発見した被害者。
「頚部圧迫による絞死とみて間違いなさそうだな。」
遺体の首を見ると、太いひも状の跡がくっきりと付いていた。
「これって、まさか。・・・殺された?」
キイチさんを見る。
「そうだ。撚り跡があるからな、ロープで絞められたか。」
そう呟くと、奥の窓に近寄って全体を見回して、窓を開けた。
そして、身を乗り出して外側をチェックしているようだ。
僕も探偵助手として、部屋中を観察した。
部屋内の様子は、こうだ。
まず、玄関から真直ぐ廊下を進んだ突き当りのフローリングの部屋。
廊下から入るには、扉を中へ押し開いて入る。
部屋は、十畳ほどの広さで、窓は一つ。
窓は建物の後ろに面していて、見えるのは雑木林。結構、木々が密集しているため、その先の見通しは悪い。
窓の外側には、落下防止のためか格子状の丈夫そうな手すりが付いていた。
一番端の手すりには、取り付ける際にでも付いたのか、擦れたような傷が付いていた。
窓から、下を覗くと三階の窓なく、二階の窓が見える。各階で、窓の位置が互い違いになっていたのだ。
部屋へ入って、右手側は何もない。壁だけ。
左側には、クロークインクローゼットへ入るための内開きの扉。
家具は一切ない。勿論、凶器と思われたロープもない。
あったのは、何も入っていない大きな紙袋と、美咲のバッグのみ。
クローゼットの中はなにもない。
その他の部屋はというと、まだ本格的に掃除をしていないためか、床に埃が薄らとあった。
そのため、この倒れていた部屋以外には出入りしていないと思われる。
その後、警察が到着し部屋は封鎖され、封鎖テープが張られる。
そして、家族が呼ばれ、被害者が美咲本人であることが確認された。
失踪したと思われた美咲は、その当日に死んでいたのだ。
美咲の母親は泣き崩れ、父親もそれを支えながら警察の質問に答える。
美咲の婚約者はというと、ついさっき連絡が取れ、急いで向かうとのこと。
僕とキイチさんも第一発見者という事で、事情聴取されることとなった。
・・・と、そこへ若い刑事が現れ、素っ頓狂な声を上げた。
「あっれっ。キーちゃん?キーちゃんじゃん!!」
ぶは。・・・イタイ。仕方ないじゃないですか!キーちゃんですよ?ぶは。
キイチさんは、不機嫌そうに無言でその若い刑事を見つめること数秒。
「・・・誰だ?」
・・・覚えてらっしゃらないんですか!?ヒドイ。キーちゃん(と呼んだら、怒られるので心の中だけで呼んでみた)。
「えーー!!ヒドイっ。俺、トール!村上亨。昔、近所に住んでたじゃん~。」
ご近所さまでしたか。・・・子供のキイチさんが想像出来ません。
「ああ、泣き虫トールか。」
「うわ。ちょっと、子供の時だけだって。」
思い出したらしいキイチと村上亨は、僕を完全にスルーして、昔話やら近況報告やらで盛り上がっていた。
あの。僕の事、忘れてますよ?
ああ、完全にスルーですね。僕、イジケます。




