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短編・エッセイらしきもの

これだから──

作者: 本谷文途

今日も彼は──

 彼は、迷っていたり困っている人を見かけると、つい手を差し出してしまう。

 そしてその日も、彼は手を差し出した──


「うぅっ、ひっ……ママぁっ──」

「どうしたの? 迷子?」


 道路の端で泣いていた男の子に、彼は声をかける。


「うっ……ん──」


 グズりながらも、男の子は頷く。


「そっか──じゃあ、一緒に探そう」

「ほんと……っ?」

「ああ──手、繋ごうか」


 笑顔で左手を差し出す。


「うんっ!」


 男の子も笑って手をとった──


         *


「どこで迷子になったの?」


 道を歩きながら、彼は訊く。


「わかんない……」

「そっか──」


 これは手当たり次第に探すしかないか……と彼は思う。


「ごめんね……お兄ちゃん」


 男の子が悲しげに言う。


「どうして?」

「めいわく、かけちゃダメって、ママに言われてたから……」

「そんなことないよ。こういう時だってあるよ」

「……うんっ──」


 男の子は繋いでない方の手で、目をこすった──


「お母さん、どんな服着てる?」

「水色のワンピース着てる。肩から茶色のカバンかけてる」

「そう……。髪は長い? 短い? 何色?」

「短い。黒いよ」

「わかった。じゃあ、聞いてまわろうか。すいません──」


 彼は、近くの人から聞き込みを始めた……


         *


 太陽が沈み始めた頃。

 まだ、見つけられないでいた──


「お兄ちゃん……」

「大丈夫。見つかるよ──じゃあ、戻ってみようか。会えるかもしれない」

「……」


 男の子は、うつむいている。


「疲れちゃった?」


 フルフルと首を左右に動かす。


「どうし……」

「ママぁっ……あぁっ──」


 男の子はポロポロと涙を流す。

 寂しくなってしまったのだ。いつも一緒にいるのに、もう一緒じゃなくなってから随分時間が経っている。泣き出しても仕方ない。


「参ったな……」


 その時だった。

 ショートカットの黒髪で、水色のワンピースを着て、肩から茶色のカバンをかけた女性が走って来たのは──


「ママ!」

「ゆう!」


 女性は、無事で良かったと呟いて男の子を抱きしめた。


 落ち着いてから、女性は彼に頭を下げた。


「ありがとうございました! 変な人に連れ去られてたらどうしようかと……。本当にあなたみたいに優しい人で良かった」

「いえ。見つかって良かったです。次は気をつけるんだよ」

「うん──」


 男の子は女性の手をしっかり握って頷いた。


「それじゃ、ありがとうございました。ほら、ありがとうは?」

「ありがとう! お兄ちゃん!」


 男の子は満面の笑みで言った。


「どういたしまして──」


 彼は手を繋いで帰っていく二人を見送りながら、一人呟いた。


 これだから──


「やめられないんだよな……」

 








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