初日の終わり
「うーん…。とにかく魔力に取り憑かれると自我を失い悪魔になっていくってことか?」
「そうだ」
《ってことは、アタシも悪魔になっちまうのか?》
「普通ならそうだと思うが、そこまで自我があるのはおかしい…と思う。もう悪魔が目覚めている……のかもしれない」
「いや、それはない」
《ほぉ、断言するか》
「なんかわからんが、俺はそう思う」
《なんだそれ》
「しかしあれだな、きせいちゅう?と言うのか。そんな虫の話は初めて聞いた。たぶんこの世界に神はそんな生物を創造してないだろうし、産まれてもいないと思う」
「なるほど、俺に取り憑こうとしたけどアニーもいて魔力が宿る先を俺かこいつか見失ったってわけか」
《アタシだけなら身体が小さいからすぐ乗っ取れたんだろうが、欲をだして中途半端になったってことか?》
「そんなとこじゃないか?俺も精霊の祝福とやらは受けてないし。まぁ考えてもわからんことは都合の言いように解釈しとこう」
《気楽だな》
「まったくだ」
「ははは…。ところで、カゼツキ。あんたが説明してくれた事にひとつだけ引っかかることがある」
「なんだ」
「神は姿を消したって言ってたが、俺は神に直接あっている」
「何を言っておる?」
「俺を…。俺たちをこの世界に転移させたのは時空の女神を名乗るケレスという少女だからだ」
「ケレス…。ふむ実に面白い話だな。」
「本当に神だと思うか?」
「時空の女神も、ケレスと言う少女も聞いたことは無い。だが、気になることはある」
「気になる事?」
「まず、この世界の名前は“ケレスティア“と言う。そしてその名前がつけられたのは、第1の勇者が戦争を終わらせた時だ」
「ケレスティアか。確かにケレスの名前がはいっているな」
「そしてこれは拙者のじぃが言っておった事なんだが、どこからともなく現れた勇者。つまり戦争を集結させた第1の勇者と悪魔を倒した第2の勇者を別の世界から連れてきた神が居たらしい」
「おいおいそれって…」
「うむ。神の名前を聞いた事は無いが、時の女神とかなんとか言っていた気がするな」
《あはは、つまりアタシたちは勇者ってわけか!》
「おいおいおいおい!そんなわけないだろ!俺は今ただのニートだぞ」
《いいじゃねえか!どうせ魔王ってのを倒さねえといけないパターンのやつだろこれ!あはははは》
「うっ。まぁ確かに大概のやつはそういう展開だがなぁ…」
「パターン?展開?お主らの言葉はたまに意味がわからんな」
「気にしないでくれ、こっちの話ってやつだ」
「うむ。そうか」
「しかしアニー。また俺の記憶で読書か?今度は何を読んだんだ」
《お前が学校サボり出した頃によく観てたアニメとかの知識だな》
「おいおい、んなもん観てんじゃねえよ!」
《いいじゃねーか。なかなか面白かった》
「ちっ」
「まぁ、いいじゃないか。そう言えば図書館を探していると言ったな」
「ああ、アニーが情報収集にいいだろうって。どこか心当たりはあるか?」
「そうだなぁまず拙者らは今、南の大陸におるのだがこの大陸で1番の王国に行けば王立の図書館があったはずだ」
「1番の王国?」
「ああ、“巨人の国キュクレア“だ」
「巨人!?」
《ほぉ、おっきい人間か!!新しい宿主探しも出来そうだな!!》
「え!お前別のヤツに寄生する気なのかよ!!」
《当たり前だろ?アタシはあくまでも繁殖先を探して寄生してるんだ。おっきい生物を最終目標にするのが当然よ》
「繁殖ったって、この世界には寄生虫いないらしけど…」
《そんなもんわかんねぇだろ!!それに神がいるならアタシ好みのダーリンを造ってくれるかもしれないし!!》
「ええ…」
「まぁ、拙者もキュクレアには用がある。一緒に向かおう」
「おお!助かるぜ!!」
「明日にはつけると思う。今日は備えて寝るとしよう」
「そうだな」
《アタシはまだ眠くないから見張っといてやるよ》
ニュルリ
雅良の腕から触手が出てきて目がついた
「うへぁ、きめえ」
《ふんっ》
「ではまた明日だ。おやすみ」
「ああ、おやすみカゼツキ」
「…」
《…》
《アタシにも言えよな!》
「お、おう。おやすみアニー」
《それでいい!2人ともおやすみだ!》
こうして、異世界転移初日は終わっていく。