生きづらい私の作り方
回顧録っぽいの。
現実を喪失しかけた高校生時代。
高校生の奈津は、世界の全てが不安だった。
特に理由もなく、自分が見て感じているこの世界が本当ではなくて、自分は本当には存在しないのではないかという不安を感じていた。
この生活は夢であり本当の世界には自分だけが存在していない、周りの人々を含めてこの世界が偽物で誰かの作ったレプリカである、などということを本気で不安に思っていた。
例えば、親指に他の指の爪を食い込ませて痛みを感じることで生を感じようとした、ほかには掌を噛んだり、腕に跡が残るほど爪を立てて食い込ませたりなどもした。
兎に角、痛みは夢なら無いだろうとでも思っていたのか、足下が急に抜け落ちるような不安を抱えたまま毎日を過ごしていた。
原因は、家庭の事情というやつなのかな。
奈津の家族構成は、祖母、父、母、姉、(弟1)、(弟2)、弟3である。弟1,弟2は、奈津は幼稚園に通っていた頃に亡くなった。)
母が物を溜め込む性分で、祖母は綺麗好き、父はめんどくさがりなのか?必要なものまで纏めてポイっと捨ててしまうような性格、という相容れない性質を持つ人の集まりだった。
もちろん、そのような集団が生活を共にすれば、各々不満が溜まり爆発するものである。
奈津の家では各々が自分の不満を大きな声で独り言しているような環境だった。
奈津にとって、それはかなり精神的に負担となるのであった。奈津にも各々に対して不満があったりはするが、それを自分が感じるのと他の人が自分に聞こえるようにその不満を延々と言っているのを聴かされるのとでは、完全に別物なのである。
奈津は、家族が互いに不満を相手に伝えるでなく、解決策を探ることなく、大きな独り言を聴かされ続けることで精神状態はかやり悪化していた。
そんな不安定な状態から目を逸らすべく、読みふけってしまったのがファンタジーやら、SFやら、怪異を扱う小説であった。
現実逃避していたら、現実感というか、実在するという感じというかを喪失してしまったのだ。