海中全力鬼ごっこ
思い付いたらやりたくなるよね。
海底に魔石をばら撒き障害物も用意しておいたよ。
封印されているかの如く寝ている振りは今日でお終いだよ。
勢いよくヴィーネに声を掛ける。
「ヴィーネやるよ!」
「何をやるのさ?」
「全力鬼ごっこ、海中編だよ!」
「ああ、人魚は地上だと本気を出せないからね。可哀想だよ」
「そう、日頃のストレスを解消させてあげるのさ」
「母さんのストレス発散でしょ?私も付き合うけどさ」
魔力は抜いておかないとね。
勝負は同じ条件じゃないと楽しくない。
ヴィーネも魔力を抜いてるね。
やる気満々だよ。
「じゃあ、行くよ。転移魔法」
社からポセイドンのお城に移動する。
「おや、お2人ともどうしたのですか?」
「娘たちと遊びに来たんだよ。お父さん」
「やだー!悪役ぽっくなってるよ。恥ずかしから止めてって言ってるのに…」
ポセイドンの喉が鳴る。
「な、何して遊ぶのでしょうか?」
「くっくくく、鬼ごっこだよ。全力だけどね!」
「完全に異常者だよ。頭おかしいもん!」
「では、お父さん。娘たちの悔しがる顔を眺めるがいい。あはははは」
「とんでもなく恥ずかしい展開だよ。何で毎回それするの?」
人魚はゆったりと泳いでいるね。
でも、全員が私たちに注目しているようだ。
「全力鬼ごっこやるよー。集合して!」
「「はい!」」
「怖いよ!何で全員即座に集まるのさ」
人魚たちの目はやる気に満ち溢れているね。
海中で負ける訳がないと思っている目だよ。
実にいいね。
「いい覚悟だね。100対2だよ。私たちを海中で捕まえられるかな?人魚が海中で一番速いと思ってもらったら困るよ。くくくく」
「速いよ。普通に一番速いからね」
「条件はいつも通り。100秒後に開始だよ。捕まえたら1週間お菓子食べ放題だー。始めー!」
「この条件好きだよね。何も無くても皆本気で捕まえにくると思うよ」
私は泳がない。
だって、空中を浮遊しているのと変わらないから。
とりあえず魔石を探して…。
あるある。
削って自分と同じ魔力量にする。
5個用意して移動する。
海底の砂中に1個を深めに埋めて、1個をその砂の上に置く。
違う場所にもう1個埋める。
セイレーンのいる砂浜の底に張り付き人魚たちの様子を伺う。
頑張って探しているね。
やっぱり、魔力を見ているようだ。
お、砂の上の魔石を発見された。
怪しんでいるね。
仲間を集めて囲んだ。
潜っていると思っているようだね。
一気に人魚たちが砂に潜る。
そして魔石が出てくる。
完璧だよ。
あはははは。
人魚がもう1つの魔石に気付いた時に、人魚の見ている方向に魔石を投げる。
前回ヴィーネがやった作戦だね。
お、半分に別れたようだね。
あー!
魔石を投げた場所にヴィーネがいたみたい。
人魚と海中で追い駆けっこ始めちゃった。
完全に敵対行為だよ。
絶対に後で怒られる…。
うん。
今は忘れよう!
魔石の1個を全力で海底に投げ付ける。
砂埃に気付いた人魚が移動したね。
私も移動するよ。
当然最初の魔石が埋めてあった場所にね。
完璧だよ。
ここに魔石が埋まっていると思っている人魚は見つけられないだろうね。
一応魔力を頭に集めて動きを探る。
人魚がこっちにも集まり出したね。
もう一度潜るつもりかな?
魔力を手、足、頭、中心、に細かく分ける。
そして砂の中をゆっくりと移動する。
やっぱり潜ったー!
残念ながらそこにはいないよ。
同じ魔石が埋まっているだけ。
やはり、人魚はあの大きさの魔力に意識がいっているようだね。
私は魔石を砕いた場所まで移動しているよ。
完璧な作戦だね。
砕いた魔石の中から顔を出す。
そろそろ時間だからね。
ヴィーネは捕まっていないみたいだね。
どうやって逃げたのかな?
私は最後にそーっと、おじさんの所に移動する。
念話。
「終了ー!私はお城にいるよ。君たち、残念でしたー!」
皆がお城に来たね。
「人魚が砂潜りばかりしていちゃ駄目だよ。泳がないとね。あはははは」
「くっ、完全に見られているわ!」
「母さん、魔石を投げるなら私が向かった方向くらい考えてよね」
うぐっ。
やっぱり拗ねてるよ。
「はい、ごめんなさい。ヴィーネが動き出したから、しまったと思ったんだよ。でも、人魚に海中で負けなかったんでしょ?つまり、人魚なのに泳ぎが足りないね。あはははは」
「むっ、地上で鬼ごっこをし過ぎたようですね!」
「くくく。お父さんに相談するんだね。まあ、意味は無いと思うけど」
「母さん、最後にポセイドン馬鹿にしてどうするの?まあいいや。海中での鬼ごっこに人魚が慣れていなかったから勝てたね。まだまだ、速く泳げるよ。またねー。転移魔法」
当然お風呂に直接移動だよね。
毎回だから。
「いやー、危なかったね。人魚が海中の鬼ごっこに慣れていたら負けたかもね」
「それより…。砂潜りばかりしていたの、どうせ母さんでしょ?聞いてて恥ずかしいよ…」
ば、ばれてる!
流石私の娘だね。
「人魚だよ?泳ぎ勝負になったら勝ち目無いと思うじゃん。今日の速度だったら勝てたけどさ」
「やっぱり地上の鬼ごっこの影響で尾の魔力操作がいまいちだったよ。それが勝因だったね」
「次に海中でやる時は作戦を考えないといけないね」
「また海中でやるつもりなんだ。別にいいけどね…」
お風呂から出て、布団を敷いて、一緒に入る。
「勝利の後は気持ちいいね。おやすみー」
「間違いないね。おやすみー」
ヴィーネの抱き着く早さが勝利の喜びを表現しているようだよ、あはははは。
完全に異常者です。




