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何かが始まる(?)ストーリー

作者: 春野夜風


「今回は、人を感動させるストーリーを作りたいと思う(と、春野が言ってた)」


 そう、そいつはいつも唐突に何か言いだす。神のお告げでも聞いているのだろう。


「は? いきなり何言ってんだ?」


 そして、この男はいつもいつもそれに巻き込まれる。たまに、洒落にならんことをされるから可哀想だ。


「そもそも、人を感動さ「聞けよ」


「人を感動さ「無視かよ!」


「人を感動さ「わかったよ…もう勝手に進めてくれ…」せるストーリーとは普通では起こり得ない“奇跡”や、血の滲む様な“努力”というものが取り上げられている場合が多い気がする」


「…それで?」


 どうして大人しく聞いてやっているのかって? そりゃコイツの機嫌を損ねると優しくなくなるからだ。主に彼の財布に。彼はどうもコイツには甘い気がする。


「ちょっと一発“奇跡”を起こしてみようと思う」


「安い奇跡だなぁ…。そして努力は選ぶ気すらないという」


 この潔良さ(?)は逆に素晴らしいと思う今日この頃。


「大丈夫大丈夫、小説だから。掃いて棄てるほど起こせるから。奇跡」


 言ってはいけないことを平気でブチ撒けやがった!


「オマエがそこまでブチ撒けたお陰で感動からマッハで遠ざかってるけどな」


 コメディ一直線だ。

 どうでもいいことを思いついたのだが、“コメディ”と“一直線”を繋げると“コメディー”と“直線”に見えるな。まぁ、どうでもいいのだが。


「まずはここに炭酸のジュースがある」


 嫌な予感しかしねぇ…。


「500mlのが30本くらいだな。何するんだ?」


「このジュース、実は全部温めてから振ってます。それはもう物凄い上下運動で振りすぎてパンパンに膨張してます。太くて長くて熱くてパンパンに膨れ上がってます。このジュースを全部吹き溢さずに開けれたら奇跡ではないだろうか」


 そこはかとなく卑猥な発言が混ざってた気がしないでもないが、気のせいだ。これは罠だ。気にしたら負けだ。


「確かに奇跡かもしれないけど…くだらな過ぎないか? それに、達成して誰が感動するんだ? 感動する要素がないだろ」


 止めるのは不可能だとわかっていても、悪い点を指摘して止めてやらねばいけない。衆議院と参議院のように。そうすれば良い案が生まれるかもしれない。ただ、この場合の可能性は0に近いが。


「まず1本目ー」


 やはり不可能だったようだ。


「基本的に無視なのはもうわかってるさ」


 そしてコイツは勢い良くキャップを捻るんだ。奇跡が起こると信じて。いや、むしろ確信して。その確信は何処から来るのか是非とも教えてほしい。


「はい! それはもう凄い勢いで吹き出したな。びしょ濡れでベトベトだ。しかも、カル○スソーダだったせいで熱くて白い液まみれだ。ムラムラするか?」


 これは罠だ。反応しちゃいけない。ツッコミ=負けだ。


「やる前から結果はわかりきってるけどな。まぁ30本と言わずに、1本だけでも奇跡だわ」


「スルーとは酷いな。まぁいい、めげずに2本目ー」


 罠の回避に成功したようだ。


「なんか主旨変わってねぇ?」


 2本目も勢い良くキャップを捻る。


「はい吹き出したー」


 泥遊びする子どもの様な輝いた顔してるけど、やってること絶対間違ってるぞ。


「馬鹿過ぎる…」


 コイツは何がしたいんだろうか…。


「どんどん行くぞー」


 彼の経験上、そろそろ何か起きる…。何も起きませんように。


「こっち向けてんじゃねぇよ!」


 やっぱり拝んでみても無駄か。


「発射!」


 輝かしい良い笑顔だ! あと、そのボトルを何処かにやってくれると完璧だぞ。


「発射って! 危ねぇ! 当てる気満々で撃ってんじゃねぇよ!」


 彼の顔面目掛けて飛んできたキャップを間一髪で交わす。


「チッ!」


「舌打ちしてんな! 第二射を構えるな! って危ねぇ!」


 また顔面狙いかよ!


「ハハハ、まだまだいくぞー」


 すぐに三射目を構えてるし…。あんなもん当たったら洒落になんねぇ…。


「待てって! 危ねぇから!」


 時間よ止まれ! いや、むしろヤツの奇行よ止まれ!


「問答無用ー」


「ギャー!」


 ………


 ……


 …


「はぁ…はぁ…」


 生きてるって素晴らしいね…。


「いやぁー見事に全部吹き出したねぇ」


 凄く輝いた顔で、額の汗を拭う。何満足してんだよ。


「何すがすがしい顔してんだよ! 3本目から全部俺に向けて撃ってたじゃねぇか! 奇跡はどうしたんだよ!」


 5発目から全部容赦なく眼球目掛けて飛んできてたしな。失明の危機だったね。


「あぁ〜…奇跡。うん、奇跡ね。もちろん覚えてた」


 お馴染み過ぎて逆にすがすがしいさ。


「途中から楽しくなって忘れてただろ」


 人を危険に晒して楽しむって、どんな危険思考だよ。


「わ、忘れてたわけじゃないんだからね!」


「うっせぇよ! 意味もなくツンデレしてんじゃねぇ!」


「さ、最初がどもって最後に“だからね”が付いたら全部ツンデレってわけじゃないんだからね!」


 ツンデレしながら説明してんな。


「キー!!!! ムカつくー!!!!!! おちょくりやがって!」


「まぁまぁ落ち着きたまへよ」


「誰のせいだよ!」


 肩をポンポン叩くな。テンションを上手く利用しよってからに。


「君が必死でペットボトルのキャップを避けてた姿にディスプレイの前の皆は涙を拭っているに違いない」


 だから、ディスプレイの前の皆とか言うなって。


「ありえねぇよ! しかも4本目からカットされてるじゃねぇか!」


「大丈夫。カットされてなかったとしても涙で見えないさ」


 意味分からん。


「テメェ、無理矢理にでも終らすつもりだな?」


「チッ!」


「舌打ちすんな!」


「じゃあ、こうしよう。あれだけの弾幕で君は一滴たりとも濡れていない。それは奇跡だ」


 今日の君はよく輝かしい顔をするね。しかし、その顔をする場面が間違っている気がするんだ。


「“いい着地点みつけた”みたいな顔してんじゃねぇよ」


「皆は絶対真似しちゃダメだぞー? お姉さんと約束だ」


「オマエ女だったの!?」


 いや、私は知ってたけど、ディスプレイの前の皆のためにツッコミは必要かなぁと思って彼に任せてみた。


「今更何を言っているんだ? 君は。ずっとこの可愛い素顔を晒して目の前にいたじゃないか」


「ナルシストが」


 自分で可愛いとか言うなよ。


「ナルシストではなく、ナルシシストだ。それに、ナルシシストは自分のことを美しいと思う人のことで、私は自分が可愛いと言った。だから私はナルシシストじゃないと定義しようと思うのだが、どうだろう」


「どっちでも大差ねぇよ!」


 いきなり哲学っぽいこと言うねぇ。


「君はさっきから口が悪いぞ。私が愛して止まない君はいったい何処に行ってしまったのだ」


 やれやれ…。って顔してるね。彼が悪いのか?


「こうさせたのは何処のどいつだよ!」


「ドイツはヨーロッパにしかないだろう」


 くだらねぇ!


「やっぱりおちょくってんなぁ!」


「やはり君は面白い。こんなにも私の心を満足させてくれる。気のせいかと思っていたが、私は君のことが好きということで間違いないようだ」


 ・・・


「…は? いやいやいや! 実は『とか言ったら君はどうする?』みたいにからかってんだろ?」


 急転直下にも程があるぞ!? え? 何? 今まで罠がいくつかあったけど、もしかして最初から罠の中にいた? いきなりLOVE STORYに突入かい? 無駄に英語で綴るなって? それはゴメス(蹴


「そうだったら私の心臓はこんなにはならないだろう。さっきも『愛して止まない』と言ったあと身体から火が出たのかと思うほど熱くなった。あまり女に恥をかかせるもんじゃない」


 ・・・


「これってこんなとこに着地すんの…?」


「どうやらそうらしい。コメディだと思って侮っていたようだ」


 ・・・


「やられたなぁ…」


 私のせいなのか!? 君らが勝手に突入したんだろ! てか、まさかこんなことになるとは…。


「そんなことより、返事を聞かせて欲しい。そして、早くこの私のたぎる想いを受け止めて欲しい」


 突然過ぎる展開に頭が着いてこないんだが…。冷静になれ。そうだ、いつもの私はクールだ。クールになれ。バットも1500秒も必要ないが、クールになれ。


「俺がOKすること前提で話が進んでるんだな」


「ダメ…なのか…? 私に着いてきてくれるのは君だけだと思っているのだが…」


 その顔イイヨ! 私はそんな寂しそうな犬のような表情は大好きだ!


「あぁもう、そんな顔すんなよ! 確かにオマエは人の話は聞かないし、やること滅茶苦茶だし、何考えてるかわかんねぇけど、一緒にいると楽しいんだ。断る理由がねぇよ! 何かこんなのでいいのかよ! スッゴいテンパってるよ!」


 ヘタレってかカッコ悪ぃってか情けないってか…。


「私の予想通り素敵な返事だ。やはり君はとても良い。これからもよろしく」


 とても輝かしい良い笑顔だ。やっと場面が一致したな。


「あぁこちらこそ」


「そ、そそ、そそそそそそれでだな、こ、こここ、こ、ここは定番で、き、キスでもして閉めた方が良いのだろうか…」


 とりあえず落ち着け。


「そんなこと出来るかよ! そ、それより、この話の目的忘れてるだろ」


「え? えぇーと…感動が何やらってやつだったか?」


 まぁ思いつきで行動したことなんてこんなもんだよね。


「自分で言い出したんだろ…」


「感動とは涙。その感動のための涙を私たちの新しい門出を祝って流して欲しい」


 彼女は自分では上手いこと言ったと思っているところが凄いね。はい拍手。


「わけわからん…」


「ダメ…か?」


 その顔イイヨ! 私は──以下略。


「今は別にそれでも良いんじゃないかと思う。それもオマエらしいし」


 初々しいってイイねぇ。


「やはり君はとても素敵だ。私は君にメロメロのようだ」


 もんのすごいほうけた顔だね。湯当たりしたみたいだ。ときめきをメモリアルな感じだな。全く関係ないけど。


「オマエ、前半と後半でキャラが随分違うが、それでいいのか? かなり恥ずかしいセリフ吐きまくってるし」


「愛は盲目だよ。さぁ、早くこの話を終わらせて結婚初夜といこうじゃないか! 子どもは3人だ!」


 止めて! 一般向けでその発言止めて!


「生々しい! それにまだ結婚してねぇ!」


「“まだ”ということは何れは結婚してくれるということかな?」


 しまった! 罠だ!


「いや、それはその…まぁ何れはそういうこともあるかも…」


 若いねぇ。


「うはぁ〜…もうダメだ…お姉さんは我慢の限界だ…このまま君をベッドに連れ去ってしまってもいいよな?」


 それ以上は絶対止めて! 一般向けじゃなくなっちゃう! 私は一般向けの限界に挑んだりしてないから!


「ま、待て! 炭酸銃より待て!」


 マジで全力で本気で洒落になんねぇから!


「君が可愛すぎる、基、素敵すぎるのがイケないんだ。イケない子にはお仕置きだ」


 恐いよ! 君の発言が恐い!


「待てって! 若さと衝動で行動するのは危険だって!」


 そうだ! 良いこと言った! もっと言ってやれ!


「私の萌え──いや、燃え上がる情熱は止められないさ! 泊められるのは私が君の家に。だけさ!」


「誰が上手いこと言えと!?」


 主人公くん頑張って! 私は一般向け作家(自称)でいたいんだ!


「じゃあ、私たちは情熱の炎を燃えあがらせてくるから! あと、炭酸銃は意外とかなり危ないから真似しないように!」


 良いこと言った! 危ないことは真似しちゃいけないぞ! って、話を反らすな!


「若さと衝動と情熱に身体を任せた行動もかなり危ないから真似すんなよ! てか、誰かコイツを止めてくれー! このままだったら──


 主人公くんが連れ去られた! もうさっさと閉めるしかない!

 では、さよーならー






おしまい


現実世界での危険行為はやめましょうね


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