妖精との交流
多種族国家シェリルか。
世界中にお母さんの名前を伝えるには、この方がいいね。
国を大きくしてたくさんの人を助けようと思うと、食糧生産の仕事をしてくれる人が多く必要になる。
他国ではそういう仕事も奴隷にさせていると思うけど、ここでは絶対にしないよ。
そんな事をするくらいなら、このまま発展していけばいいと思う。
社で色々考えていると、小さなお客さんが来た。
気配はずっと感じていたし、悪意はないから放置していたけど、ついに会いに来てくれたみたい。
少し社の扉が開いているから、こっそり入って来たんだね。
小さい羽の生えたエルフの女性みたい。
綺麗な羽だね。
「初めまして。妖精のユッタです。シャーロット様にお願いがあって来ました」
「街に隠れていたね。まだ、仲間が隠れているでしょ?それで、お願いは何かな?」
「やはり、見付かっていましたか。妖精を保護して欲しいのです。駄目ですか?」
「このまま、街にいれば保護するけど何か違う話なのかな?」
「はい。シャーロット様が奴隷を助けているのを見ましたので、助けて欲しいのです。私たちは観賞用として捕まえられて、籠に閉じ込められているのです。その仲間を助けて欲しいのです」
「とても酷い話じゃないか。まず、街中にいる仲間を皆集めて欲しいな。その後、誰を助ければいいのか教えて欲しいんだけど、それでは駄目かな?」
多分、ユッタの記憶を覗くだけじゃ皆を助けられないし、誰を助けたいのか分かりにくい。
皆をここに集めていない人を助ける方が簡単なんだ。
「そうですね。誰を助ければいいのか皆を集めないと分かりませんね。すぐに呼んできます」
「うん、待ってるねー」
10分くらい待ったらユッタが皆を連れて来た。
35人隠れていたみたい。
みんな綺麗だね。
羽が輝いている。
羽の色が違うのは、得意な魔法の違いかな?
それとも個性かな?
でも、捕まえて籠に入れるとか酷過ぎるよ。
何故そんな事が出来るのか私には分からない。
同じ人で、大きさや見た目が違うだけじゃない。
会話も出来るのに悲鳴を聞いても何も感じないのかな。
ほんと嫌な事が最近多いね。
「お待たせしました。街にいる皆を集めて来ました。そして、助けて欲しいのは、この中にいない仲間全員です。可能でしょうか?」
「皆の記憶を覗いていいのであれば可能だけど、その後どうするの?」
「この街に住まわせて下さい。皆で仕事しますので」
「仕事は好きにしていいけど、何を食べているの?」
「蜜や果物です。甘いものが大好きです。リンゴ飴が食べたいのです」
「リンゴ飴が食べたい気持ちは凄い分かる。得意な仕事は何かな?」
なるほど。
この街に住むしか無いね。
リンゴ飴が食べたいなら仕方が無いよ。
「植物を育てる事です。他種族の方の食べ物を育てる事が出来ると思います」
「分かったよ。じゃあ、畑を用意しよう。ハイエルフとは会った事ある?」
「はい。ハイエルフが街に来たので会う事にしました。私たちも森に住みたいです」
「なるほどね。家は必要かな?」
ハイエルフが街に来たから信用してくれたのかな?
皆が信用してくれる事はいい事だね。
「ハイエルフの人たちと一緒に住む事に慣れていますし、受け入れてくれると思います」
「分かったよ。まずは、救出だね。今から皆の記憶を覗かせてもらうけどいいかな?」
「勿論です。私たちは100人以上いたのです。どんどん捕まって減ってしまいました」
「本当に酷いな。すぐに助けてあげるからね」
私は35人の記憶を覗き、ここにいない妖精の位置をどんどん把握していく。
エルフの子供たちを助けた時もそうだけど、妖精が捕まっている位置もほとんど一緒だよ。
奴隷を使う人は、他種族も攫うし妖精も捕まえているんだ。
本当に滅ぼしたくなってくるよ。
位置が分かるだけに強く思う。
「把握できたのは85人だけど、どうかな?それで、皆かな?」
「はい。私の部族の妖精は皆揃えば119人になります。丁度です。全員を助けて頂けますか?」
「勿論だよ。召喚魔法。皆揃ったかな?」
凄い部屋の中が色鮮やかになったね。
でも、皆が涙を浮かべているから酷い環境にいたんだね。
助かって良かったよ。
「えっと…。皆揃いました。ありがとうございます!」
「「ありがとうございます!」」
「怖かったよ…」
「助かったの?」
皆で喜びあっているね。
この光景は何度見てもいいよ。
本当はこの光景が生み出されないようにしたいけどね。
「じゃあ、皆でハイエルフの森に行くよ。転移魔法」
今日も泳いでいるね。
どれだけ好きなんだろう。
多分だけど…。
泳ぎ終わって満足そうにしているハイエルフの女性に声をかけた。
「長老に話があるんだけど、呼んできてくれるかな?」
本当に排他的なのかな?
凄い楽しんでいる人ばっかりだよ。
いい光景だけどイメージと違って笑えるよ。
「あ、はい。すぐに呼んできますね」
すぐに来てくれたね。
長老と言っても若いからね。
もしかしたら、こっそり泳いでたりして。
「どうしましたかな、シャーロット様」
「妖精を助けたんだけど一緒に住めるの?妖精が言うから連れて来たんだ」
「長老様ですか。私は妖精女王のユッタです。一緒に住んで頂けませんか?」
え?
女王なの?
自己紹介の時に言ってよ。
みんな自由過ぎるよー。
世界で一番自由なあいつがそろそろ来そう。
100年に一度来るんだよね。
やだやだ。
また「勝負しようぜ?」とか言うんだよ。
来たらその時考えよう。
私は考えるのを止めた。
「私たちと妖精が一緒に生活するのに、何も問題はありませんので大丈夫ですよ」
「長老様、ありがとうございます。皆もお礼を言いなさい」
「「ありがとうございます!」」
「街と森の間の空いている土地で、仕事をするって事でいいのかな?」
「はい。何か育てて欲しい植物があればそれを育てます」
マリアンネを呼ぶか。
最近呼び過ぎている気がする。
実は内心怒ってないかな…。
怖いからマリアンネの感情は見ないようにしようかな。
念話。
「マリアンネ。いつもごめん。至急、森まで来て」
「かしこまりました」
「街の責任者を呼んだから。ちょっと待っててね」
あ、走ってきたよ。
街長って忙しい気がするけど大丈夫かな。
「何かありましたか?周りに飛んでいるのは妖精じゃないですか?」
「流石マリアンネ!詳しいね。お願いされたから妖精を助けたんだ。この子が女王のユッタだよ」
「初めまして。妖精女王のユッタです」
「はい。ええ、街長辞めたいです」
「絶対駄目ー。言うと思ったよ。今回マリアンネにお願いするのは難しい事じゃないから安心して。妖精が森と街の間の土地を、畑として利用して作物を育ててくれる事になったの。それで、作って欲しい作物と、作った作物を買い取ってあげて欲しいんだよ」
機嫌が直ったかな?
街長の仕事だよね?
「街長らしい仕事で安心しました。小麦を育てて欲しいです。種は後で用意しますね。収穫も妖精がしてくれるのですか?」
「はい。作物を育てて収穫するのは得意ですので私達がやります。ただ、重い荷物を運べないので、収穫した小麦を運ぶ人だけは用意して欲しいです」
「それでしたら、その時に収穫した小麦のお金を支払うようにしますね」
「はい。私たちはそのお金で、果物や甘いお菓子を買いたいです。よろしくお願いします」
「住民に伝えておいた方がいいね。いきなり、妖精が買い物にきたら驚いちゃうから」
「そうですね。私も噂でしか聞いた事がない存在でしたから」
住民に念話しなきゃ。
「この国に新しい仲間が増えました。妖精です。小さくて可愛いからって悪戯したら罰を受ける事になるからね。ハイエルフの森と街との間で小麦を育ててくれるから、邪魔したら駄目だよ。それと、妖精がお菓子や果物を買いに行く事があるから驚かないでね」
時空魔法で社から10万ギルを取り出す。
「ユッタ、このお金を使って。みんな小さいから、これだけお金があれば十分だと思う。あとは、働いて稼いでね」
「ありがとうございます。早速買いに行きます」
妖精は小さいから、これでお腹いっぱい甘いものが食べれるね。
果物屋とお菓子屋が大変な事になりそうだけど頑張って欲しいな。
「マリアンネ。今度のお祭りはリンゴ飴増産しておいて。妖精がみんな買うから」
「リンゴ飴を売っているおじさんが過労で倒れますよ。とりあえず、多めに用意しておくように伝えます」
「ありがとうございます。私たちはリンゴ飴がどうしても食べたいのです。1個で5人分はありますから、多分大丈夫だと思います」
フフフ。
リンゴ飴の良さが種族を越えて分かってきたようだね。
りんごの木をここに植えようかな。
いや、植えるべきだね。
私のために。
「今からりんごの木をここに植えるから。ユッタ、それも様子見て」
「分かりました。果物の木ですから大丈夫です」
「シャーロット様。りんごの木をどうやって植えるのですか?」
「んー、ちょっと待ってね。転移魔法」
リンゴ飴を売っているおじさんのお店に移動する。
「おじさん。りんごの種かりんご売ってるかな?」
「古くなって売れないりんごがありますから、好きなだけ持って行っていいですよ」
「ありがとう。じゃあ、1個もらうね。お祭りのリンゴ飴、凄い売れると思うから頑張ってね」
「妖精が好きなのですか?できる限り頑張りますよ」
「ハイエルフも妖精も好きだと思うけど、よろしくね。転移魔法」
「ただいまー。古くなったりんごを貰ってきたよ」
「種を取り出すのですか?」
「とりあえず、種をばらまこう」
リンゴを空中に投げて、土魔法で粉砕した。
「魔法で砕くのですか。嫌な予感がしますけど…」
「よし!りんごの種よ、成長しろー!」
気合を込めて、種が木になりりんごが実る想像を一生懸命した。
お風呂の横にりんごの木がたくさん成長したよ。
「もう、意味不明ですよ。何ですかこの景色は。街長辞めたいなー」
「20本くらい育つように想像したけど、上手くいったね。このりんごは食べたり売ったり好きにしてね。あと3か月くらいでお祭りだから、その時は残しておいてよ」
「流石です、シャーロット様。ハイエルフも妖精もりんごは大好きですよ」
「シャーロット様って超規格外ですね。私たちは心の底から安心して生活できます」
「私の話は無視ですか。街長ですよ?」
「聞いてるよ。子供の為にりんごを持って帰って一緒に食べてよ」
「そうですね。りんごを少し貰って行きますね」
「マリアンネ疲れてる?元気にしてあげようか?」
「止めて下さい!私は元気いっぱいです。りんごを貰って今日は帰りますね」
「元気いっぱいなんだ。じゃあ、街長続けれるね。良かったよ。これで、皆が幸せだよね」
マリアンネが疲れている理由は別にあります。
シャーロットの責任ではありません。
辞めたいと言うのが口癖になってます。




