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高架下

作者: 三杯酢

俺とトーマスとナターシャはいつも一緒にいた、

いつも一緒に馬鹿やっていた。

いつも3人で笑い転げていた。

しかし、ナターシャが『女』ということを意識し始めたとき俺とトーマスのなかで何かが変わり、いままで積み上げた何かが崩れ、何か大切なものが失う気がしてどうしようもなく不安でたまらなかった。

6歳のころであった。


俺は紙幣を握りしめて走っていた。

その日は天気予報では晴れの予報ではあったが、いまにも一雨降りそうな天気であった。

おれは隣町のおもちゃ屋さんでトーマスの誕生日プレゼントを買い、小雨のなか買ったおもちゃを濡れないように守りながら家路を急いでいた。

8歳にはこのおもちゃはちょっと子供過ぎただろうかといったことを考えながら走っているとあっという間に家に帰ることができた。

家で支度をし、約束の時間が迫っていたので俺は家を出た。

家を出る頃には雨は本降りになっていて、父親の上等な傘を拝借して家を出た。

トーマスの家に着く頃には雨は過去30年最大級の嵐になっていた。

既にナターシャはトーマスの家に居り、トーマスと雑談を交わしていた。

軽く会釈をし俺もトーマスとナターシャの会話の輪に入った。

トーマスの家は裕福ではなかったが、その日は大きめなケーキを用意してあった。

お約束の誕生日の歌を歌い、トーマスがケーキを切り、それぞれの皿に取り分けた。

ナターシャのだけ赤い苺がのっていたのが俺にとっては少し不服ではあったが、今日はトーマスの誕生日なのですべてトーマスに任せることにした。

しかし、ナターシャが苺を食べた瞬間にトーマスが激怒した。

僕の誕生日なのに何故ナターシャが僕の好きな苺をたべているのか、早く八百屋へ行き苺を買ってこい…と

俺はトーマスの矛盾に憤りを感じながらも、今日はトーマスの誕生日なので今日くらい付き合ってやろうと思い、なにも言わず黙っていた。

ナターシャがトーマスの家を出ると今の今まで激怒していたトーマスが俺に事情を話し始めた。

トーマスは今年の冬引っ越してしまうナターシャの為にサプライズを2ヶ月前から計画していたという。

俺はそのとき初めてナターシャが引っ越しをすることを知った。

トーマスは親から聞いていたらしい。

トーマスと俺は部屋を少し早めの送別会風に仕立てナターシャを待った。

外は過去30年最大級の嵐であったが俺とトーマスはその点に関しては何も心配はしていなかった。

しかし、もうナターシャが帰ってきていいぐらいの時間になっても彼女は帰ってこなかった。

俺もトーマスも不審がったが、待った。

彼女は強い子だった。

俺は門限もあるので仕方なくトーマスへのプレゼントを置いて家に帰ることにした。

少し心配になった俺は帰る途中に八百屋へ寄ることにした。

八百屋に寄る途中の道で俺は彼女を見掛けた。

俺は走った。

自分が濡れているのなんて気にならなかった。

ただただ俺は走った。

雨は顔の穴と言う穴から入り、顔はぐしゃぐしゃになっていた。

機関車の汽笛が嵐の中に響く。

機関車は人類の発展にとっては欠かせないものだ。

機関車は人々の暮らしをより豊かにより便利にした。

それでも機関車の汽笛が鳴り響く。

無我夢中でトーマスの家に辿り着き、トーマスにこう伝えた。

『ナターシャが機関車に轢かれた』

汽笛が鳴り響く。

こんなに長く汽笛が鳴り響くはずがない。

おそらくあれは俺の頭の中で鳴り響いていたのだろう。

トーマスは皮肉にも俺があげたプレゼントの青い機関車のおもちゃを持っていた。

俺たちはもうどうするこもできなかった。

ただ後悔するしかすることができなかった。

俺の横でトーマスが壊れていくのが分かった。

ナターシャは赤い苺を左手にもっていたという。


俺は24歳になっていた。

俺とトーマスはあの事件以降疎遠になっていた。

トーマスはマサチューセッツ工科大学を卒業したと風の噂で聞いたがそれ以外何も情報がない。

そんなトーマスから連絡があった。

『久しぶりに会おう』

そういう連絡だった。

16年ぶりの再会だ。

意図的なのか分からないが指定された日はトーマスの誕生日、そしてナターシャの命日であった。

指定された場所へ行くとそこはだだっ広い倉庫であった。

そこでトーマスは異形な姿でまっていた。

トーマスは狂っていた。

トーマスは壊れていた。

分かっていたはずだ。

トーマスが壊れていたのは8歳の頃から分かっていたはずだ。

なのに俺は何もしなかった。

自分は最愛の親友を無くしたといった状況に甘んじていただけだったのだ。

甘えていただけだった。

もっと未来を見据えるべきだったのだ。

もっと明日に向かって歩き出すべきだったのだ。

俺達はもっと協力してこの苦難を二人で乗り越えるべきだったのだ

トーマスは自分の体を改造していた。

自分がナターシャを殺したのだと自分に罰を与えていた。

あの日。16年前のあの日ナターシャを轢いた機関車と自分をトーマスは重ね合わしていた。

そう、彼は自分の体を機関車に改造していた。

彼は線路の上でしか走れない体になったのだ。

俺は愕然とした。

彼は笑っていた。

『僕にナターシャを乗せて走るんだ』

俺はそんなトーマスを世話している。

彼には仲間がいる。

彼らは今幸せです。

俺もがんばろうと思っている。

でも最近太っちゃった。

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