へっぽこ劇団
続きです。
めっちゃかかった。
今日はカレーですね。
…………
だずげで!だずげで!!!!!!!!!!!
…!止まった!!やった!!!!!!!
終わった!!!!
ニノマエは我を忘れて土を掘った。彼が外に出たとき浴びた日の光の眩しさ、酸素のこの世のものとは思えないほどの爽やかな喉越しに彼は感動し、涙した。そして、笑った。
「ははははははっあはっははっはぁ!!!」
………………………
アマンによる拷問じみた移送が完了して、森羅万象に感謝したあと、冷静になって辺りを見回すとそこはどうやら水田のど真ん中だった。と言っても今は水をひかれていないみたいだが。
ここは農村のようだ。遠くの方に家々が立ち並んでいるのが見えた。穏やかな、いつかはこういうところで余生を過ごせたらなと思わせるような風情のある村だった。
いろいろあったが、いよいよ新しい世界での新しい冒険が始まるのだ。そして俺の新しい人生の始まりでもある。自然と胸が高鳴るのを感じた。これからはいろんなことをたくさんして、理想の自分を作っていくのだ。ワクワク。
地面から這い出て村に向かうと人影が1つあった。
村人だろうか。声をかけてみよう。
「すみません!」
「…はい?」
人影は勝ち気そうな見た目の中年女性だった。人間だ。アマンは魔族だったから魔界の方へ送られたと思っていたが人間界に来たのだろうか?見た目の割になんとテンションの低いことか。だが彼女なりに目をかっぴらいて驚いているように見える。
「何処か泊まれるところを知りませんか?旅をしているのですが、いかんせんこのあたりのことについて詳しくなくて…」
「お…いえ、旅のお方、この村には宿はありません。この村にいるのは私と私の家族だけです。北へ4日ほど歩きますとここより大きい街がありますが、アタクシはこの村からでたことがないもので…」
「そうなんですね…」
変わった村だ。そこそこ広く見えるのに住んでいるのが家族だけなんて。さてしかし、流石に見ず知らずの人の家に止まらせて貰うほど大胆にはなれない。頑張って歩くか…
「お役に立てず、すみません」
「いえいえ…
……いやしかしこの村にはなかなか規模の大きい立派な田んぼが広がっていますね。ご家族だけでは管理はさぞ大変ではないですか?」
「いえ、アタクシの家は家族が多いので…」
どんだけいるんだろうか。俺のじいちゃんばあちゃんの世代は子供は4,5人か多ければ10人以上なんてこともあったそうだがこの田んぼを見る限りそれでも足りなそうな広さだ。親戚も混ざってるタイプの家庭かな。サマーウォーズみたいな。
「…立ち話もなんですし少しそこのベンチでお話しでもどうです?」
「あぁ!喜んで」
気を使ってもらって申し訳ないと思いつつベンチに座ると辺り一面に広がる広大な田んぼをを見ることができた。なかなか自然豊かでいい眺めだ。向かいから吹く風はどこか暖かくて気分が和らぐ。
「良い景色ですね!」
「それは良かったです」
やはり彼女の声からは覇気を感じない。
ロボットを相手にしているみたいだ。
少し話題を振ってみよう。ちょっと勢いがつくかも。
「俺の故郷もこれほど立派じゃありませんが田んぼと森の豊かな場所でした。住んでいた頃は正直飽き飽きしていて退屈なところだと思っていましたが、しばらく離れてみるとどうにもその景色が恋しくなってしまって……またこの雰囲気を感じれるとは思っていなかったから嬉しいです。」
「そう…ですか…」
あまり反応は良くなかったようだ。
なんで俺急に自分語りとかしたんだろ。
「はい…」
「旅のお方。つかぬことをお聞きしますが、今故郷のご家族とはどういう付き合いで?」
お、あちらから話題をくれた。嬉しい。
「あぁ、それが…実は少し厄介な状況でして、おそらく二度と会うことは許されないだろうという感じです。あ、至って健康に生きてますよ!ただ少し込み入った事情がありまして…」
「あぁそんな話づらいことなのでしたら無理に話していただかなくても結構です。くだらないことをお聞きしましたね」
「いいえそんな…」
あぁ、うまいこと答えられなかった。
この世界の人に俺の境遇をどう説明したもんかは考えものだ。旅人っていうのもなんか戦争中よこの世界だとおかしそうだし家族とか故郷についてもどう言えばいいか…
考えとかなきゃな。
「というのもアタクシ、先程も言いました通りこのへんぴな農村に家族だけで住んでいるのですが…
…今まで一度として家族以外の方と関わりあいになったことがないのですよ。ですから外の人の家族はどのようなものなのか気になってしまいました」
これは本当に驚いた。ここにずっといるにしても家族以外の誰とも今まで関わりがなかったなんて不思議だ。おもしろい。
「そうなんですか!?それはまた特殊な…いやしかしその割には随分と丁寧な口調で話されますね。」
「……慣れているのです。母がアタクシに小さい頃からあらゆる作法を教えたのです。万が一の時のためにと、そして将来は立派な女となれるようにと懸命に。」
家族の話となると口数が増えてきた。先程より声に力が入っている気がする。
「聡明なお母様でいらしたんですね。」
「流石にもう歳で今は見る影もございませんが、そうですね…周囲に話せばまず間違いなく自慢になるような母であったのかもしれませんね。」
「ちがいないですね」
彼女は母が好きなんだろう。
家族を思う人というのは素敵だ。
「ありがとうございます」
「他のご家族は今お仕事中ですか?」
………?気のせいかもしれないが、彼女の顔が一瞬かなり険しくなったような気がした
「………アタクシ家族が59人いたんです。母が10人おりまして他全員がその子供でした。父は1人です。ですが父には一度も会ったことはございません。」
いた、という言い方に少し違和感を覚える。
今はどうしているのだろう。
というか少し話がズレた気がする。
「そうなんですね…そんなに大所帯だと大変でしょう」
しかしまぁめちゃくちゃな一夫多妻だ。ここの人間はそれが普通なのだろうか?戦争中だしどんどん子供を作らせるような政策でも出していたのだろうか。
「兄弟姉妹とはとても仲が良かったです。いっしょに農作業や裁縫や炊事を終わらせたあとにはいつも遊んでいました。母たちもそれを微笑ましい顔で見守っていたのを覚えています。本当に素敵な毎日で、夢みたいな毎日でした。」
「それはまた…うらやましい。」
「旅のお方は兄弟はいらっしゃらなかったので?」
「俺は1人っ子でして。」
「………それはそれは」
「…………?」
彼女の背後の奥、村の路端に誰か立っている。がすぐ引っ込んでしまった。彼女の兄弟かいとこだろうか?だが見た感じで言えばかなり子供に見えた。…あいや、この世界は寿命が少し全体的に多いんだったか。年齢的にはそこそこ大人なのか。
ややっこいな。
「どうかされましたか?」
「あぁいや。今後ろに子供がいたような気がしまして。ご家族ですか?」
「あぁそれは甥ですね。」
「なるほど」
「照れ屋な子ですから、すみませんね。」
「いいえ、子供は大抵そんなものでしょう」
……甥?
「ん…あれ?兄妹ではないのですか?」
「あの子はアタクシの妹と弟の子供で4男です」
「あ、それは……なるほど…」
どうやら思ったより複雑な事情があるようだ。
あまり深くは聞かないようにしよう。
「「……………」」
しばらく沈黙が流れた。
しばらくして、おそるおそる彼女が口を開いた。
「旅の、お方…」
「なんです?」
「家族とは…なんだと思います?」
「家族…」
また難しい質問だ。
「そうですね…俺の今までの人生で得たことから言うなら、
明確な立場…いわゆる母とか子とか父ですね。
それがあり、なおかつ
その立場を完璧に演じられる2人以上の集まり…でしょうか。
………ちょっと分かりづらいですかね?」
本心プラスちょっとだけそれっぽい感じに言ってみた。どうだろうか?
「いえ…ニュアンスは伝わりました。例えるなら、
家族という劇の題目を、2人以上の上手な演者が演じている状態ということでしょうか。
…その言い方からするとあまりいいものとは思っていらっしゃらないのかしら?どこも家族同士の繋がりはあくまで演技の中だけの偽物ということですか?」
「いえ、あくまでも演技は家族を結ぶための便利な道具に過ぎません。
わざわざ演技してまで繋がりたいと思う心が、
その集団を家族たらしめるのです。
家族を思うからこその演技だと俺は思います。」
突然声を張り上げて彼女は甲高く笑った。
こんなこと思うのもあれだが、正直不気味と言わざる負えなかった。
「どう、されましたか…?」
「い、いやすみません…おかしくて…」
あまり上手に言えてなかっただろうか。
すごく傷ついたかもしれない。
「す、すみません。あはは…あまりうまいこと喋れるたちではなくて…」
そういったのも束の間、
彼女は堰をを切ったように話しだした。
「私たちの家族もいわば演者の集まり、みたいなものです。でも私たちの心の中に繋がりたいなんて思いはないです。あるのは恐怖と狂気だけ。生きるために、とにかく今日を生き抜くために、
みんな演じてきました。思ったのですが子とは厄介なものですよね。仮に親に気持ちがなくても子は生物として親を思わずには居られないのですから。生まれながらに演者として育つしかない哀れな存在。その親子を無理やりくっつけようとするとどうなると思いますか?私たちはその答えを知っています。どうしょうもなく残酷なこの問の答えを知っています。親子はお互いに対する想いの違いに苦しみ最終的には憎しみ合うのです。そしてさらに残酷なことにそれを発露させることができなければ無気力になりもはや人としての体をなさなくなります。奴らはそれを見て楽しみます。
奴らが憎い。家族が憎いすべて憎い。やっと言えた!!これがわた」
サクッ
突然のことだった。
隣の彼女の首が飛んだ。
人の首が飛ぶのをみたのはこれが初めてだ。
「は?」
俺は啞然としていた。
血でぬかるみ始めた地面に生首が音を立てて落ちた。生首は笑って言った。
「これが私!これが本当の私!アハハハハハハ」
村の家の影、窓、扉あらゆるところから人が出てきた。やる気がなさそうに。しかし血相変えてる風にしてるようだった。
外見20歳ほどの女が言った。
「お姉ちゃぁぁん」
外見50代ほどの男が言った。
「サラが旅人に殺されたぞぉ」
およそ1000は優に超えるであろう群衆はこう言った。
「償わせてやる」
「逃がすな」
「殺してやる」
「味あわせてやる」
「おばさんの苦しみを」
「大好きなひいおばあちゃんが」
「えーん」
「ひどい」
「なんでこんな事するの」
「許さない」
「返せ」
「悲しいよー」
「ママー」
「あー」
全員が何かしらの農具や刃物を持っている。
殺意を持ってこちらに向かってくる。
しかしそいつらには家族を殺されたとは思えないほど全員に覇気がなかった。恨みも悲しみもまるで感じなかった。
まるで、得体のしれない化物のようだった。
俺は、とんでもないところに来てしまったらしい。
読んでくださりありがとうございました!!
なんか知らないけど売れっ子になってウハウハになりてぇものですね。




