浮上した容疑者。
「じゃあ、連絡入れるよ。」
そう言うと、村上亨はテープを潜って中へと入って行った。
結局最後は、紹介してもらえたが・・・、「これ、助手。」「へぇー。」で終了。
なんですかそれは。僕は、悲しいです。でも、助手って言ってくれました。
「連絡ってなんですか?」
「ああ、事件の事をな。」
と、悪人面でニヤリ。
情報源をGETしたキイチさん。満足げです。
「あれ~。んーー。」
事務所に帰るために、歩いている途中、どうも靴の中に違和感がある。
僕が靴を脱いで、覗きこんでいると前を歩いていたキイチさんが、振り返って問い掛けてきた。
「どうした?」
「ちくちくするので、靴を脱いでみたら、葉っぱが入ってました。いつ入ったんでしょうか。被害者の所以外に靴を脱いでないんですけど。」
葉っぱの切れ端だったが、葉の後ろが白っぽくなっていた。
それを摘まむと、キイチさんに見せる。
「・・・アベマキか。」
「え?誰ですか。ソレ。」
「ドアホ。その葉っぱだ。クヌギの一種だな。」
へぇ。キイチさん、そんなことまで知ってたんですね。
「あのマンションの庭にそんな木、なかったな。」
いつの間に、チェックしたんですか。吃驚です。
感心しながら、手に持っていた葉っぱをなんとなくポケットに入れたのだった。
次の日、キイチの携帯電話が朝から盛大に着信を知らせてきた。
「お、トールじゃねえか。ああ、・・・・あぁ?」
昨日の若い刑事、村上亨からの電話だった。キイチは、事務所内のソファーにダラリと座っていたが、いきなり立ち上がる。
びくっ。
なんですか!?どうしたんですか!?
「ああ、あーわかった。頼む。」
そう言うと、通話を終了する。
「キイチさん、何かあったんですか?」
僕が問うと、キイチさんは、ああと言って先程電話で伝えられた事を教えてくれた。
内容は、現在、容疑者として挙がっている候補だ。
浮上した容疑者は五人。
まず、婚約者の真嶋貴史(26)、研修医。
元恋人の高山宗志(29)、消防士。
殺される前日に会っていたと思われる、沢谷幸也(20)、ホスト。
美咲を熱心に口説いていたらしい、宮内圭(27)、ダンサー。
そして、一度ストーカー行為で勧告を受けた事のある、安渕修一(30)、フリーター。
当日の当人たちの行動は、現在、調査中で判ったらまた情報をくれるらしい。
刑事さんなのに、情報横流しなんじゃ?大丈夫なんですかね?
そんな心配をしていると、キイチはやっぱり悪人面で言い放つ。
「ま、気にするな。」
と、続いて・・・。
「ちょっと出てくるからな。」
「え?どちらに行かれるんですか?」
村上亨に捜査協力という形で、捜査に加えて貰えた・・・と。
で、マンションの監視カメラのチェックに村上亨と行くとの事。
「じゃ、留守番よろしくな。」
僕も行きますと言う前に、キイチさんに言われてしまった。
ぽつーんと、寂しく閉まるドアを見つめるしか出来なかった。




