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友達と

進展なんかしてません。

次の日、伝書鳩に、ヘルツとスピネルを会わせたいという旨の手紙を持たせ

ソルフェの家に飛ばすと、その日のうちに返事がきた。

今日から数えて3日後、ぜひ遊びに来てほしい。という返事が来て

きっかり3日後、ベニトがスピネルを連れて、ソルフェの家に向かう。

今日は、スピネルの洋服を作るということで、ベリルは家でお留守番をしている。


「こんにちは! お邪魔します」


ベニトに手をひかれ、スピネルはヘルツのいる家に向かった。

戸をトントンと叩き、ベニトが声を上げた。

やがて、家の中から女の人の返事する声が聞こえてきて、戸を開けてくれる。


「いらっしゃい! ベニトさん。スピネルちゃんも、よく来てくれたわ」


チャクラが、ヘルツを抱っこして、太陽のような笑顔で挨拶をした。

ヘルツは、スピネルを見ると、ふいっと顔をそむけてしまい、チャクラは苦笑いをする。


「ごめんなさいね。この子、人見知りするのよ。

髪色とか顔はソルフェ似なのに、この性格はどこから来たことやら」


仕方ないねというように笑うと、家の中に入るように促した。


「入って入って! お茶とお菓子用意するよ」


2人を招き入れ、ヘルツを床に下ろすと、チャクラは台所に向かっていく。

チャクラの後にヘルツも続こうとしましたが、スピネルがそれを

腕を引いて阻止する。


「ねぇねぇ! 名前、なんていうの?」


突然腕を引かれたヘルツは驚きました。

彼の目はプラチナ色で、その目をまん丸にしている。


「わたし、スピネルっていうの」


ヘルツは、自分をまっすぐに見てくるスピネルの目から逃れるように俯き

そして、小さな声で答える。


「……ヘルツ」


「ヘルツっていうの? ねえねえ、ヘルツ。ヘルツは、何がすき?

わたしは、えほんが好き! おかあさんが、ねる前にえほんを読んでくれるの」


スピネルの勢いに圧倒されながら、目を白黒させて何とか相槌を打つように

絵本? とオウム返しをする。


「えほんが好きなの?」


「うん」


目を輝かせてヘルツを見るスピネルに、ヘルツは少し考えた。

正直、どうやって接していいかわからないので、困ってしまう。

けれど、絵本なら、自分の部屋に沢山あったことを思い出す。


「部屋にきて。えほんいっぱいあるんだ」


何とか言葉をつなぎ、スピネルを自分の部屋に誘うことにした。

スピネルはその言葉に目を輝かせて、ニコニコとヘルツの後をついていった。


「スピネルちゃんは、積極的だねぇ。あれなら、ヘルツも打ち解けるだろうね」


チャクラが、お茶とお菓子を用意しながら、感心したようにベニトに告げて

机に就くように促した。


「ヘルツ君に迷惑をかけないかが、心配ですが」


ベニトは、苦笑いしながら、チャクラに返して、ゆっくりと言葉を継いだ。

チャクラは、そんなことないわよ。と笑って、カップにお茶を注いだ。

ありがとう、とお礼を言い、ベニトはお茶をゆっくりと飲みながら、スピネルはどんな話を

しているのだろう? と考えた。

そのころヘルツは、自分の部屋で、絵本をスピネルに見せて、ページをゆっくりと

めくり、中の絵を見せていた。


「これは、大司教をまもる、りゅうきしのえほん」


「きれいなえだね。どんなおはなし?」


「女性のりゅうきしが、大司教に恋するはなし」


「そのおはなし、よんで!」


スピネルにせがまれて、ヘルツは絵本を静かに、けれど少しつっかえながら

静かな声で読み始める。

風に木がさざめく様な、そんな心地よい声だった。


『ある国に、やさしい大司教が、いました。

大司教は、こまっている人がいたら、手をさしのべて、そっと救いあげる

まちの人たちから慕われている大司教でした』


ヘルツが読むページの絵には、金色の髪に、透き通る青色の瞳の大司教の絵が描かれていた。

その隣には、黒髪が美しい騎士が立っている。

ヘルツの、絵本を読む声だけが部屋に溶けてゆく。


『りゅうきしは、いつも大司教をまもっていました。

大司教のことが、りゅうきしはだいすきでした』


彼が何とか、つっかえそうになりながら、読んでいく物語は

平坦で幸せな物語ではなかった。

大司教に助けてもらった竜騎士は、恋をしてしまうのだ。

しかし、大司教は神に身をささげてしまったので、結婚をすることができない。

それを知っていた竜騎士は、恋を奥底に閉じ込めて、彼の側にずっといるという

物語だった。


「じゃあ、ずっとすきって言えなかったの? かわいそう」


読み終えたスピネルは、竜騎士がかわいそうだと泣き出してしまった。

ヘルツは慌てて、スピネルを慰めようとするものの、どう慰めていいかわからず

オロオロしてしまう。


「な、なかないでくれっ」


慣れない手つきで、スピネルの頭を撫でて、泣き止ませようとするが

彼女は泣き止まない。

何とか明るい話の絵本を探し出し、それを一緒に読もうと言ったら

ようやくスピネルは泣き止んだ。


「えへへ……ありがとう!!」


そんな賑やかで、穏やかな月日が重なっていく。

かきためてた物いっぺんに投稿なう。

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