寄って来た者達
孤児院の子供も卒業した後、立派に働き始めているよ。
仕事で身体強化を使うのは許しているんだ。
効率が上がるし、今後は当たり前になるからね。
さて、どこかの馬鹿にハーピィが見つかってしまったようだよ。
彼女たちには空を自由に飛び回る権利があると思うんだ。
制限したいとは全く思わないよ。
隠れる必要なんてないね!
ただ、彼女たちも痛い思いをしている。
高台以外には着地しない。
当然ハーピィを狙う人はシェリル国を目指す事になる訳だね。
そうなるように仕向けたから全然いいんだけどさ。
これは、国なのか個人なのか…。
この世界に何ヶ国あるかなんて興味がないんだ。
邪魔なら滅ぼせばいいから。
今まで真面目な取引を持ち掛けてきた国は無いからね。
それが現実だから悲しいよ。
「ヴィーネ。行こうか」
「そうだね。流石に邪魔だね。矢を射られたら面倒な事になるよ。じゃあ、行くよー。転移魔法」
私たちが目の前に来て驚いているね。
20人くらいの男女がいる。
やはり、手には弓矢を持っているよ。
「君たちの狙いは分かっているんだ。何故そんな事をするのかな?同じ言葉を話す人だよ?」
「本当にそうだよね。飛べるか飛べないかだけの違いしかない。人間の魔法使いだって、訓練すれば飛べるのにね。おかしな話だよ」
この組織のリーダーかな?
何か話すみたい。
「俺たちは狩人だ。獲物を狩るのが仕事さ。今回の獲物がハーピィだっただけだ。邪魔するなら痛い目に遭うぜ」
「そっか、じゃあ死んでね」
「やる…」
念力。
「記憶を覗かせてもらうね。…、ふーん。海を渡って来たんだ。噂が広がっているんだね。依頼主は国の王様か。なるほどね。捕まえていたハーピィが逃げたから、新しいのを捕獲して来いって事か。君たちの組織100人くらいいるんだね。ヴィーネ皆殺し決定だね」
ヴィーネも違う人の記憶を覗いている。
「邪魔だもんね。噂を流したのはシェリル国に関係ない人みたいだよ。噂を流した人と、狩人の組織と王族を皆殺しにするよ。闇魔法。せっかくだし、国を見に行ってみようよ」
「そうだね。じゃあ行くよー。転移魔法」
立派なお城だ。
高い城壁も建築中だね。
どこの国の奴隷も似たような服を着ているからすぐに分かるよ。
本当に嫌な気持になる。
「今は孤児院に少し余裕があるから、悲しんでいる人と、諦めている人を集めるよ。召喚魔法」
人間に獣人は奴隷なんだと思う。
1人分からない男の子がいる。
男の子の見た目はハーピィみたいだけど、少し違う。
「君は何者かな?初めて見るんだ。私はシャーロット、隣は娘のヴィーネだよ」
「ぼ、僕はセイレーンと人間の間に産まれた子供です」
「セイレーンは歌が上手い海辺に住む種族だよ。とても温厚だけど人間と子供を作るとは思えないね。無理矢理だと思う。君のお母さんはどうしたのかな?」
「僕を産んだ後に死んじゃったんだ。セイレーンは女性だけの種族で普通は女の子しか産まれないって…。男が産まれたから僕は奴隷にされちゃったんだ」
無理やり子供を産ませ、女の子じゃなかったら奴隷か…。
ほんと殺して良かったよ。
「分かったよ。君は助けてあげるね。他にも、ここに親がいない子はいるかな?手を挙げて欲しいな」
人間の子供は2人。
獣人の子供は10人。
「じゃあ、手を挙げた子は助けてあげるね。ヴィーネ、まずは獣人の里に行こう」
「分かったよ。ほんと、母さんらしいよ。次はセイレーンを助けに行くんだよね。転移魔法」
ヴィーネには考えている事がすぐにバレちゃう。
仕方がないよね。
私の娘だから!
「やあ、久しぶりだね。里長の元に向かってもいいかな?」
獣人の里の門番に挨拶する。
もう3度目だからね。
「はい。どうぞ、ご案内します」
凄い丁寧に対応されちゃったよ。
どうしたのかな?
「里長、久しぶりだね。隣は娘のヴィーネだよ。初めましてだね。ところで、この子たちを助けたけど、海を渡った国にいたんだ。育ててくれる?それとも私たちの国で育てようか?」
「獣人は預かりましょう。里の連携もかなり充実してきていますから誰の子か分かる可能性が高いですので」
「それは良かったよ。母さん里長に任せよう。じゃあ、よろしくお願いしますね」
里長の対応も丁寧になっている気がするよ。
何かあったのだろうか?
「ありがとう。じゃあ、よろしくね。またねー。転移魔法」
シェリル国の孤児院に移動したよ。
「カーリン。この子たちをよろしくね。海を渡った国にいたんだ。優しくしてあげて。あと、皆を先にお風呂に入れてあげて。気になる事があるから」
「分かりました。皆良かったね。これからは、楽しく過ごせるから。大丈夫だよ」
「「はい…」」
私とヴィーネは、カーリンが子供たちをお風呂に入れる所を見ていた。
さっきのセイレーンとのハーフの子、人魚に似ていた気がするんだよね。
翼の生えた人魚って言えばいいのかな?
「あれ…。僕、足が魚になっちゃった」
やっぱり。
近い種族なのかな?
「そっか。じゃあ、水中で呼吸は出来るかな?」
「試してみます。…ぶはぁ。無理です」
「そうなんだね。所で君に名前はあるの?」
「いえ、すぐに奴隷にされましたので名前は無いです」
本当にふざけているよ。
「カーリン。今までに名前が無い子って私が連れて来た事あるかな?」
「いいえ。皆、名前はありました。ハイディはシャーロット様に名付けてもらったと喜んでいましたよ」
「そっか。じゃあ、君の名前はセイリムね。これから皆で仲良く暮らしてよ。ここは安心だし天使のカーリンがいるから大丈夫だよ」
「はい。ありがとうございます。お願いします」
「天使はシャーロット様ですよ。皆、これから仲良く暮らしましょう。友達もたくさん出来ますよ」
「じゃあ、カーリン。あとはよろしくね」
「はい。お任せ下さい」
「ヴィーネ。一度、社に帰って作戦会議ね」
「そうだね。ちょっと難しいからね。またね。転移魔法」
社に移動して、ヴィーネに確認する。
「セイレーンは水中で呼吸出来たり空を飛べたりはしないの?」
「あくまで泳ぐのが得意な種族なんだ。翼じゃなくて魚のヒレに近いんだ。基本的には海に近い場所に生息して歌が上手いんだ。生息地は分かるんだけど助けるのが難しいね。海中に結界を張る訳にはいかないし、地上に結界を張ると他の生物に影響が大きい。どうする?」
本当に難しい。
海上が生活拠点だから海は必要。
でも、海中で生活は出来ないから地上も必要。
海中に結界で逃げる場所を作ってもいいけど、魚人に待ち伏せされるかもしれない。
「ヴィーネ。今日は寝よう。頭をスッキリさせたい」
「うん。母さんが寝るなら私も寝るよ」
布団を敷いて一緒に入る。
「じゃあ、おやすみー」
「おやすみー」
待っててね、絶対に助けてみせるから。
天使カーリンの勢力が凄い事になっています。




