


今のクリスタの位置から更に強くなれる方法まであるのです。

最低でもクリスタの位置までは到達する必要があります。

私は仕事中、常に魔力を動かし続けます。


まずは、薄く全身に延ばす速さです。

全身に魔力を延ばしただけで冒険者のSランクは超えているのでしょう。


しかし、遅すぎます。

実戦で使えなければ意味がありません。

まずは、素早く全身に薄く延ばす事ができるようになる。


そして、次は思った場所に魔力を集める事ができるようになる。

考えれば考える程、訓練に終わりはありません。


私は訓練を楽しみながらやっていました。

子供のお世話をしながらも魔力の移動はできるのです。

お酒を飲みながらも魔力の移動はできるのです。


魔力を移動させる事を当たり前にする事。

それが最初の段階だと感じています。


絶対に負けません。

クリスタに負ける訳には行きません。


一度助けてもらったのです。

何度もクリスタに頼るような真似はしたくありません。


お祭り以降は子供たちを送り出した後、時間があれば訓練場で組手をしています。

クリスタと組手をする事はできません。

レナーテもやはり数段上です。


ビアンカやチェルシーと一緒に訓練をしています。

皆が前を向いて努力し続けています。


教えてもらったのに努力した人がクリスタしかいないという現実。

どうしてそこまで酷い事になってしまったのでしょう。

日々成長を感じますし終わりがないと思います。

何故途中で止めてしまうのでしょう。


私にはその気持ちが分かりません。


偶にクリスタも参加して魔力の動きを見せてくれました。

魔力の移動速度が速過ぎます。

私たちが見える程度に速度を落としているのにです。


相当訓練をしたのだと分かります。

中立派と言っていますが、確実に信者ですね。


思った時に思った箇所に魔力を集める事ができる。

それがクリスタの到達している場所です。

薄く延ばす速度を上げようとしている私たちにはまだ届かない位置です。


面白いですね。


冒険者だった頃にはなかった感覚です。

日銭を稼ぐ為に死ぬ確率の高いダンジョンに潜る。

本当に無意味な日々でしたが、この国に導いてくれたのです。


感謝しましょう。


訓練所から孤児院に戻る途中の事です。

2人の男性に話し掛けられました。


「カーリンとクリスタじゃないか。久しぶりだな。この国に住んでいるのか?」

「本当に2人じゃないか。探していたんだぞ!」

「どちら様ですか?私はあなた達の事を知りませんけど?」

「あんた達は誰?何か用なの?」


1人の男性が行く先を塞ごうとしています。

何故か物凄く苛々しますね。


「一緒に冒険をしていたのに忘れている訳ないだろ。あの後、俺たちは急いで神官の元に走ったんだぞ。戻ったら2人ともいなかったから諦めていたんだ。腕のいい神官に巡り合えたみたいだな。良かった」

「言っている話が分かりません。すみませんが急いでいますので」

「そうだね。行こうか」


この人は何故神官を探したのでしょうか?

それに、私が出会ったのは天使様ですよ!


「ちょっと待ってくれよ。俺たちは護衛でこの国に来たんだよ。凄すぎるじゃないか。この国の住人になる為には紹介が必用なんだろ?俺たちを紹介してくれよ。今はAランクの冒険者になったんだぜ。かなりの稼ぎだ。問題は無いはずだろ?」


何を言っているのでしょうか?

冒険者のランクなんて関係ありません。


この国の住民に簡単になれる訳が無いでしょう。

私もクリスタも無関心で孤児院に帰るつもりでした。


「ごめんなさい。孤児院の仕事に戻らないといけないので、これで」

「そろそろ子供たちが帰って来るからね。忙しいなー」


「おい、孤児院なんてつまらない仕事辞めろよ。結婚する約束をしていただろ?冒険者を引退しても十分に食べていけるだけ稼いだ。孤児なんて相手にする必要ないだろ。一緒に住もうぜ」

「そうだぞ。所詮、孤児院だろ?どうでもいいじゃねぇか。俺たちはAランクの冒険者だぞ。比べるまでもないじゃないか」


この国で孤児院や孤児を馬鹿にしますか。

今すぐ死にたいのでしょうか?


私にも我慢の限界がありますよ?


クリスタも雰囲気が変わりました。

表情は変わりませんが魔力の動きが違います。


「ねぇ、あんた達を護衛に雇ったのは誰?そいつを連れて来なさい」

「隣国の貴族だよ。ここの住民の紹介なんて金で買える程のな。今は税理官と話していると思うぞ。いくら金を払えばいいのか交渉でもしてるんじゃねーか?」


つまらない嘘を吐きますね。

この国を全く知らないのでしょう。


国名が変わったのに勘違いする人はいるのですね。

神国シェリルです!


地位やお金に意味はありません。


「貴族なんて生物はこの国に入れないよ。商人の振りでもしたのか?」

「良く分かったな。俺たち冒険者が商隊の護衛をする事になったんだが、その金を負担する事で混ぜてもらったんだよ」


ほとんど密入国に近いではありませんか。

確実に処分対象ですね。


「どこから来たか知らないけど、その商人たちは追い出されていると思うわよ。当然貴族もね。あんた達が別行動していたから気付いて無いだけ。もうすぐ追い出される。さようなら」

「そうね。時間の問題よ。生きて国を出たいなら今すぐに国外に出なさい。私たちに絡んでいると死ぬわよ」


「おいおい、俺たちAランクの冒険者だぞ!誰が追い出せるんだ?結構な数の修羅場くぐって来たんだ。お前たちが知っていた頃の俺たちじゃないんだぜ?」

「本当にいつまで舐めた口を利いてるんだ。下手に出ていたらいい気になって。孤児院務めが勘違いするなよ。ガキの世話してるだけの女に何ができるんだよ」


私とクリスタが動こうとしたら止められました。

綺麗な銀髪を風に揺らし、初めからそこにいたのかのように美少女が立っています。


「ねぇ。君たちは孤児院を馬鹿にしたよね?この国で孤児院を馬鹿にすると死刑だよ。今私が決めた。カーリンもクリスタもこんな低俗を相手にする為に鍛えている訳じゃないでしょ?私が処理してあげるよ」

「そうですね。中立派の私としては遅いなーと思っていたんですよ。何でこいつらが生きているのか不思議でしたからね」

「クリスタ、何て事を言うのよ!ヴィーネ様すみません。勘違いした中立派気取りが生意気な事を言っていますが、本当は信者なんです」


ヴィーネ様はとても楽しそうな笑顔でした。

「中立派気取りの信者ねー。クリスタ中立派じゃないじゃん。信者だったんだ」

「違います。私は孤児院の中で中立派です。孤児院の信者は信仰心が篤すぎて、私は中立派になってしまうんですよ」

「何を言ってるのよ。普通の事を普通にしているだけだわ。秘儀を突き詰めて更に上を目指そうとしている中立派気取りが一番強い事が孤児院で大問題よ」


ヴィーネ様は声に出して笑っています。

笑う仕草がシャーロット様にそっくりですね。


「だよねー。中立派が国で一番強いとが有り得ないよね。孤児院で問題になっているんだ。だから、異常な努力を続けている訳だ。なるほどね。問題は改善しないといけないからね」

「中立派に負ける信者とか有り得ませんよ。すぐに音を上げます。お願いですから教えて下さいって。まあ、教えませんけどね。楽しみですよ、信者たちが中立派に頭を下げる日が」

「あなたが組手で倒れ伏した時に、信者でしたごめんなさいと謝らせる事が私たちの中で決まっているのよ」


「最高だね!その時は私も呼んでよ。クリスタの口から信者でしたと謝る姿は是非見たいね。ところで、これは誰なの?知っている人?」

「全員倒れ伏して中立派には勝てませんでしたと謝る姿を見る事になりますよ。えっと、知らない人ですよ。冒険者らしいですからどこかですれ違った事があるかもしれませんけどね」

「覚悟してなさいよ。いいえ、知らない人です。住民になりたいから推薦しろとしつこいのです。お願いします」


そういえば、ヴィーネ様が来てから男たちの声が聞こえませんでしたね。

そして、気付いたら目の前から消えていました。


「結果は同じだけどね。密入国だし。検問に罰を与えないと。国長大変だよ。またねー」


ヴィーネ様は笑顔で手を振って去っていきました。

「検問の方、大丈夫かしら?今も獣人の方が頑張っているのよね?」

「あの犬とは違って真面目な人たちだから大丈夫だよ。孤児院に帰らないと子供たちが拗ねるよ」


「拗ねる事はないでしょ?普段通り遊んでいるだけよ」

「確実にクラーラは拗ねるよ!もっと自分を客観視した方がいいよ。子供たちから絶大な支持を得ているからね。今、戦力的に一番強いのはカーリン軍だから。ちゃんと理解してよね」


クリスタが客観視するべきでしょう?

信者なのに認めないのですから。


それに、カーリン軍ってなんですか。


「子供たちに戦わせる事なんてできないわよ。とりあえず急いで帰りましょう」

「そうだね。カーリン軍は怒らせると怖いから。そういえば、本当に名前を覚えてないや」


クリスタの知っている人だったのでしょうか?

全く知らない人でしたので本当に邪魔で仕方がありませんでしたよ。

カーリン軍は最強です。

孤児院の子供たちは結束力が強いですからね。

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