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土地神様は吸血鬼  作者: 大介
第2章 多種族国家シェリル

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閑話 ポセイドン 八つ当たり

お2人が来てから娘たちの目が違う。

完全に獲物を狙う目だ。


何が始まるのかドキドキしていたら、鬼ごっこだった。

子供の遊びだと安心していたら、娘たちがとんでもない速さで泳ぎ出した。


妻がそれとなく言っていたが…。

既に魚人なんて相手にならないぞ。


とんでもない速度だ。

偶に砂埃が上がったりする。


シャーロット様は砂浜の底に張り付いて魔石を投げている。

娘たちの視線を完全に把握している。


突然魔力が視界に入ったら追い駆けてしまう。

しかも、全ての魔石の魔力を同じ量にしている。


シャーロット様は娘がばらけた後に砂に潜る。

ヴィーネ様は娘の速度より速い速度で移動している。


もう無茶苦茶だのう。

シャーロット様が障害物や魔石をばら撒いたのは知っておるが、ここまで本気で鬼ごっこをする為だったとは思わんかったわい。


娘たちがシャーロット様が潜った砂に潜る。

やはり、魔石しか出てこない。

完全に娘たちの頭には、あの魔力量が入ってしまっているな。


シャーロット様が時間を確認する為か、砕いた魔石の中から顔を出す。

そして、儂の元に来て終了を宣言する。


とんでもない鬼ごっこじゃった。

娘たちは儂より速く泳げる。


とんでもない成長じゃ。


終わった後にヴィーネ様が言った言葉が衝撃だった。

海中での鬼ごっこに慣れていない為もっと速く泳げると。


人魚はあれ以上の速度で泳ぐ事ができるのか。


「お父様。何かアドバイスはありますか?」

「魔力の大きさに意識がいっておった。シャーロット様は色々と変えておったぞ」


「それで、どうやったら捕まえられるのですか?」

「動く魔力の大きさを意識するしかないのう」


「つまり、お父様はあの速度の魔力の大きさを正確に把握できるのですか?」


シャーロット様は自分が動ける速度で魔石を投げている。

あの速度で正確に把握はお2人以外無理じゃないかのう。


つまり、捕まえるのは厳しい。


「今のままじゃ捕まえるのは厳しいと思うぞ」

「つまり、今より何を鍛えればいいんですか?」


「は、速く泳ぐ練習じゃないかな?」

「へぇー。お父様は100対1で鬼ごっこしてくれるのですか?」


「わ、儂は大きいから無理じゃな」

「練習して速く泳げばいいじゃないですか。まさか、できないんですか?」


「儂は速度より力じゃからのう。無理じゃな」

「力はヴィーネ様よりあると言う事ですか?」


「比べる相手が悪すぎるぞ!世界一強い相手と比べんでもいいじゃろうに」

「シャーロット様の言った通りね。意味は無いわ。訓練しますよ」


「「はい、お姉様!」」


八つ当たりじゃ。

完全に負けた八つ当たりじゃぞ。


儂、海の王じゃぞ?

しかも参加もしてないぞ。


少し前まで怯えておった気がするが…。

全力鬼ごっこは恐ろしいのう。


おお、妻が帰ってきた。

「聞いてくれんか。娘たちが鬼ごっこで負けた八つ当たりをするんじゃ」

「どこで鬼ごっこしたのですか?」


「ここじゃ。海中でお2人とした訳じゃ。娘たちは儂より速い速度で泳いどるんじゃ。アドバイスできんわい」

「お2人は何て言っていたんですか?」


「シャーロット様は、儂に聞いても意味ないと言っておったな。ヴィーネ様は、海中での鬼ごっこに慣れてない、もっと速く泳げるよ、と言っておったよ」

「結局あなたにアドバイスを聞いたけど意味が無いからでしょ?」


「できる訳無いじゃろ。今の娘たちなら魚人すら瞬殺じゃ。儂より力はないかもしれんが、速さが桁違いなんじゃ。娘たちに勝つお2人がおかしいんじゃよ」

「それでも勝ちたいから聞いたのでしょう。やはり、学校は素晴らしい環境です。お2人がこうやって刺激を与えてくれるから、より努力するのですね。あなた、アドバイスもできないなら明日の商品を獲ってきて下さい」


「明日でいいじゃないか。明日の商品じゃろ?」

「どれだけあっても売り切れるんですよ。あればあるだけ売れるんですよ?獲ってきて下さい。魚を獲るのも娘たちに任せますか?」


「ああ、今の娘たちなら恐ろしい早さで終わるぞ」

「じゃあ、あなたのお酒は抜きで娘たちにお願いしましょう」


「な、な、なんでじゃ?それは酷いじゃろ!」

「あなたは仕事しないのでしょう?アドバイスもできないし魚獲るしかないじゃないですか」


「行けばいいんじゃろ。行ってくるわい!」

「サンゴも忘れないで下さいよ」


完全に八つ当たりじゃ。


娘にアドバイスできない父親を責めておるんじゃ。

全力鬼ごっこを見ていたらアドバイスなんて思い付かんわい!

お母様には考えがあるのかもしれません…。

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