セイレーンを助ける
布団の中で寝ずに考えていた。
もう、海中に海上を作っちゃおう。
ポセイドンに守りはお願いすればいいよね。
海の王だからね。
「ヴィーネ決めたよ。海中に海上を作る」
「とんでもない事言っちゃうね。ああ、ポセイドンの国を利用するんだね」
流石ヴィーネ。
すぐに理解してくれた。
「そう、土魔法で陸上を作って、時空魔法と風の魔石で空気を送り込む。空気の出口と入口を作れば問題ないと思うんだ。ポセイドンの国の結界にセイレーンも出入り自由にしてあげればいいと思うんだけど、どうかな?」
「いけると思うよ。まずは、セイレーンを助ける為の国を作りに行こう。転移魔法」
社から海中に移動すると驚くよね。
いきなり水浸しだよ。
「こんにちは。おじさんにお願いがあって来たんだ。ちょっと国を改造してもいいかな?セイレーンを助けてあげたいんだよ」
「海の王としてはセイレーンを助ける事は賛成じゃが海中にできるのですかな?」
「まかせてよ。人魚も泳げるように陸地を作って空気を送り込むから。それなら、人魚も陸地で楽しめるでしょ?」
ポセイドンの開いた口が塞がらないね。
どうしたのかな?
「浜辺を作るのはヴィーネに任せるよ。私は魔石の準備だけしておくね」
「うん。その方がいいね。浜辺作りは任せて」
ポセイドンの開いた口がまだ塞がらないね。
「色々とするからお土産持ってきたよ。これでも飲んでて」
「こ、これは。ありがとうのう。では、私は見学しておりますわい」
反応が速過ぎるよ。
土地神りんご酒が少し怖くなってきた。
風の魔石が2個。
時空魔法の魔石が2個。
時空魔法を一方通行にして、空気を送り込もう。
場所は社の近くが安全だね。
「ヴィーネ。魔石を置く場所だけ先に用意して欲しい」
「分かった。ちょっと待ってて・・・・。あそこに置いて」
「ありがとう。じゃあ社から空気を送り込むね」
「はーい。お願い」
転移魔法。
社の裏にしよう。
誰も通る事が無いからね。
時空魔法の魔石を置いて風の魔石を置く。
風の出る向きを間違えるなんて失敗はしないから大丈夫。
私の魔石は瓢箪だから、頭の中が瓢箪だからね。
ふーんだ!
魔石が風で転がったり飛ばされない様にしよう。
少しだけ魔石を地面に埋める。
木魔法で魔石を囲んで空気の通る隙間を用意する。
これだと木の香りがする空気が充満しちゃうね。
これは失敗かな。
海上に住む種族だから木の匂いが嫌いかもしれない。
石魔法。
絶対ヴィーネに何か言われるよ。
ああ、母親の威厳が…。
転移魔法。
「おお、砂浜ができてるね。あとは、空気が溜まってきたら出口と繋ぐよ」
「ねえ、最初に木の香りがしたけど何で変えたのかな?」
やっぱりだよ。
絶対に見逃してくれないもん。
母さんは分かっていたよ。
「海中で作業するヴィーネに地上の香りを送り届けたかったからだよ」
「へぇー。母さんは優しいね。本当に優しいや。世界一優しいよ。本当だよ?」
ぐっ…。
苦しい。
「でしょ?私は優しいよ?優しさが魔力で出ちゃうからさ。しょうがないよね?」
「無属性魔力を操作していた母さんが、魔力の出力を失敗するんだ。ふーん、かなり珍しいね」
「はーい。間違えました。ごめんなさい!相手を追い詰める事は良くないと思うよ」
「ええー!失敗したのに怒られるの?とんでもない事だよ。驚いちゃうよ」
「怒ってません!私は怒っていません!ただ、ヴィーネの成長を願っているのです」
「そうだよね。母さんは怒ってないよ。優しい母さんが、自分の失敗で私を怒る訳がないじゃない」
「分かってくれたんだね。その通りよ。私は失敗をしたのです。もう、許して下さい!」
「母さんが失敗したと思ったから失敗になっただけじゃないの?気にし過ぎだと思うよ」
これじゃあ、どっちが母親か分からないよ。
でも、確かにそうかもしれないよね。
いや、このままでは駄目だ。
話を変えちゃおう。
「この勢いだと、どれくらいで空気がいい感じまで溜まるかな?」
「そうだね…。半日はかかりそう。先にセイレーンを助けに行こう」
「そうしようか。早く助けてあげたいよ」
「だね。じゃあ行くよ。転移魔法」
やっぱり海辺だね。
岩が剥き出しだから砂浜より岩の方が良かったかな?
あとで聞いて駄目なら直そう。
「見た感じはどこにもいないね。隠れているみたい」
「多分、何度も襲われたんだろうね。反応があるから行ってみよう」
飛んで岩場の隅に隠れている子供のセイレーンを見つけた。
私たちを見て震えて怯えている。
ごめんね…。
急に来たから怖かったんだね。
「こんにちは。私たちはセイレーンを助けに来たんだよ。ポセイドンって知ってるでしょ?協力してもらえる事になったんだよ。信頼してくれないかな?」
「ポ、ポセイドンって海の王様ですか?私たちを助けてくれるのですか?本当ですか?」
「本当だよ。母さんは今までたくさんの種族を助けてきたんだ。人魚も助けたからポセイドンが協力してくれるんだよ」
かなり迷っているね。
できれば、記憶を覗いて強制的に召喚はしたくないな。
「分かりました。皆の元に案内します。付いて来て下さい」
「信頼してくれてありがとう。じゃあ、お願いするね」
女の子は崖際をずっと泳いでいる。
隠れるように暮らしていたんだね。
途中で小さな洞窟のような場所があった。
女の子はそこに入って行った。
「お母さん。この人たちが私たちを助けてくれるって。ポセイドンも協力してくれるんだって」
「本当なの?でも、捕まえる様子も無いし嘘を吐く理由も無さそうだね。どうやって助けてくれるのですか?」
信じてくれたみたい。
良かったよ。
私は吸血鬼だけどヴィーネが古代種ドラゴンだから信じてもらえたのかな。
「隠れている皆の記憶を覗きたいんだ。その後なら攫われて生きているセイレーンを呼び戻す事ができるから。そしたら、皆が安全に暮らせる場所に案内するよ」
「分かりました。隠れている事まで分かっているみたいですので皆を集めて来ます。少しお待ち下さい」
崖際の洞窟の中でさらに隠れる。
どんな酷い生活をしていたのだろう。
絶対に助けてあげるからね。
「今いるのはこれで全員です。よろしくお願いします」
「分かったよ。記憶を覗かせてもらうね」
お母さん何度もごめんなさい。
約束を破ってばっかりだけど許してくれるよね?
真祖になった時に皆の顔が恐怖に包まれたよ。
ああ、確かに怖いよね。
すぐに終わらすから安心して。
ここには15人しかいない。
皆の頭に手を乗せて記憶を覗いて行く。
生きているのは10人。
少ない気がするよ…。
召喚魔法。
範囲高位回復魔法。
お母さんの血を再び使う。
約束を破る度にお母さんの血が無くなりそうで怖いよ。
でも、苦しんでいる人を助けたいんだ。
覚悟を決めよう。
今後、いつもの姿に戻れなくなっても私は人を助ける。
人を助けたい気持ちはお母さんが教えてくれたんだと思っている。
心臓が強く動き出してくれた。
真祖が人間の血が使える事を喜ぶのはおかしいかもしれない。
だけど、何度もお母さんが教えてくれた事だから。
お母さんの血がある限り絶対に守り続けるよ。
「生きている人はこれだけだったよ。もっと早く助けてあげれば良かった。ごめんね」
「いいえ。仲間が捕まる事がこれ以上なく安心して暮らせるなら少しずつでも増えていけます」
「そうです。10人も助けて頂いたのです。謝らないで下さい!」
「母さん気にし過ぎだよ。全てを救えないのは分かっているじゃない。ゆっくりやろうよ」
そうだよね。
ヴィーネの言う通り。
分かってはいるんだけどね。
絶滅寸前まで追い詰められた種族を見ちゃうとね…。
駄目だ!
ヴィーネの前で弱気は良くない。
助ける事ができたんだ。
自信を持とう。
「じゃあ、皆を安心な場所に案内するよ。もう、呼吸ができる程度の空気は溜まっているから安心してね。転移魔法」
いきなり海中でみんな混乱している。
水中では呼吸できないはず。
まずいね。
念力。
無理やり空気のある場所まで移動させたよ。
これで安心してくれたかな?
よし、解除。
「あの、ここは海中ですか?」
「そうだよ。ポセイドンのお城が下にあるでしょ。岩場が良かったかな?」
「そうだね。岩場の近くに住んでいたもんね。岩場に変えようか?」
「いえ、隠れるのに都合が良かっただけです。安心して暮らせるなら、砂浜の方がいいです。凄い環境ですね。こんな事ができるのですか…」
「空気が溜まったら、私たちの国を案内してあげるよ。その前にポセイドンを呼ぼう」
念話。
「おじさん。セイレーンを連れて来たんだ。皆を安心させてあげて欲しい。顔を見せてあげて」
「うむ。すぐに顔を出そう」
「もうすぐポセイドンが来るから、待っててね」
「待たせたかな。これは…。魚人に捕まったりはしておらんじゃろうな?」
「魚人に捕まって売られました。まさか、人間や獣人と手を組んでいるとは思わなかったのです」
魚人はセイレーンも売っているんだ。
同じ海で暮らす仲間なのに。
見つけたら必ず殲滅するよ!
ポセイドンが頭を下げている。
「すまんのう。儂が殺し損ねたばかりに…。次は必ず守る。安心してここで暮らすがいい」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
「「よろしくお願いします」」
「皆に聞きたいんだけど、ここから出て泳ぎたい?それともポセイドンの国だけで泳ぎたい?」
「今はポセイドンの国だけで十分です。怖くて外に出られません」
「じゃあ、出られるようになったら言ってね。いつでも出られるようにしてあげるからさ」
泳げるのに自由に泳げない。
境遇もハーピィに似ているんだ。
ゆっくりと心を癒して欲しいね。
空気が溜まるまでセイレーンはポセイドンと会話を楽しんでいたよ。
「ヴィーネ。空気の出口を作って来るよ」
「うん、お願い」
セイレーンの子供が触っちゃうかもしれないから覆っておこう。
時空魔法の魔石を置いて。
風の魔石を置いて。
2つの魔石を少し埋めて。
土魔法。
隙間から手が入らないね。
これなら誰も触れないから大丈夫。
風の出口は社の裏にしたから誰にも迷惑はかからない。
皆の所に戻ってセイレーンに話しかける。
「皆に名前はあるのかな?」
「はい。私は族長のユリウスです」
「そう。私はヴィーネ、母さんはシャーロットだよ。よろしくね」
「皆、付いて来て。私たちの国を紹介するよ。子供は勉強できるから魔法とか覚えるといいかもしれないよ」
「そうですね。よろしくお願いします」
泳いでお城の中の時空魔法を通る。
「お店の中を邪魔してごめんね。すぐに出るから」
「何かあったのですね。気にせずに通って下さい」
「今のはアムピトリーテー様ですよね。何をしていたのですか?」
「お店だよ。魚やサンゴをお金と交換して、お金で好きなものと交換しているんだよ」
「何か凄い国ですね。こんなに様々な種族がお店をしているなんて。私たちは売れるものが無いのですが…」
「歌が上手いんでしょ?お金もらって歌う?」
「それはいいかもね。場所もいらないし」
かなり悩んでいるね。
みんな気楽にしててほしいな。
「そんなに悩まなくても大丈夫。とりあえず国を紹介するね」
「はい。お願いします」
「「お願いします」」
中央区を紹介して学校を特に説明してあげたよ。
「どう?子供をここで勉強させてみない?帰る時はさっきの場所を通ればいいだけだよ」
「はい。よろしくお願いします。とても重要な事を教えてもらっていると思います」
「そうだよ。母さんが一生懸命考えて考案した全てが詰まっているからね」
「いい事を思いついたよ。子供たちに歌を教えてくれない?それなら安心じゃないかな?」
「はい。子供たちの前でしたら大丈夫だと思います」
「母さん。学校の教師にしちゃうの?やっぱり、私の想像できない事を考えちゃうね…」
念話。
「マリアンネ。学校まで来て欲しいけど今は大丈夫かな?」
「はい。すぐに向かいます」
本当にすぐに来たよ。
街長の時より元気いっぱいだよ。
「こちらはセイレーンのユリウス。子供たちに歌を教えてもらおうと思ってね。初等科の歌の教師をお願いしようと思っているんだ。教師の事を説明してあげて」
「歌ですか。それはいいですね。では、ユリウスさん。付いて来て下さい」
「はい。分かりました」
マリアンネにユリウスを任せて妖精のお店に行った。
「今、土地神りんごは何個売ってるかな?」
「何個でも用意できますよ」
妖精に1万ギルを手渡した。
「じゃあ、25個下さい。お釣りはいらないよ」
「はい!すぐに用意します。皆、仕事です!」
「「はい!」」
妖精の動きが早い。
身体強化で凄い事になってるよ。
セイレーンも驚いているよ。
「お待たせしました。25個です」
「セイレーンの皆、1個ずつ食べていいよ。とても美味しいよ」
「「はい。いただきます」」
また、セイレーンが驚いているね。
喜んでいる顔だから美味しさに驚いたかな。
「これを買い物って言うんだ。お金と食べ物を交換したんだよ。お金稼ぎたくなったでしょ?」
「「はい!」」
「皆、勢いありすぎだよ。土地神りんごを封印したくなっちゃうよ」
ヴィーネの気持ちが分かるよ。
何か怖いよね。
ユリウスも戻って来たね。
「教師の話は聞けたかな?これからはお金を稼げると思うから好きなもの買ってよ。とりあえず土地神りんごを1個食べてみて」
「では、いただきます」
「こ、これは!いくらでしょうか?」
「200ギルだよ」
絶対に何個買えるか考えているよ。
中毒になっているみたいで怖いよ。
「母さんの責任だね。りんごへの思いが強過ぎたんだよ。皆、引きずられているね」
「ごめんなさい。私も怖くなって来たよ。でも、名産品だから。今から禁止にしたら暴動が起きるよ」
「絶対に起きるよ。もう、とんでもない果物だよ。魔性の果物だね。まあ、体に害は全く無いけどさ」
「そうだよね。魔性の果物だよね。私は魔人だから諦めて」
「それは違うと思うけど諦めたよ。でも、街が賑わうのはいい事だよ」
「流石私の娘、ヴィーネちゃん。そうだよね。そうだと思ったよ」
「他の子たちもお金を稼ぎたいみたいだね」
「お祭りの時に歌ってもらってお金を払うのはいいけど、それ以外が難しいね。ドリュアスのお店のお手伝いを日替わりでするのはどう?ハイエルフも妖精もお店があるんだから、別にセイレーンがお手伝いしてもいいよね?」
「そうだね、ちょっと聞いてみようか。今は授業中だし絶対に鬼ごっこもするよね。念話、ドリュアス。お店のお手伝いだけど、セイレーンでもいいよね?」
「いいよー。薬の作り方だけ覚えてくれれば誰でも大丈夫だよ」
「ドリュアスがいいって言ってくれたから、セイレーンの皆は世界樹の精霊であるドリュアスのお店のお手伝いをしてもらいます。今日の夕暮れまで待つ?明日からでも大丈夫だよ?」
「「今日覚えます!」」
凄い勢いだね。
そこまで土地神りんご食べたいのかな?
土地神りんごジュースを飲んだらどうなるんだろう。
「母さん封印だよ。心を封印したよ。気にしない事にした」
「私も封印したよ。そうだよね、気にしなければいいんだよ」
「夕暮れになるまで時間あるし、その格好で陸地のお店はおかしいから、まずは皆さっきの所に戻って水で海水を落としに行こう」
「「分かりました」」
「これを上げると水が出るからね」
「はい。…。凄い、何ですかこれは…。水が上から出てきます」
「本当に凄い国ですね…」
「この国で楽しんでよ。皆の事は必ず守るし子供も必ず守るからさ」
「母さんと私がいれば絶対に大丈夫だから安心してね。世界最強の親子だから」
「はい、そうだと思います。海中に砂浜を作れる方は、そのくらい強くないと無理ですよね」
納得してくれたけど…。
まあ、海中に砂浜を作れるのは確かに滅茶苦茶だと思う。
私たちが最強だからできるって事だね。
私も納得できたよ。
「水で海水を落としたら、そこにある布で体を拭いてね」
「「はい。分かりました」」
みんな終わるまで30分くらいかかったかな。
もうそろそろ、鬼ごっこが始まるね。
「じゃあ、服屋に行こう。付いて来て」
「「分かりました」」
お店が近くにあるから移動は楽だね。
「皆、好きな服を上下選んでね。あと靴もだよ。おばちゃん教えてあげて」
「はい。また珍しいお客様ですね」
「セイレーンって言うんだよ。人魚に近い種族だよ」
ヴィーネの説明は分かりやすいね。
流石私の娘だよ。
最近服の種類も豊富になっているから、みんな真剣に選んでいるね。
街が賑わっている証拠だよ。
様々な種族に合わせた服があるからね。
妖精用の服や靴まであるのは世界でここだけだよ。
1時間は待ったかな。
「おばちゃん。いくらかな?」
「そうですね。20万ギルです」
私は25万ギルを手渡す。
おばちゃんは、いつも安く値段を言うから。
「たくさんの種族の服を用意するの大変でしょ?受け取ってね」
「分かりました。いつもありがとうございます」
私がお金をたくさん持ってても意味がないから。
使える時はどんどん使うよ。
何故か減らないけど。
賽銭箱に皆がお金を入れ過ぎなんだよ。
でも、皆の気持ちだから撤去する訳にもいかないし。
こうやって、お金を出せる時には多めに出す事にしたんだ。
「皆これから先はこの格好で、お店に行ったり学校に行ったりしてね。お金が溜まったら別の服だって買えるから。それと、海に戻る時はさっきの場所に置いて行ってね」
「「分かりました。ありがとうございます」」
さっきから皆の返事が息ぴったりだね。
皆の意識は繋がっているのかな?
妖精とは違う感じだから…。
土地神りんごで繋がっているね。
人魚100人の服や靴を置く為の場所があるんだから25人追加しても大丈夫だね。
ほんと完璧なお店作りだよね。
流石ヴィーネだよ。
夕暮れになって鬼ごっこが終わったみたいだね。
「じゃあ、ドリュアスのお店に行こう」
「「はい。お願いします」」
世界樹の中にいるね。
「ドリュアス。この子たちがこれからお手伝いしてくれる事になったから、薬の作り方を教えてあげて欲しい。それと給料も払ってあげてね」
世界樹の中からドリュアスが出て来ても驚かないね。
やっぱり、頭の中は土地神りんごかな?
「いいよー。ハイエルフはガチガチに緊張するから困ってたんだ。じゃあ、説明するから皆集まって」
「「はい!」」
それから30分ほど薬の作り方を教えたり長老に事情を説明したりしたよ。
お手伝いを断られた長老は泣いていたね。
予想通りだね。
「じゃあ、ちゃんと帰れるか一緒に行こう」
「「お願いします」」
そうそう。
ここで、服と靴を脱ぐのを忘れていないね。
お店から海水に飛び込むのは変な気分だよ。
アムピトリーテーがいないって事は売り切れたんだね。
やっぱり繁盛しているね。
お店から海底のお城に戻って砂浜まで泳ぐ。
ポセイドンはいないみたいだね。
きっと、売り切れたから魚を獲りに行かされているね。
アムピトリーテーが笑顔で手を振ってるから手を振り返しておいたよ。
お母さんみたいで怒らせたら怖そうだからさ。
セイレーンは海底でも驚いたり慌てたりしていないね。
泳ぐのが得意だから、このくらいの距離なら問題ないみたい。
砂浜に戻って、陸地と空気があるのを確認する。
完璧だよ。
「苦しかったりしない?問題があれば今すぐに教えて」
「はい。大丈夫です。全く問題ありません。ありがとうございます」
「「ありがとうございます」」
「皆は家とかはいらないのかな?」
ヴィーネの優しい気遣いは素晴らしいね。
砂浜に住んでいる訳じゃないかもしれないからね。
今日はたくたん褒めてあげよう。
「私たちは皆で一緒に住みます。少し大きめの洞窟みたいな場所があると安心できます」
「ヴィーネ先生やってしまいなさい!」
「もう、恥ずかしいよ。土魔法、これなら歩いて入れるし大丈夫かな?」
「はい。ありがとうございます。安心して暮らしていけます」
「「ありがとうございます」」
「じゃあ、私たちは帰るから困った事があったら、国の社に住んでいるから呼んでね。またねー。転移魔法」
「やっぱり、直接お風呂は慣れないね」
「そうだよね。冷たい海水から、いきなり温水に変わるからね」
「もう、海上付近に住んでいる種族はいないかな?」
「大丈夫だと思う。私の知識ではいないよ。魚人が海底から地上に上がっているのも知らなかったからね。何を考えているんだろう」
「そうだよね。そもそも魚人がおかしいよね。こちらから接触するつもりはないけど、出会ったら殲滅するよ。いい魚人は存在しない」
「それでいいと思う。ちょっと海底の種族としておかしい。仲間の振りして捕まえて人間や獣人に売りつけている。海底に住んでいては、そんな知識は身に付かない。確実に地上で誰かと手を組んでいるよ」
「間違いないね。相手が何者だろうが確実に殺すよ。絶滅寸前まで追い詰めたのは流石に許せない」
「うん。古代種ドラゴンとしても無視できない存在だよ。会ったら殲滅だよ」
お風呂から出て布団を敷いて一緒に入る。
いっぱい頭をなでてあげた。
凄い大変な仕事ばっかりだったからね
それに、優しい気遣いもしていたから。
ヴィーネは今日も疲れていたみたい。
すぐに抱き着いてきたよ。
覚悟したからね、お母さん。
あの言葉は使わないけど人助けの為なら真祖の力は使うよ。
(どんどん使いなさい。その為の力でしょ)
(そうだよね、お母さん。どんどん使うね)
夢の中でお母さんに返事をしたら懐かしい笑い声が聞こえた気がしたんだ。
セイレーンはこれで大丈夫です。




