素敵なご縁なので、頑張りますにゃ。
佐和子が働くアパレルショップには、様々なお客様が訪れる。
挨拶しても無視されることもあれば、「みてるだけなんで」と冷たくされることも多々である。
そんな中モンスターが現れた。
通称「お節介おばば」だ。
ほぼ毎日すっぴん、ラフファッションで現れては、店長や先輩にお喋りを持ちかけ、時には休憩時間を占拠したりする。
そんな「お節介おばば」であるが、新人の佐和子にも容赦なく噛み付いてきた。
「あんた、そのトップスとスカート、合ってない。」
「髪型がダサい。」
「化粧も下手。」
立て続けにグチグチと言われ佐和子は内心カチンときたが、買わずとも常連である以上逃げられない壁だ。
同じ土俵に立ちたくない。
「あ、本当ですか?ご指導ありがとうございます!」
にっこり笑って心で毒づいた。
「毎日AIでファンションショーしてから来てるんだよ!」
「部屋着満載すっぴんの、あんたから言われたくないわ!」
でもそんな愚痴は休憩時間で心のゴミ箱へポイした。
代わりに誓った。
「物理や口喧嘩で対戦したくないな。」
「売上で黙らせてやる。」
「今に見てろよ…。」
佐和子は俄然やる気になっていった。
そんな中お客様が立て続けに来店された。
「いらっしゃいませ。」
佐和子は落ち着いたトーンで語りかける。
お客様はワンピース類ばかり手に取っている様子だ。
「このワンピース可愛いですよね!」
そっと横から話しかけた。
「…ええ、まあ、はい。」
警戒心70%というところか?
「あちらには冷感素材のワンピースもございますよ。」
「秋先でもまだ暑かったりしますのでお得です!」
にっこり笑顔で案内する。
そして途中からお客様が心を開き始めた。
「このワンピ、いいな。」
ぽつりと漏らす声。手に取って姿見であてがってみる。
「とてもお似合いです!」
本心から思ったのでそのまま伝えた。
「特にネイビーのVネックが大人ラフな印象でお顔もスッキリ見えますね!」
お客様はブラックも手に取り、姿見て自分に合わせて見比べる。
「…黒とも悩んでて。」
「…どうですかね?」
「ブラックもお似合いです。ネックレス1つで余所行きのものにもなれますし、先ほどのネイビーよりもスタイリッシュですね!」
「そうね…。うん。」
「じゃあ…両方頂くわ。」
「わかりました!ありがとうございます!」
レジを打つ時世間話をしてみた。
「このお洋服でどこかお出かけのご予定でもあられるんですか?」
「うーん今のところは無いのよ。でもおしゃれする時は使ってみたいなって。」
「素敵ですね!」
会計が終わり店先までお持ちする中、
「またこちらを着られてご来店お待ちしております!」
「バッチリ似合っていらっしゃったので、楽しみにしております!」
「…ありがと。」
はじめてふ、と微笑まれた。
この瞬間がいつも愛おしい。
その様子を終始見ていた「お節介おばば」が、店長にこう漏らしたそうだ。
「あの子、名前なんて言うの?」
「冨岡さんですよ!」
「とみ…おぼえきらんわ。」
「佐和子ちゃん!で覚えてあげてください!」
「佐和子ちゃん、ね。」
「あの子、頑張り屋さんね…。」
そうポツリと漏らしたそうだ。
店長からの又聞きであるが、モンスターの心も打破できるにはやはり自己鍛錬と仕事へのひたむきな姿勢だ。
明日も必ず爪痕を残そう。売上という名の。
「冨岡さんの接客いいわ〜。」
「うんうん。」
「えへへ。まだまだです。」
スタッフのみの時間で雑談していたら、店長や先輩が褒めてくれた。
「来月あたり、歓迎会しなきゃね。」
「えー!いいんですか!やったあ!!」
「飲んだらどうなるの?気になる〜。」
「猫になりますにゃ!」
「あはは!!なんか想像できる(笑)」
はじめての業界で新人ながら売上貢献も上々だ。
レジ締めなどの作業も覚えてきた。
次の出勤はいよいよ独り立ちだ。
歓迎会など今までの職場では一度も企画されたことがなかったので、「歓迎されるムード」に大きな安らぎを覚えた。
良い職場に巡りあえた。
素敵なご縁がありました。




