事情聴取。
次の日、朝から容疑者の聴取を聞く機会に恵まれた僕とキイチさんは、いそいそと警察署に向かった。
村上亨が事情聴取に立ち入ってもいいように、頼み込んでくれたのだとか。
僕は、またも置いて行かれそうになったのを必死にお願いして、なんとか連れて行ってもらえる事になったのだ。
聴取を行う年配の刑事さんは、あまりいい顔はしなかったけれど、村上の頼みだからなと、諦めたようだ。
・・・なんででしょう。村上亨は、まだ若い刑事なのに。なんか、凄い人なんですかね・・・。
同年代ぐらいに見えるのに、こうも待遇が違うとヘコミそうになる。
「ドアホ。行くぞ、折角の機会だ。なかなか聴取風景なんて見れないからな。」
良く見とけよ。と、キイチさんは僕の頭をポンポンと軽く叩く。
・・・おや?慰めてくれたんですかね?キイチさん。
でも、その奥の村上亨は何故に睨んでるんですかね?
聴取室の隣にある、同じような簡素な部屋に僕とキイチさんは入れられた。
その部屋には、僕の背では少し高い位置に、覗き窓のようなガラス張りの小窓が付いていた。
隣の様子が見て取れるらしい。
あちら側からも見えちゃいませんか?と心配していると、マジックミラーだと教えられた。
声はマイクで拾っているのか、簡素なテーブルに置いてあるスピーカーから聞こえてくる。
「で、本当はどこにいたんだ?」
これは、刑事さんが真嶋に質問しているところだ。
「だ・・、だから、九州だって。」
「研修だと言っていた病院の看護師が、研修など無かったと証言してるんだ!嘘をつくな!!」
「・・・。」
どうやら、真嶋の研修は、嘘だったようだ。
その後、刑事さんにきつく問い詰められて渋々明かした真相はというと。
院長と院長の頼みを聞いた九州の旧友に口裏を合わせて貰って、研修と言う事にしたそうだ。
その実、何をしていたかというと、友達と九州旅行を楽しんでいた。と。
態々、嘘をついた理由を問い詰めたが、真嶋は遊びに行くなんて病院関係者に知られると、体裁が悪いからだと言い張っていた。
しかし、更なる追及にとうとう白状したのが、相手が女性だったと言う事だ。それを隠していたのだ。
次に聴取を受けたのは、ストーカーの安渕だ。
安渕は、始終ごもごもとしていて、刑事さんを苛立たせていた。
そして、泣きそうになりながらも、事件発生当日に現場付近にいた事を白状した。
勧告を受けてから、ずっと近づかなかったのだが、真嶋と結婚するという事を病院の看護師が話しているのをたまたま耳にて、せめて最後にひと目でも・・と、思ったそうだ。
諦めるために行ったのであって、決して殺しはしていないと、犯行を強く否定した。
更には、こんな証言もした。
事件発生当日、マンションをショッピングモールの方から双眼鏡で覗いていたら、マンション側の歩道からしきりにマンションを見ている人がいた。その人は通り過ぎては、戻ってを繰り返していた。
背が高く均整のとれた体つきだったそうだ。帽子を目深に被っていたため、顔はあまり見えなかったが、家に帰ってからテレビに宮内が映った時に、似ていると思ったそうだ。
時間はというと、二十二時五分前。
これは、ある番組を見る時間には帰ろうとしていたために、こまめに時間を確認していたので間違いないとの事。
そして、時間を見て、慌てて自宅へ帰ったのだと言う。
今回、聴取に呼びだされたのは、この二人だけだった。
呼びだされなかった三人は・・・。
沢谷の当日の足取りは、完全に裏が取れて当該時間には現場不在が証明された事になるから、容疑者から外れる。
宮内に関しては、現在海外にいるため帰国後に呼び出す予定。目下、第一容疑者だ。
高山はといえば、当日は勤務日で消防署にいたため、高山も容疑者から外された。
キイチさんの様子をちらりと窺うと、マジックミラーの向こうを凝視していた。
キイチさん。マジックミラーに穴が空いちゃいますよ?




