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ハッピー・ロスタイム・リスト  作者: 中学生


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1/1

夜の海

自分の中の最高傑作!

自信を持って言える。

小説が完成しました。

ぜひ、読んでください。


Ring the bells that still can ring.

Forget your perfect offering.

There is a crack in everything.

That's how the light gets in.

全てにひび割れがある。

それが光が入ってくる場所だ。

レナード・コーエンの楽曲「Anthem」の歌詞より

 

 夜の海は、思っていたよりもずっと静かだった。

 もっと荒れているものだと思っていたけれど、実際は規則正しい。ざざぁ、ざざぁと呼吸みたいに、同じ感覚で、寄せては引く。

 足元の砂が、じわりと沈む。

 波が引くごとに、体の重さごともっていかれるような感覚があった。その一定さが、かえって落ち着かなかった。

 隣で、ぱち、と小さな音がした。線香花火が弾ける「ねえ、」

 火の先を見つめたまま、彼女が言う。

「九十八点ってさ、失敗だと思う?」

 いきなり何を言い出すんだ、と思った。

 けど、考えるより先に口が動いていた。

「……普通は、」

 少し間を置いてから、言い直す。

「失敗だろ」

「普通は、ね」

 彼女はほんの少しだけど笑った、そんな気がした。

 暗くて表情は見えない。

 けれど、火に照らされた横顔だけが、妙にくっきりとそこにあった。

 ぱち、と音がして、火の玉が落ちる。

「じゃあさ」

 彼女は続ける。

「もし、それがわざとだったら」

 意味がわからなかった。

 わざと間違える理由なんて、あるわけない。

「満点、取れるのに?」

満点ってさ、終わりじゃない?」

「……は?」

「だって、もう上がないでしょ?」

 さらっと言う。

 当たり前のことみたいに。

 その言葉だけが、妙に残った。

 終わり。

 そんな風に考えたことは今までなかったから。

 ぱち、と火が弾ける。

「九十八点ならさ」

 彼女は言う。

「あと二点、あるでしょ」

 その言い方が、やけに耳に残った。

「その二点、どこにあると思う?」

 答えられなかった。答える気にも、ならなかった。

 そんなの、ただの間違いだ。ケアレスミスとか、そういうものだろう。

 ーーそう思うはずなのに。

 なぜか、その「二点」が頭から離れなかった。

 風が吹いて、火が大きく揺れる。

 思わず目を細める。

 その瞬間、彼女の顔が少しだけ見えた。

 笑っているようにも、どこか悲しそうで泣きそうにも見えた。

「ねぇ」

 少しだけ間があってから。

「普通ってさ」

 波の音に紛れそうな声で。

「誰にとっての普通なんだろうね。」

 波は、それでも同じリズムで繰り返している。

 何も変わっていないはずなのに、

 同じ音には聞こえなかった。

 その問いに対する答えは出なかった。


 帰りのタクシーのなかで彼女はほとんど喋らなかった。

 窓の外に流れる街の光を、ただ眺めている。

 信号でタクシーが止まる。

 コンビニあかりがやけに明るく感じた。

 制服のままの高校生が二人、笑いながらコンビニから出てきた。

 声は聞こえない。

 でも、それがどうでもいい話をしていて、それが彼らにとっての「普通」ということだけは分かった。

 タクシーが動き出す。

 スーツ姿の男が、スマホを見たまま立ち止まっている。誰もこっちを見ていない。

 当たり前だ。

 その全部が、当たり前の景色だった。

 ーーついこの前まで、俺もその中にいたはずなのに。

「……ねぇ」

 気づけば、声をかけていた。

 彼女は振り向かない。

「さっきのさ」

 言葉が続かない。

 結局、何も出てこなかった。

「何でもない」

 窓に映った自分の顔が、少しだけ見慣れなかった。

「ねぇ」

 そう呼ぶしかなかった。

 別に名前を知らなかったわけじゃない。でも、呼ぶタイミングがなかった。

 呼んでしまったら、何かが決まってしまう気がした。

 彼女も同じで俺の名前を呼ばない。

 それが少しだけ、楽だった。

 決まっていない関係。

 どこにも属していない感じ。

 波の音みたいに規則的で、続いているだけの時間。

 それが今の僕にはちょうど良かった。

ここから先は余命宣告と出会いを書いていきます。ここから先も読んでくれると嬉しいです。

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