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Realita reboot 第一幕  作者: 北江あきひろ
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11月10日ー幕間ー


 ー幕間ー



「號帥! 隊の結集(けつじゅう)、完了しました!」

「…ん。結局…何人集まった?」


 つい先程まで身につけていた洋服を、無雑作にバッグに押し込みながら、真都が

部下と思しき僧兵の声に応えた。

 そのバッグをまた別の僧侶に手渡すと、今しがた着替えたばかりの衣の(たもと)から、

まるでボクサーのバンテージのように腕から指の第一関節まで、黒い布が巻かれた

手が見えた。


 引き換えのように差し出された金属製の「錫杖」を受け取り、感触を確かめる

ように二度、三度と軽く黒い手が振れる。



「……はっ。36號隊の計108人…です。都内のほとんどと、近隣の県からの応援で

ようやく…」

「30分ほどでよう集まった…と言うべきやろ。近隣いうても本山からの応援は

期待できへんしな…」

「……はい」


「一応…ですが、千葉と群馬からも応援が来る事にはなっております…。ただ…

何時になるかは…」

「ふん…今更10人20人増えても…焼け石に水やな。くっくっく…。師兄か…いや、

(りょ)っさんでもおってくれたら、ちょっとはちゃうんやろうけどな…」


 くっくっ、と真都が乾いた笑い声を立てた。もし今ここに、あの二人か、一人

でもいてくれたら、ずいぶんと心強いことだろうと真都は思う。

 一人は自分をここまで鍛え上げてくれた、兄のように敬愛する男だ。数年前

までは彼自身も金剛の一人だったが、ある会士との戦いで負傷し、今では現役を

退いた。

 しかしその力はまだ衰えてはいないことを、真都は知っている。



 そしてもう一人は、3年ほど前から現場で時折遭遇するようになった、神奈川の

忌門寮を率いる、明良(めいりょう)という僧兵だ。

 何度か明良が戦うところを見たことがあったが、戦闘の才能は自分以上だと

真都は感じていた。ただ、その戦法や技術は、朧露のものとは異質であるとも

感じていた。おそらくは持って生まれたセンスだけで、そこまで強くなったのだ。


 だからなのか、金剛に匹敵するような力を持ちながらも、その立場は今も

神奈川の部隊長どまりである。それが気に入らないからなのか、破門すれすれの

放蕩を繰り返しているとも聞いている。


 僧侶らしからぬその振る舞いには、同じ僧兵として思うところがないでもない。

しかし「力」は本物だ。

 だからもしこの場にいてくれたら、とつい思ってしまったことにも、真都は苦笑

した。我ながらまだまだ修行が足りない、と。



「神奈川の號主(ごうす)とは残念ながら連絡が取れず……申し訳ありません…」

「良っさんが捕まらんのは今に始まったこっちゃ無い。アンタのせいやないよ」

「…は……」



「…ま、無いもんねだりしてもしゃあない…。やるしか……無いんや!」


 真都に錫杖を手渡した僧侶……、太仙が、真都の独り言のようなつぶやきに

うなずく。過去も未来もなく、あるのは「今だけ」が彼らの信条だ。故に彼らは

揺るがない。そうあるべく、彼らは鍛錬を積み重ねてきたのだから。



「あ、あの…號帥。それで……この「敵」は…いったい何なのですか…?」


 とはいえ全ての僧が、そこまでの境涯(きょうがい)を持ってこの場にいる訳ではない。やや

気弱そうな顔をした別の僧兵が、不安げな声を上げた。

 むろん彼とて、これまで式紙や会士との戦いを何度となく経験してきている。

しかしこれまでのいかなる相手とも異なる、異様とも言える「力」の感覚に呑まれ

かけているようだった。


「…正直に言う。ウチにも判らん。もしかしたら例の公園の件のヤツかもしれん

けど、まるっきりちゃうかもしれん。そもそも会士かどうかも判らん…」


「そ、…そんな…。號帥でも判らないって……。そんなの……」


 自分よりもはるかに経験もあり、力もある號帥が「判らない」という、得体の

しれないモノとこれから戦うのかと、気弱そうな僧侶の表情が一段と青ざめる。


「えっと……アンタ確か…「()っさん」やったな。アンタは後方や。ウチの

フォロー、しっかり頼むで?」

「え……あ、は、はい。諒解…しました!」


 道っさん、と呼ばれた僧兵が、ほんの少しだけ安心したような、かすかな嬉しさ

をにじませた声を上げた。

 これだけの力を放つ「化物」とまともに正面からやり合えば、確実に命はない。

そう確信した矢先の真都の言葉に、道っさんは思わず安堵した。


 …しかし、真都はそういう意味で言ったのではないことに、彼は後に気づく

ことになる。



「…よっしゃ。ほな以降は無線で連絡!! アンタらも配置につき!」

「し…、しかし號帥!! 我々とて金剛には及ばずとも、それなりの…!」


「…それなりの力、ぐらいじゃ、却って足手まといなんや。…悪いけど結界支援に

回ってくれとった方がウチがやりやすい」


 部下の懇願ともいえる言葉を、ばさりと真都が切って捨てた。この戦いで

必要とされるのは「最低」でも金剛クラスだという確信を得て、真都はこの場に

いるのだ。たとえ命を捨てる覚悟をもってしても、それ以下の力では犬死にしか

ならない、と。



「…諒解(りょうかい)しました。ご武運を…!」


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