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言い伝えと歩む。

障害について書いてます。批判の意図はございません。

ヘルツとスピネルが仲良くなり、遊んだり、街に出たりと穏やかに暮らし、4年の年が過ぎた。

夏のある日、ベリルはひらけた丘にスピネルを連れて登り

街を守っていると言い伝えのある、3つの山の名前を教えた。

スピネルは推定ですが、8歳になっていた。


「あの高い山がパパラチア山、その隣の、低くて横に広い山がアレキサンドライト山

少し小さい山がボルツダイヤ山。

3つの山には、それぞれ守り人が2人ずついて、山の動物や精霊を守っているのよ

その精霊がこの街を守ってくれているの」


「守り人は、どんな人なの?」


「パパラチア山の守り人は、1人は厳格な性格で、山に住んでいる精霊や動物を守ることを

何よりも重んじているわ。もう1人は好奇心旺盛で、人好きで、たまに人里に降りてきているって

噂があるわね」


ベリルは、言い伝えの、ひとつひとつを思い出しながら、スピネルに語ってゆく。

パパラチア山の守り人は、精霊たちを守ることを重んじている。

けれど、もう1人は、好奇心旺盛で、人が好き。

1度だけ会ったことがあり、本人も人が好きだと語っていた。


「へぇ、会ってみたい!」


無邪気に会いたいと笑うスピネルに、いつか会ってほしい。と無意識に思った。

アレキサンドライト山の守り人の話も、語ろうと思ったものの、あまりにも悲しすぎて

ベリルは口を閉ざす。


「アレキサンドライト山の守り人は、今は違う人よ。

ボルツダイヤ山の守り人は

聞き上手で、動物の悩みを聞いてあげている、やさしい人よ。

もう1人は、寂しがり屋で、人見知りなのよ」


涙が宝石になる。という言葉は、呑み込みこんだ。

うっかり言って、欲が深い人間がボルツダイヤ山に行ったら

大変なことになる。

スピネルを信じていない訳ではなかったものの、もう少し大人になるまでは

語らないことにした。


「おかあさんは会ったことあるの? 守り人に」


「会ったことはないけれど、見たことはあるわ」


街を、人と同じように、仲良さげに2人の守り人が街をこっそり

遊びに来ている姿を見たことを、思い浮かべる。

せっかく買った水菓子を、橋の下を流れる川に落としてしまい、残念そうに眺めていた彼らに

甘いお菓子を買って渡し、何度もお礼を言いながら

食べて喜ぶ2人の姿は、ほかの人たちと変わりはなかった。


「なんでわかったの?」


「おかあさんが、言い伝えの絵で見た姿と、おんなじだったの。

街が気になって、降りてきたんですって」


永いときを生きているけど、少し子供っぽい姿。

彼らの無邪気な笑顔は、今でも変わらないのかと少し考えることがある。


「どんな姿だった?」


「優しそうなおにいさんだったわ」


「おとうさんみたいな?」


「あそこまで気難しそうじゃないわ」


くすくすくす……

2人の笑い声を、夕陽が優しく包んだ。

そんな穏やかな毎日を織り重ねて、編み上げていく。

また数年が過ぎたある日の事だった。


「おとうさん、これは、文字なの? 絵なの?」


「スピネル? どうしたんだ?」


窓際で小さな木彫りの人形を作っていたベニトは、ひょい、と顔を上げた。

木漏れ日を受けて、青色の瞳がちらちらと光っている。


「何度も読もうとしたんだけど、絵になってるみたいで、どれが字なのかわからなくて読めないの」


困り顔でスピネルは絵本をベニトに差し出す。

それは、彼女がヘルツと街に行ったときに、新しく買った絵本だった。

汚れでもあるのかと考えたベニトは中身を確認しようと思い表紙を開く。


「貸してみなさい」


ベニトはスピネルから、絵本を受け取り、パラパラとめくる。

文字は黒いインクで書かれていて、にじんでいる様子もなくおかしな点は見当たらなかった。

汚れも見当たらず、絵もシンプルながら、美しい風合いで、1枚の絵画のようだ。

嘘をついている様子もなく、ベニトは考える。

ふと、今まで読んできた本の1文が、頭の中にちらついた。


『何千、何万のうちの、1人の割合で、文字が読めない人がいる』


その、たった数行の文が、ベニトの頭の中に焼き付いたかのように、閃いた。

スピネルはもう、推定ですが8歳になっていた。

いくら、孤児だったからと言って、文字が読めないなんて、あるのか?

もしかしたら、彼女は、その『何千、何万のうちの1人』なのではないか?

そう、答えの出そうで出ない考えを巡らせる。


「やっぱり、それは、文字だったんだね。わたしには、黒色の模様に見えるの」


狼狽えぶりを見たスピネルは、なんてことないような顔で言った。

8歳なのに、どこか達観した物言いに、ベニトはぐっと、喉が詰まる思いだった。


「わたし、今まで絵本は読んでもらってたから、自分で読もうと思ったの」


そうしてみたら、全く読めなかった。そう語る。

そういえば、彼女は自分で絵本を読む事せず、いつも誰かに読んで、と言っていた。


「そうか……よく言ってくれたね。安心しなさい。これからも、読んであげよう」


そんな彼女を、父親代わりのベニト、母親代わりのベリルが支えた。


「読めなくたって、いいわ。お母さんが読んであげる」


文字の読み書きができない代わりに、彼女は、人懐こい、やさしい性格になった。

そして、絵本嫌いにはならず、いつも絵本読んで、と言っては絵本をベニトや

ベリルに読んでもらったり、ヘルツに読んでもらったりもして、楽しい日々を過ごしていた。


「スピネル、新しい服ができたから、着てみてくれる?」


今まで道案内した猟師や、道に迷った人からのお礼でもらっていた美しい布を

服に仕立てたベリルはスピネルに、新しい服を仕立てた。

白色の、絹のワンピースだ。

シンプルな虹色の刺繍が、可愛らしく胸元を飾った

その日から、夏になると、スピネルはそのワンピースを着ては、遊びまわっていた。

中二病失礼しました。障害について書きました。

差別、批判する気はございませんので、ご理解をいただきたいです

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