森の奥で
久しぶりに書き綴った物語です。書きたいことをかき散らすだけ。
守り人が住んでいると言われる高い山に囲まれた、とある街にある、小さくて壮大な物語。
その山の側にある森の中にある、小さな家に住んでいる、小さな女の子のお話。
竜に乗った騎士が空を舞う、どこかの国のお話。
深い森の中に、小さな家があった。
ドアが1つと、ダイニングと、寝室が1つ。
台所と、木で作られた机と、木でできた椅子が2つ。
食器棚と、薬を入れた瓶を置いておく小さな棚が1つずつ。
そんな、簡素な家に、兄妹が2人ぼっちで暮らしていた。
その兄妹は年を取らず。死ぬこともない。ずっと昔から生きていた。
兄の名前はベニト。妹の名前はベリルという。
彼らの住む家の庭には、小さめな畑があり、野菜が育っていた。
隣には、ベリルの育てている花が、たくさん咲いている。
2人は、ずっと昔から、1つの夢を見ていた。
それは、小さくやわらかで、温かい命を、腕に抱くこと。
「たった1度で構わない。小さな命をこの腕に抱きしめたい」
ベリルが、古い絵本を腕に、震える声で言ったことを、ベニトは忘れることができなかった。
彼も、同じ気持ちでした。自分たちに子供がいたら、どのような生活だったのだろう?
と、ずっと考えていたけれど、答えが見つかることは、とうとうなかった。
淡くて冷たい色の毎日を、繰り返すだけだった。
彼らの日常は、いたって簡素だ。
狩りをしていたら、夢中になって何も考えずに動物を追い続けて、道に迷ってしまった
おっちょこちょいな猟師に、安全に外に出られる出口を教えて、育てた野菜や果物を渡して
何度もお礼を言われたり、たまに、道案内をした猟師の子供や、家族が、お礼にとたくさんの食材や
きれいな布を持ってきて、丁寧にありがとうございますと言いに来るので
お礼の品を、おっかなびっくりに受け取る。
あとは、花や野菜を育てたり、森の見取り図を描いて、いつでも迷い込んできた人たちが
家に帰ることができるように。と、備えていた。
そんな日常の中でベニトは、木で小さな器や棚を作り、街に売りに行く。
ベリルは育てた花をたくさん持ち、売り歩く花売りをしていた。
朝の市場は、食堂で煮炊きする音や、人々が練り歩く音。
品物を売る売り子の声でにぎわっている。
「俺は、この辺で器を売るから、花を売り終えたらあの時計台の下で集合ね」
ベニトは、自分が売る場所を見つけると、真っ白な時計台を指さして、ベリルにそう告げた。
ベリルは、自分で編み上げたレースで顔を隠しながら、黙ってうなずく。
「わかった。行ってくるわね」
レースで顔をを隠すと、ベニトに背を向けて、人をよけながら足を進めていく。
彼女の育てた花は、色が鮮やかで、部屋に飾るだけでも、その場に日が差したように
明るくなるような色味を持っていた。
その鮮やかな花を、手編みの、少し不格好なかごに入れて、レンガ造りの道を歩いていく。
彼女が育てた花は、女性や子供の目を惹きつける。
かごに入れられた、沢山の花は、花嫁が持っていそうな美しさで、誰もが欲しくなる。
その花を見た小さな女の子が、そばにいたお母さんに何か話すと、優しく微笑んで
お母さんが、女の子の小さくやわらかな手のひらに、銅貨をのせていた。
女の子は、笑顔を浮かべると、ベリルの近くまでかけてくる。
「おねえちゃん、おはなを、1つくださいな」
茶色い瞳の女の子は、銅貨を差し出して、ベリルに頼んだ。
ベリルは、しゃがんで女の子に目線を合わせると、かごを女の子の目の前に差し出して微笑む。
「どうぞ。好きな色を選んでね」
女の子はいよいよ目を輝かせて、食い入るようにかごの中の花を選んでいく。
夕焼け色、レモン色、さくら色、雪の色……
どの色もきれいなので、悩んでいるようだった。
その様子を、ベリルは穏やかに見つめる。
「これにする」
長い間悩んで、女の子は、さくら色の花を手に取ってベリルに告げた。
「ありがとう。銅貨1枚です」
女の子は得意げに、お母さんから受け取った銅貨をベリルに渡して、ぺこっと
頭を下げて、お礼を言った。
「ありがとう! おねえちゃん」
うふふと笑い、女の子はさくら色の花を手に、お母さんのもとにかけて行った。
お母さんは女の子を抱き上げて、ベリルに一礼すると、くるりと背中を向けて去っていった。
ベリルは、きゅっと唇を結ぶと、女の子たちとは反対方向に歩いていく。
大通りでは、ベニトが商品を載せていた布を畳んでいるところで、家具などは全部売れたようだった。
「帰ろう」
ベリルの、少し沈んだ表情を見て、ベニトはやさしく声を掛ける。
「うん」
そう返事して、2人は、大通りをゆっくりと歩いて、帰って行く。
買い物を楽しむ人たちの声が、まるで、何かを見送る歌のように聞こえてきた
練りすぎて発酵した詰込み作です。頑張って続けますのでよろしくお願いいたします




