単独行動の要。
事務所にひとり。
サミシイです。僕、とってもサミシイです。
は。ダメです。落ち込んでいる場合じゃありません。
僕は、探偵助手なんです。
気合いを入れるため、自分の頬をパチンと叩く。
い・・痛いです。でも、キイチさんのげんこつよりは、痛くない。
いざ!出陣です!
という事で、やって来たのは現場マンション・・・の見える橋。
現場に行っても、入れてもらえるか・・・・。
逡巡しならが、橋をウロウロ。
僕、怪しい人みたいです。通り過ぎる人の視線も痛いです。
あれ?あっちにも怪しい人がいますね。
むむむ。怪しい。マンションを凝視してますよ。
そーーーと、怪しい人に近づいて・・・。
「何してるんですか?」
ひいいい。と、情けない声を上げた怪しい人物。
「あ、いえ、あの。そそそのマンションで、な何かああああったんですか?」
「え?あーー・・・・。」
こういう場合、話していいものかどうか。
返答に困った僕は、適当に答えた。
「あ、ああ、ななななにか、あったんですかねーー。ぼぼ僕も知りたいです。」
そんな言い合いをしていると、その人物は、用があるのでとさっさと逃げて行った。
むー。怪しいです。
僕は、咄嗟に携帯電話のカメラで、写真を撮った。
橋を渡り切って、ショッピングモールの前をブラブラとマンションに視線を遣ったまま、ブラブラと通り過ぎる。
・・・ゴチン。
「わっ。ご・・ごめんなさい!!よそ見していて・・・」
人にブツかってしまったのだ。
その人は、紺色の作業服のようなものを着ていた。背中部分には、XXXX消防署と書いてある。
「あ、いえ。こちらこそ、通行の邪魔をしてしまいまして、すみません。お怪我はないですか?」
その人は、引き締まっててガタイが良く、背も高い。
顔は、温和そうな垂れ目をしていた。とてもいい人そうだ。
「消防士さんなんですね。」
僕が、なんとなく言うと、その人は照れながら後ろを指して答える。
「はい。後ろにある消防署に勤めてます。」
後ろを振り返って、ブラブラといつの間にか消防署の前まで来ていた事に気が付いた。
そして、ムクムクと興味が湧いてきた。
「あの、あの、消防士さんって、かっこいいですよね。」
僕が、食い付き気味に言うと、苦笑しながらありがとう。と返してくれた。
「でも、大変ですよねー。まるまる一日待機して、呼ばれたら駆けつけて。ああ、僕だと夜中に眠くなっちゃいます。」
「ああ、夜は何も無ければ、仮眠とれますから、大丈夫ですよ。」
僕の相手をちゃんとしてくれた。スルーされなかった事に感動を覚える。
それに、一日待ってるだけじゃなくて、自首訓練出来る様な設備もありますよ。と、教えてくれた。
それから、手に持っていた同じく紺色のジャンバーを持ち直すと、じゃあと言って消防署へと帰ったのだった。
あれ?何か落ちた?
消防士がジャンパーを持ち直した時に、ひらりと落ちたのは、葉っぱだ。
なんだ。これなら、わざわざ呼びとめなくてもいいかと、落ちた葉っぱを何気なく拾う。
「おい。何してるんだ?こんなところで。」
びくぅううう。
吃驚して、何故かコートに葉っぱを持った手を突っ込んだ。
振り返ると、そこにはキイチさんの姿が。
「あ。い・・いえ。あの。」
しどろもどろになっていたが、それには構わず、キイチさんは僕に言う。
「まあ、ちょうど終わったところだったんだ。帰るぞ。」
そういうと、じゃあなと村上亨に手を挙げた。
村上亨は、キイチさんにペコリと頭を下げてから、こちらを向いたが、ぷいと行ってしまった。
あ・・あれ?僕、嫌われてます?
「おーい。なにしてんだ、カナメ。帰るぞーー。」
「あ、はい。待って下さいよ。キイチさーーーん。」
その後ろ姿をじぃっと、見られているとは思いもしなかった。




