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新たなる依頼者。

あの依頼者が現れなかった日から三日後の夕方。

「娘を探して下さい。」

事務所の応接セットのソファーで、キイチさんと僕の目の前に座るのは、別の新たな依頼者さん。

話しを聞いてみると、なんと、三日前の依頼者さんのお父さんだった。

えええええ。あの依頼者さん、失踪しちゃったんですか!?

オロオロと動揺する僕とは違って、キイチさんは淡々と依頼内容を聞き取る。

「で、三日前の午後二時頃に家を出てから戻ってないと。連絡もないんですね?」

依頼者は、守口孝造(59)。

守口製薬の社長だ。業界では、三指に入るほどの大手。

失踪した娘は、守口美咲(28)。

美咲は、三日前、つまりはこの事務所へ訪れる約束の日から連絡が取れない状況らしい。

携帯電話へ電話を掛けても、一向に通じない。

そういえば、僕が掛けた時も電波が届かない場所か・・・っていう、アナウンスが流れるのみでしたね。

「ええ、何か判らないかと思って、娘の部屋に入ったところ、此方の連絡先を書いたメモが残されていたんです。」

「なるほど。」

ふむふむ。と、頷くキイチさん。

「こちらにもお見えになってないです。連絡もさせて戴いたんですが、僕も連絡取れなかったんです。」

それから一切、連絡が来ていない。と、僕が説明する。

「で、お心当たりは?」

「お恥ずかしい話ですが、私は娘の交友関係を知らないんです。妻が知る限りで、連絡したんですが、誰も娘の行方は・・・。」

本当に恥じ入っているのか、俯き加減に気持ち声まで小さくなった。

「ああ、しかし婚約者には、連絡取ってみました。」

思い出したように顔を上げると、そう告げた。

美咲には婚約者がいて、来月に挙式を挙げるのだという。

「その婚約者は?」

「ええ、真嶋貴史といいまして、現在は研修医です。」

なんと、婚約者はお医者様の卵でした。

しかも、真嶋といえば、真嶋総合病院・・・の?

僕の顔は、正直ものです。疑問がそのまま出てしまいました。

「あ、ご存じの通り、真嶋総合病院の長男なんです。行く行くは、病院を継ぐ立場ですね。」

薬会社の社長令嬢と総合病院の跡取り。なんともキナ臭くはあるが・・・。

「真嶋君に連絡を入れたんですが、現在、研修だとかで取り次いで貰えなかったです。」

こちらも、連絡が付かなかった。と、依頼者は肩を落としながら言う。

「新居も既に決めて、来週に引っ越す予定だったんですが、私どもは引っ越しの後に招待するとかで・・・。」

新居の場所も判らない。との事。

引っ越しの後に、ご両親を招待してホームパーティをする話になっていたそう。

「しかし、部屋にはまだ何もないはずなんです。家具なども全て、来週に搬入の手続きしてますから。」

「そうですか。何もない部屋に三日も・・・って、事は、考えずらいと。」

キイチさんは、右手の人差指を軽く曲げて唇に当てながら、宙を睨むようにしていた。

キイチさん。今、考えないで下さいよ。

依頼を受けちゃわないと!!依頼ですよ?どれぐらいブリか・・・。

ああ涙が出そうです。僕。

とにもかくにも、こうして娘捜索の依頼を受けたのだった。

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