表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Realita reboot 第一幕  作者: 北江あきひろ
72/95

11月9日-1


 -11/09-




「ふあぁぁぁあああ……」

「ふわわわ…あぁぁぁ……」


「…きょ、今日も眠そうだね…二人とも…」


 週初めの月曜日の朝。つい出てしまった僕と絵依子の盛大なあくびを見て、

綾が以前のように…いつものように苦笑している。


 …綾と学校に行くのは、あの文化祭の日以来だ。あの日から、またずっと

休んでいた綾と久しぶりの一緒の登校だった。

 だけど以前のように朝に僕たちを迎えに来てくれた時からずっと、あの日に

覚えた違和感やおかしな様子はまるでない。逆にこっちが驚くほど、まるっきり

以前のままの綾だった。


 あの日のことは本当に何だったのか。メガネをかけると性格が変わるとか、

そういう変な体質なんだろうか。綾って…。


「いや…まさかな。マンガじゃあるまいし……」

「……? 何? マンガがどうかしたの? 瞬くん」


「い、いや、なんでもないよ。それにしても…」


 ちらりと視線を絵依子の方に向ける。今の僕も人のことは言えないんだろう

けれど、もはや絵依子に至っては、眠すぎて半分自動で動いてる、という有様だ。

気のせいか、なんか歩き方までロボっぽい。ウィーンウィーンという擬音が

聞こえてきそうだ。


「くすくす…。もしかして…二人ともまた遅くまでテレビ見てたの?」

「…ふあぁ…ま、まぁそれだけでもないんだけどさ」


 僕の視線の先を追った綾が、苦笑まじりにくすくすと笑う。本当のことなど

言えるはずもない僕はあくびをかみ殺しながら、あいまいに綾に言葉を返した。

 …結局、何の成果もなかった昨日…というか、日付的には今日の深夜の探索は

何事もなく終ったものの、むしろ帰宅してからが大変だったのだ。


「ふぅん…? じゃあいつものお絵描き? それとも…エコちゃんと何かして

遊んでたのかなぁ…?」


「そういう訳でもないんだけど…あふ…」



 …昨日、コンビニ前で成り行きで決まってしまったお出かけ。その計画を

家に帰ったとたん、アレコレ次から次へと絵依子が持ち出してきたのだ。

『えへへ! じゃあ、日程は今度の日曜日で決定! さ~~て、それじゃあ

どこがいっかな~。ネズミーもいいけど、やっぱりちょっと遠いかなぁ…』

『……うん。そうかもね……』


『…あ! だったらオーシャンパラダイスなんてどうかな?! オーパラ!』

『いや…どこでもいいよ僕は。それよりも、そろそろ寝ないと…』


『ダメ! 今日は決まるまで寝させないよ! じゃあ…カレー博物館とかどう? 

ん…でもでも、せっかくのお出かけなのに、服がカレーで汚れちゃったりする

のもヤダなぁ…』


『……じゃあラーメンミュージアムはどうでしょうか』

『おんなじだよ! って言うか、お兄ちゃんも真面目に考えてよ、もぉ!』


『あの…僕、そろそろお風呂に……』



『待てぇぇぇいいいい!! 逃げるなぁぁぁ!!!!』

 ……結局こんな感じに、ほとんど早朝まで、あーだこーだと計画を立てる

絵依子につき合わされ、僕もいつも以上の睡眠不足に陥ってしまったのだった。

 しかも結局行き先はまだ決まってないという有様である。まったく……口は

災いの元、ということか。



「んん…そう言えばさ、綾って今度の日曜ってヒマ?」


 ふっと思いついて出た僕の言葉に、入れてるはずのコンタクトが落っこちるん

じゃないかというぐらい、綾の目が丸く大きくなる。


「え…え、え? しゅ、瞬くん…、そ、それって…どういう…」



 …考えてみれば、どうせ出かけるなら僕と絵依子の二人ぼっちより、大勢の

方がもっと楽しいんじゃないだろうか。

 綾ももちろん、せっかくだから真都も誘おう。忙しいかもしれないけど、

かなえさんにも声を掛けてみよう。


「うん。だから今度の日曜にさ、みんなで遊びに……」




 ミシッ……


 そこまでを言いかけた時。僕は唐突につま先に何か衝撃を感じた。

 とっさに足元に目をやると…絵依子のかかとが深々と僕のつま先にめり込んで

いるのが…見えた。


「……っ…~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッッっ!!!!!!!」



 …ワンテンポ遅れてやってきた超悶絶級の痛みに、声にならない声が僕の

喉からほとばしった。

 痛いなんてもんじゃ無い……。踏まれたのはつま先なのに、なぜか目の前が

チカチカする…!!


「あお…お…おっ……!!!!!」

「ど、どうしたの!? 瞬くんっ!?」


「……あれあれ、石ころにでもつまづいたのかなぁ?まったくお兄ちゃんってば

ドジっ子なんだから。ふふふふふ…」


 ……思わずその場にうずくまってしまった僕を、さっきまで半分寝ながら歩いて

いたはずの絵依子が、冷ややかな氷のような視線で見下ろしている。

 …くすくすと笑ってるくせに、目はまるで笑ってない。と言うか、むしろ怒って

いるようにも見える。


 な…なんなんだ…。ぼ……僕が何をしたっていうんだ……。





「ぐぉ…おお…、お、おま…、絵依子ぉぉ……」


「さ、こんなのに付き合ってちゃ、わたしたちまで遅刻だよ。さっさと行こ! 

あーや!」

「きゃっ! ひ、引っ張らないでエコちゃん! そ、それに瞬くん、さっき何か

言いかけて…」


「いいから! あーやには関係ないよ!」

「で…でも…、しゅ、瞬く~~ん~~!」



 機関車のようなド迫力で、ずるずると絵依子が綾が引きずっていく。こ……

こんな仕打ちを受けるいわれなんか、僕にはないっていうのに!!


「ま…待てぇぇぇぇ!!! え~い~こ~~っ!!!」

 かかとで立つことで、つま先の痛みを何とか誤魔化しながら、僕は猛然と二人を

追いかけ始めた。


「……!!」

 驚いた表情の絵依子が、綾の手を離した。

 …身軽になってスピードを上げるつもりか。でも……逃がすか!!




「しゅ…瞬くん…!」

 置いてきぼりにされた綾を追い越し、僕と絵依子の距離が少しづつ少しづつ

縮まっていく。長距離ならともかく短距離、おまけに錬装もしていない状態なら、

男の僕の方にまだ分があるってことだ!



 勝利を確信し、スパートをかけようとしたその時、ちらちらと後ろを振り返って

いた絵依子の表情が……にやりと歪んだのが見えた。


「きゃ~~~~! 誰か~~~! ヘンな人に追いかけられてるんですぅ~~~。

たすけて~~~!!」


「…!!?? なな、なに言い出すんだ! バカ!!や、やめろ!!」


 突如、絵依子の芝居がかった叫びが、朝の通学路にこだました。なんだなんだと

振り返るみんなの視線が痛い……!


 ざわ・・・



 ざわざわ・・・



「……ちょっと奥さん、朝っぱらから変質者ですって。怖いわねぇ…」

「いやな世の中ですわねぇ…。うちも時々下着が無くなるんですのよ…」


「……ちょっっ!! …ち、違いますっ!!」


 きっと前世がカバとワニだったと思われる、主婦らしきおばさんたちの会話に

思わずこけそうになりながらも、僕は必死に身の潔白をアピールした。が、その

間にも絵依子のデマはとどまる所を知らない!




「あ~れ~~! だ~れ~か~~!! たすけて~~!! 痴漢です~~!!」



「ちち! 違うんです! こ、これは…そ、その……! え、絵依子ぉぉぉ!!」



「いやぁ~~~! このひとストーカーですぅ~~!怖いですぅ~~~~! 

 あははははははは!!」



 …痛すぎる視線をぐさぐさ受けながら、必死に絵依子に追いすがったものの、

僕の朝の大捕り物は結局、少し早めに校門をくぐっただけに終わったのだった…。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ