将来の不安
続きです。
今朝は起きたら手が氷のように冷え切っていました。畜生。
「帰れない…?
なんで、お前にそんな事がわかる?」
「お前は……
……そういえば名前を聞いてなかったな。なんていうんだ?」
「一義燬犖始だ。」
「ニノマエギャラクシー…」
一が苗字で名前が義燬犖始だ。
この名前は俺の親父がつけたらしい。親父は俺が物心ついた時にはすでに居なかった。なんで居なかったかは分からない。母さんが言うには、宇宙のようにでっかい男になってほしいのととにかく良い意味の漢字をいっぱい使いたかったらしい。
良い人ではあるんだろうが同時にマトモではないことも分かる。
「分かったニノマエギャラクシー」
久々のフルネームは少し恥ずかしいな…
「長いからニノマエとでも呼んでくれ。元の世界では皆そうだった。」
「分かったニノマエ。では先程のつづきだ。
ニノマエ、推測するにお前は此処に来る前
゛トラック ゛という乗り物に轢かれたのでは?」
「………違う…がしかし…」
トラック。この単語はあの忌まわしい現象を想起させる。あの現象が、俺がこの世界に来ることになったのと関連があるのか?
「何?違うのか」
「俺は、トラックを操縦していた側だ。
そして…人を轢いたとして裁判にかけられた。
その直後でこの世界に来た。」
「なに?逆だな…今までのパターンと」
「何?」
「今までのパターンと逆なんだ」
「いや違う。今までのパターンと言ったか?それはつまり…」
「あぁ。過去に人間の捕虜からの情報によれば、お前以外にも似たような境遇の人間がここ最近増えているらしい。そしてここと違う別世界…異世界から来た連中は口をそろえてこう言うらしい。
゛トラックに轢かれて目が覚めたらこの世界にいた ゛と。」
「……なんてことだ」
俺以外にもここに来ている人がいる。驚きの事実だ。それもそうだが、なんで俺は違うんだ?
ココアを飲みほす。
「だからお前もそうだと思っていたが…エラーでも起こしたのか?」
「何の話だ?」
エラー。何故か引っかかる単語だ。
「いや、何でもない。こっちの話だ。
ココア、おかわり持ってくるよ。」
「ありがとう」
アマンがココアを入れに行く。
…分かったようで分からないことだらけだ。何故。俺はこの世界に来た。あの現象は…?
まだそんなに時間は経っていない…はずだが
いろいろ起こりすぎて疲れた。
「お待たせ」
「ありがとう」
ココアを一口飲む。少しヌルい。がそれがまたいい。
「…人を轢いたとして裁判にかけられたといったが」
「あぁ」
「俺は轢いてない」
「冤罪ということか?」
「そうなんだが…その奇妙なんだ」
「というと?」
「俺はトラックを運転している途中で、人が横切ろうとしているのに気がついた。そのときしっかりと止まったんだが、そいつがトラックの前に来た瞬間トラックとそいつの間に何か衝撃が走って…それでそいつは死んでしまった。」
「……ほぅ」
「誰にも信じてもらえなかった。こんな馬鹿みたいな話。俺も少し自分を疑った。だがこの世界に来て分かった。あの現象とこの世界の何かは、確実に関連している。」
「…そう考えるのが妥当だな」
「そういえば聞きたいことがある」
「なんだ」
「結局俺がこの世界から絶対に帰れないというのはどういうことだ?」
「それは…今ニノマエが気になっていたこの世界と例の現象の関係にも大きく関わる話になってくる。
まぁニノマエが轢かれた側と仮定しての話だから分からない部分もあるが…
今お前が言った現象はとある魔族の特異魔術によるものだ。間違いなく。
だが今現在、この世界から元の世界へと送り返す魔術は存在しない。だからニノマエ、お前は元の世界には帰れない」
魔術。魔術だと?…いやそうなると疑問がでる。
「なんでそいつの魔術だとわかる?俺は他の奴らととは違う感じでやって来たんだぞ」
「現在確認されている特異魔術の中でそういった性能持ちは奴しかいないからだ。分からんがおそらく誤作動の類を起こしたのだろう」
「なぜ魔族が人間を呼ぶ?」
自然と口が早くなる。意識してないのに少し語気が強まった気がする。焦燥が仕草と言動から溢れ出す。俺は焦っている。
「 ゛人間界に住む人間側の魔族 ゛だからだ。」
アマンは冷静だった。はじめ会った彼女なら俺は結構キレられてただろう。
「そんな奴がいるのか…なぜそんなことを?」
質問が止まらない。少しでも可能性を探るため、なのかは自分でも分からない。
「異世界から来た人間には特殊な異能が備わるらしい。利用して人間側の戦力を増大しようとしているのだ。実際、戦いの際少し厄介な目に遭うこともあったそうだ。腹立たしいことにな…」
「それは…大変だな。
「そいつに頼めば…なんとかいかないのか?」
「奴は人間側の最高戦力の1つとして厳重に守られているらしい。それにあいつの特異魔術はあっちの世界からこの世界へ生物を転移、または転生させるだけのものだから、逆はできない。」
「そいつと逆の魔術を持って生まれる奴はこの先出ないのか?」
「いるだろう。だがそういった世の理を捻じ曲げるような特異魔術の使い手はあいつが歴史上はじめてだ。期待は薄い。」
「じゃあ……」
いや、これ以上は無意味か。
「…帰れないんだな、本当に」
「いやまだ分か………ここで変に希望を持たせても良いことはないな。
……来たパターンが他と違うとはいえ、こちらの世界に来てしまった以上は…帰れる可能性は、低い。」
「そう、か」
「……」
「ありがとう。すっぱり言ってくれて。」
元の世界には、どうやっても帰れないらしい。なんてことだ。向こうでやることやらなければならないことがまだたくさん、たくさんあったのに…
「すまない!」
アマンが床にデコを当て、手をついた。
床が少しへこんでいる。
「どうした?!」
俺は驚いた。土下座だ。何故彼女が謝る?
「これは魔族である我々の責任だ。こちらの事情に予期せぬ形でお前を巻き込んでしまった。大変申し訳ない。」
なんてことだ。すごくちゃんとしている良い子だ。見た目的にかなり若いはずだ。同じ種族ってだけで何も関係ないはずなのに。
この俺に土下座をしている。
「顔を上げてくれ。アマン。」
「……」
アマンが顔を上げた。何とも凛々しい顔立ちだ。
責任感の強さを感じさせられる。素晴らしい。
「良いんだ。帰れないなら帰れないで。そりゃ、正直かなりショックなところもあるけどさ、
やっぱ前を向かなきゃな。幸せにはなれないし。」
「………ニノマエ」
そうだ。前を向くんだ。母さんも先生も言っていた。ずっと前を向いて、進んでいれば、走っていれば、それだけで人生は幸せなものになる。
「分かった。
この世界から出すとなると難しいが、
それ以外のことでならできる限り協力しよう。
と言っても、私にできることは限られているがな。」
「え、本当か?ありがたいけど、
本当になんでそこまで…」
「さっきも言ったが、お前のその状況が我々魔族のせいである以上、私は他人事としてこの事態を軽く受け流してはいけないと思っている。
あくまで私の敵は ゛魔族 ゛に仇なす者ものだ。
それら以外と無意味に争う気はない。」
「…かっこいいな」
素直にそう思った。騎士道とか言うやつだろうか。自分のなかに確かな軸を持って物事を判断している。そしてその軸に基づいた決定には迷いがない。゛強い人 ゛だ。俺の憧れ。
「き、急に小っ恥ずかしいことを…
びっくりした…」
「わりぃ」
「「はははっ」」
お互い露骨な照れ隠しの笑いだった。
「…さて、結局のところどうする?
言っておくが、あまり住みよい世界ではないと思う。どこへ行くにも苦労は絶えないと思うぞ。
特にこの魔界では。」
「そうだなぁ」
「別にここに住んだって良い。暇だが、安心安全だ。」
安心、か。安心で苦のない楽しい日常。
そういう生き方もありか。
話を聞くに外の世界は魔族と人間とで蔑み合っているらしい。そんな渦中にいたって辛いだけかもしれない。
正直いろいろあって人は苦手だ。
彼女となら、ストレスフリーなスローライフを送れるかもしれない。
いや、コレは前向きな考え方なのか?
辛いことから目を背けてただ安心を享受するというのは、酷く怠惰なモノのようにも感じる
わ、分からない…どうしよう
「まぁまだ時間は幾らでもあるんだ。存分に悩むといい。私はそろそろ瞑想の時間だ。失礼するよ」
アマンはそう言うと外へ出て行った。
と思ったら帰ってきて
「あ、用があったら呼んでくれ!近くにいるから!」
とそれだけ伝えてまた出ていった。
「……なんか姉ちゃんみたい」
俺に姉はいない。だが何となく今のやりとりがぽいなぁと思った。
…考えなきゃな。これからどうするか。
俺はどうするべきだ?ここから出て、見たことのない世界を冒険するか?でも俺そんなにそういうの興味ない。それに俺にそういった生活があっているとも考えられない。じゃあここでアマンといっしょにのんびり暮らすか?楽をしすぎるってなんか気が引けるんだよな昔から。でもこの状況なら楽して困ることもないし、わざわざ挑戦とか、冒険とか苦しいことする必要もない…のか?
ここで、安心安全な暮らしを送れるならそれで…いいか。でもその先って何が残るんだ?俺が死ぬとき、俺の中に残っているのは何なんだ?
最期俺は幸せになれているのかな?
幸せってなんだ?
いやそもそも………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………
安心安全な暮らし。刺激的な暮らし。
どっちにすれば…どっち
「はぁ…はぁ…はぁ…」
分からない。怖い。
ガチャ。玄関の扉が開く
「どうだ?少しはまとまったか?」
「まだ、あまり具体的には…」
「なんだその具体的でない返答は」
「…いろいろ考え込んでてさ」
「そうか……なぁ」
「なんだ?」
「私と、殺し合い、してくれないか?
あ、もちろんほんとに殺したりしないぞ!
模擬だ模擬!
………でも…本気で来ても…良いぞ?」
急に意味が分からない。……いや本当になんだ?
さっきまであんなにしみったれた話をしていたのに。あんなに辛い気分になっていたのに、それが吹っ飛んでしまった。そんでちゃんとした普通の良い子だったのに。なんか、さっきと顔が変わっている。何かを堪えているような…でもなんか嬉しそうな…
「…なんでその内容でモジモジするんだ?」
「何って、おまえっ!…いやそこの価値観もちょっと違うのか。異世界だもんなぁ。こっちでも分からない人間いるくらいらしいし…」
「え…!そう、か。ごめん。価値観の相違だな。
この世界の魔族でいう殺し合いの立ち位置がどこにあるのか分からなくて…」
アマンの顔が少し緩んだ。変な感じに。
「いや、なら良いんだ。うん、それで良いんだ。
深く考える必要のないことだ。まぁとにかくだ。
……やって、くれるのか?くれないのか?」
「…なんか今までとなんか雰囲気違くないか?」
「やるのか!!?やらないのか!!!?
さっさと答えてくれねぇかなぁ!!!」
おぉ近い唾が飛んでる。怖っ。
「やる!!やるよ…やるったら!!!」
「そうか!本当か!!ヘヘっ。そうかぁ。
じゃあ、外行こう!」
どうしたんだ急に。最初に戻ったようだ。あの気高い強い女性はどこへ消えた。何か様子がおかしい。
そう思うも束の間、俺は強引に外へ連れ出された。
「じ、じゃあ、始めるぞ!!」
そう言った途端アマンの表情が消えた。最初にであったあのときのアマンだ。彼女は冷静に、冷徹に、俺を仕留めに来る。模擬と言っていたがソレを感じさせない圧迫感があった。
まだ拭いきれない不安やら困惑はあるが今は考えてられない。
いや、むしろ考えずにいられる。
アマンの殺意で身体は緊張状態だが
精神はリラックスしていた。
全て忘れて、これに没頭しよう。今は
読んでくれてありがとう御座います。
話書くのってめちゃくちゃ難しいと思いました。




