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被害者の友達。

マンションから帰ると、腰を落ち着けることなく美咲の友人との待ち合わせ場所へ向かった。

美咲の母親から、美咲の友人を聞き出して、連絡を取るとあっさりと会う事を了承してくれたのだ。

待ち合わせは、キイチさんには不似合いな可愛らしいカフェ。

うわぁ。キイチさん、浮いてます。確実に。

本人も解っているのか、居心地が悪そうにしている。

挨拶もそこそこに、さっそく本題に入る。

「美咲さんが何か悩みがあったとか、聞いてませんか?」

キイチさんが質問をすると、美咲の高校時代からの友人という二人は、顔を見合せってから一方が口を開いた。晃子さんだ。

「ええ、あの。ストーカーに・・・。直接に危害を加えられたって、訳じゃないみたいなんですけど。」

やっぱり、気持ちいいもんじゃないですからね。と、二人で顔を見合わせた。

「いつ頃から?」

「ええと・・、一か月くらい前に美咲が、また、つけられてるみたい・・って。」

これは、由利さん。

「以前にも、ストーカーに狙われたみたいで、その時には警察が間に入って一応、治まったんですけどね。同じ人かしら・・。」

そうですね。たぶん、安渕かと思いますよ?って、言えませんけどね。

「そうですか。で、ウチに相談を?」

「ええ。私が言ったんです。ほら、よくテレビとかでもやってるじゃないですか、ストーカー対探偵みたいな・・。」

ああ、特番でやってますね。僕も見ました。世間の探偵さんは、忙しいんだなって。

「ああ、それから、美咲さんと婚約者についてなんですが・・・」

と、キイチさんが言いかけていると、二人は揃って微妙な表情をした。

「何か問題でも?」

二人は、顔を見合わせて言いずらそうにしていたが、やがて口を開く。

「真嶋君とは・・・。美咲、本当は結婚したくなかったんじゃないかと・・。」

とても言いずらそうに、少し小声になる。

「何故です?総合病院の跡取りですよ?」

僕が言う。

「そうかも知れないけど・・、真嶋君は、その・・、遊び人っていうか・・。あんまり、落ちついていなくて。」

それに。と、少し間を置いてから再び、決心したように話しだす。

「美咲、まだ高山君の事、忘れられないんじゃないかと思うんです。」

それを受けて、もう一方が。

「真嶋君、それを判っていて、態とあんなマンション・・・高山君の消防署の目の前・・に。」

あれ?でも、高山さんを振ったのは美咲さんですよね?と、またしても顔に出ていたらしい、僕。

「あ、何と言うか、政略結婚みたいな・・親同士が決めてしまって、逆らえなかったんじゃないかと。あ、美咲が不満とか言ってたわけじゃないですよ。」

はたから見ていて、そう見えていたらしい。

しかも、政略結婚って。総合病院と大手製薬会社。

僕には、縁のない世界ですね。

と、想像すら出来ないでいる僕の隣からすかさず、キイチさんが声をあげる。

「高山とは、昨年に別れて以降、会っていたんですかね?」

「さぁ・・。そこまでは、判りません。けど、高山君、美咲に別れを切り出されたときに、大分落ち込んじゃってたけど・・・。」

「高山さんとは、面識がお有りで?」

「ええ。そもそも、二人が知り合った切っ掛けが合コンですので。その時に、私たちも居たんです。」

高山と美咲はお似合いで、周りの友達はいつ二人が結婚してもおかしくないと話していたらしい。

それから、高山と美咲の思い出話をいくつか聞かせてくれた。

そうして、美咲の友人と別れて、店を後にする。


事務所に着くなり、キイチさんの携帯電話が着信を知らせてきた。

「ああ、あれか。・・・やっぱり、そうか。わかった、手間取らせたな。」

電話を切ると、キイチさんはその内容を聞かせてくれた。相手は、勿論、村上亨だ。

「宮内が、マンションの住人とC棟に入って行く映像が確認されたと。殺されたと思われる当日、二十二時の映像だ。」

あ!前にキイチさんが気になるって言ってたアレですね?

「で、緊急に帰国要請してるんだとさ。」

「ああ、そういえば、安渕も言ってましたね。」

いよいよ、宮内、怪しいです。というか、決まりじゃないですか?

当日に現場マンション内に居たんですから!!しかも、死亡推定時刻、十八日の二十一時から十九日深夜にピッタリです!

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