閑話 ユリウス 安心感
教師という仕事は本当に楽しい。
救ってもらった恩返しのつもりであったが…。
子供たちに歌を教える事が、ここまで楽しいとは思わなかった。
実に気持ちのいい毎日なんだ。
学校が休みの日も街に慣れる為、毎日シェリル国を訪れているよ。
歩いているだけでも楽しい街。
様々な種族が楽しく暮らしている。
その中にセイレーンがいる事が凄く嬉しいよ。
そして、その日は訪れた。
普通の1日だ。
何の予兆も無かった。
ふと気になって見上げると、たくさんの炎が街に向かって降ってくる。
明らかに街に対する攻撃だと思う。
気付いて見上げている人もたくさんいる。
でも、何故だろうか?
上空にお2人の姿を見た瞬間に気にならなくなった。
炎は何事も無かったかのように街の結界に消された。
そして、姿が見えなかった襲撃者を強制的に呼び出したみたいだ。
ドラゴンが10体。
絶望的な状況だと思う。
でも、全く気にならない。
小さな女の子がそこにいるだけで何とも思わないんだ。
何があったのかドラゴンは放置され、お2人はどこかに消えた。
ドラゴンは空中を漂っているだけで攻撃してくる気配はない。
恐らく30分も経っていない。
お2人がドラゴンの所に戻って来た。
そして一緒に街に下りた。
シャーロット様の声が届いた。
ジェラルディーン様の兄と魚人を殲滅してきた。
あれほど恐れていた魚人や古代種ドラゴンでも関係なく瞬殺されるんだ。
アムピトリーテー様は少しだけ悔しそうだった。
自分たちで魚人を殲滅するつもりだったからだと思う。
私も一緒に訓練しているけど身体強化は凄すぎる。
魚人程度を恐れていたのが、おかしく感じてしまう程だった。
それにしても凄いよ。
空にいたドラゴンは街の住民になったようだ。
ドラゴンまで街の住民にしてしまうのですか。
本当に何でもありなのですね。
そして、お2人に敵対すればジェラルディーン様の兄でさえ殺されるんだ。
それに、私は凄く安心できた。
苦しんでいる人には、とても情け深い。
敵には一切容赦がない。
統治者として素晴らしいと思う。
あれ?
統治者なのだろうか?
街はあまりにも自由過ぎるよ。
一番自由なのは研究者たちだと思う。
この国に来て色々と歩いて病院の地下に研究所がある事を知った。
彼らは研究結果を披露する事に全力だ。
街を好き勝手に改造していく。
自分たちの力だけでは難しいと判断すればシャーロット様にお願いしている。
ここは誰の街なんだろうか?
税金を払っているけど街の管理や学校や孤児院や病院に使われている。
誰も何も指示しないのに勝手に街が発展していく。
教師になって他の教師と話すようになって特に気になるようになった。
国長はヴィーネ様になっているけど命令された事がない。
過去に2回迷惑な住民を飛ばしているらしい。
つまり、選ばれた人しか住んでいない事になる。
でも、選別をお願いしたのも住民。
つまり、住民の国だろうか?
いやいや。
それはおかしい気がする。
お2人がいなければ今の攻撃で街は崩壊していたと思う。
神が気まぐれで作った街という事にしておこう。
実際に神様がいるから、それでいいと思う。
ポセイドンの国に帰り砂浜に上がる。
魚人はいないけど住む場所を戻す気にはならない。
ここも、ポセイドンの国ではあるけれど実際はお2人が作った国だ。
ポセイドン様は今日も魚獲りに忙しそうだ。
人魚はとんでもない速さで泳いでいる。
もう、娘たちの方がポセイドン様より強いですよね?
今日は訓練する日では無いので海底にある砂浜の洞窟に入り横になる。
この圧倒的な安心感。
母親に抱かれていた子供時代を思い出す。
何があっても絶対に大丈夫だと思える環境。
ここで、たくさんの子供を産もう。
そして、学校に通わせよう。
降って湧いた日常に、毎日癒されているようだ。
お2人が住んでいるという安心感が街を支えているのだと思った。
甘え続けるのは良く無い事だと思うし強くなる為の訓練も続ける。
だけど、もう少しだけ甘えさせてもらおう。
その代わり教師の仕事は全力で頑張ろう。
族長で気を張っていたが少し疲れたみたい。
ただの母親に戻って子供の成長を見ていたい。
今、それが許される環境にいる。
お2人がそれを許してくれている。
子供の成長を見ていると強く思うようにる。
いずれは子供たちだけで国を守れるようになる。
そして、それが健全な姿だと私は思う。
ただ、お2人は社で寝ているだけでいいと思う。
それが本来の土地神様のあるべき姿だと私は思うよ。
土地神様の気まぐれでできた街です。
圧倒的安心感ですね。
族長も父親や母親に戻れますけど…。




