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小人は人を責め、君子は己を責める

2話目です。引き続き見てくださってる方ありがとう御座います!



目が覚めた。知らない天井だ。どこだ?床で寝そべっていたようだ。身体を起こし辺りを見回す。木造の小屋のようだ。雰囲気がとても暖かく心地良い。一人暮らしはこういう家に住みたかったが、自分の収入だと独房みたいなボロマンションじゃないと住めなかった。悲しい思い出だ。


「なんだその腑抜けヅラは」


「うるせぇころ…」


こいつは……


「ん?ころ?なんだって?おいカス」


俺を殺したやつだ。……殺されたよな?俺。

指と腹と頭が元通りになってる?

色々と状況が掴めない。


「おい!」


押し倒された。


「ころ?なんだ?あ?なんて言おうとした?なめてんじゃねぇぞ!!」


唾がすごい飛んできて不快だ。


「知ってどうすんだよ馬鹿」


「お前ぇ!!」


拳が飛んできた。もろに顔面に入った。鼻血が止まらない。鼻折れたんじゃないのか。寝起きで何でこんな目に。


「チッまぁいい。どうでもいい。家畜以下のゴミのいうことなんて微塵も興味ない。」


なんだこいつ。むかつくがコイツには何しても勝てない。悔しいがとりあえず流れに身を任せつつ状況を把握していこう。


「ばぶび。ばばびびょうびょうぼづがべでびばびんばば、びぼびぼぎびべぼびびば?」


「あ?何言ってんだお前。」


お前がアホみたいに鼻血出させるからだ馬鹿。

鼻を拭い取りもう一度話す。


「わるい。まだ状況を掴めていないんだがいろいろ聞いてもいいか?」


「最初からハキハキしゃべれよカス」


殺す。


「まぁ良い。これから私とお前は長い付き合いになる。今のうちに聞きたいことは聞くのがいい。」


「それがどういうことかは分からんがまぁそれも含めて聞くとしよう。

じゃあまず1つ目だ。

ここはどこだ。」


「ここは腐敗の森、魔界と人間界の境界付近にある人魔ともに不可侵の森林だ。今お前がいるのはその境界付近に位置する監視小屋。人間的にも知ってて当たり前の常識だな。人間界に学校はなかったっけか?低知能が。」


丁寧に説明してると見せかけて煽られていた。腹が立つ。魔界とか人間界とかもなんだか分からん。がニュアンスは分かったし今はどうでもいい。


「オーケー。じゃあ次だ。

お前は何者だ。名前は?」


「お前みたいな越境未遂者を排除する監視役兼処刑人だ。

名前はアマン。゛魔族 ゛のアマンだ。」


「分かったアマン。次だ。

俺の腹を串刺したあれはなんだ?」


「あれは私にしか扱えない腐敗物の操作魔術だ。

土は枯れ葉と微生物の死骸の集まりだからな。土を操り土の密度を上げ固くし、大きなトゲを地面から生成した。」


この世界には魔術があるのか。地面に枯れ葉が1枚も落ちていなかったのはこれに関係があるのだろう。


「何故お前しか扱えない?」


「お前じゃないアマンだ!ゴミが!……魔術は奥が深い。魔道具により基礎的な魔術の発動は簡易化できるようになったが個人個人が持つ特異魔術…そいつだけにしか使えない魔術の再現はできない」


「分かったアマン。次だ」


正直これが一番気になっている。


「何故俺は生きている?」


「お前は死んでる。ゾンビにしたんだ。」


「は?」


「ゾンビは分かるな?動く死体だ。ただ、本来は操るのに神経を結構使うし、すぐ腐るからそこまでは持たない。ゾンビ化は使い道のない魔術だった。だか私たちはその魔力量の多さから魔術の多重行使が可能だ。さらに、我らが新魔王様による第二魔術革命のおかげであらかじめ魔力を魔道具にこめるだけで、魔道具を通して魔術の自動出力が可能なり、より効率的かつ自由な魔術の行使ができるようになったのだ。」


「ソレってつまり?」


「腐敗物操作魔術と防腐魔術と自律思考魔術、自律行動魔術その他諸々の重ねがけにより自立しつつ強制的にこっちの命令も聞く奴隷が完成するということだ。」


なるほどつまり俺はこいつの奴隷になってしまったわけだ。


「おま…アマンが死んだらどうなる?」


「お前が今自分の意思で動けているのはお前に埋め込んだ魔道具によるものだから、定期的に私に魔力を注入されないと腐って死ぬ。まぁ私の魔力でなくてもいいが、お前の見た目は完璧に人間だから他の魔族に助けは求められんだろうな。人間にも多少魔力はあるそうだが、まぁ足りんだろう。」


「そうか…分かった。次で最後だ。

何故俺をゾンビにした?」


「この仕事はずっとここで静かな美しい森を眺めてその感想文をお偉い方に見てもらうという素晴らしく…暇な仕事だ。娯楽が欲しかった。

それと…この仕事の関係上聞かなければならないことがあるから」


「なるほど…まぁ答えるかは考えといてやる」


「理解できたか。今の自分の状況が。」


「あぁ、どうやら俺はお前に逆らえないらしいな。一生。」


「そういうことだ」


刹那、俺は奴の顔面に蹴りを入れようとする。

が寸前のところで体の動きが止まった。


「あ?!」


そして体が硬直した約2秒後右手の人さし指が勝手に反対に曲がる。強烈な痛みが走る。


「馬鹿が。私が腐敗物操作魔術でお前を強制的に操れることを忘れたか?魔力の補充問題抜きにしてもお前は私に逆らえない!!」


折れた指が強引に元の状態に戻った。


「クソっ!!」


床を叩く。

最悪だ。一生こんなやつにに飼い殺されるっていうのか。なんでこんなことになるんだ。気に入らないやつにコケにされても何もできないなんて。


「クソっ!!!!」


「まぁ落ち着けよ。別にそんなに悪いことでもないよ?」


「ニヤニヤするんじゃない。吐き気がする」


唾を吐こうとするが、体が固まって、できない。


「…ここまで敵意剥き出しだと逆に興味が湧くな。

何故だ?何故お前らは、なんでそんなに魔族を憎む?歴史上のいざこざだけでは説明がつかない。

お前らの家族が我々に殺されたのだとしてもソレはお互い様だぞ?」


「そういう人間だとか魔族だとか、分からん話は知ったこっちゃない。俺は魔族とやらじゃなくてお前が嫌いなんだアマン。

お前のその、はなから相手を見下したような態度が俺は大嫌いなんだ!!俺ら初対面だよな!?なんでそんなに態度がデカいんだ?」


「お前が立ち入り禁止区域に勝手に入っていたから強気な態度ででたんだ。そんで身の上を聞いたら遭難だの冒険だの嘘をつきやがる。この森の入口はお前ら人間の飼う化け物猪が人魔どちらも入れないよう守っているはずだからそもそも入っているのがおかしい。だから不審と思って攻撃した。

今の社会情勢も考えると万が一があるからな」


「それは!…あ……なるほど………

そういうことだったのか……殺されても文句は言えないかも……」


「どこに逆ギレしてたんだ?」


「わるい…」


いつも人の言う事や立ち位置をよく理解せず、自分の一時の感情を優先するのはお前の悪い癖だ!

と、恩人の櫻井先生にも言われていたのを思い出した。

以来気をつけていたつもりだが…反省だ。アマンはただ仕事をしていただけだったのだ。悪い事をした。


「えーとつまりあれか?お前、なんか私の態度が嫌にデカかったから。それだけで私に対し敵意むきだしだったと?」


「…そうなるな」


「なんか、面白いけど怖いやつだなお前。

対面したとき死ぬ気で殺しに来たろ?そんだけの理由だったのか。」


「逃げれるなら逃げたかったが、アマンの身体能力を前にしては、何しても生き残る選択肢はなかった。

なら少しでもダメージを与えてから死のうと。」


「身体強化の魔術は心肺機能までは強化できないからあのままなら逃げ切れていたぞ。今までの戦争で白兵戦における魔族の持久力の脆弱さは人間の兵士どもに知れ渡っていると思っていたが…」


「へぇ…」


「なんか…とんだ入れ違いがあるようだ。私はてっきりお前を人間界から来た兵士かと。」


「違う…何というか…本当にすまない。」


「いやいい。こちらも少し事情を聞いておけばよかった。」


「…お前、思ったよりいいやつだな。」


「普通の人間には違うさ。お前は話ができそうだから敬意を持って話そうと決めたんだ。」


「そうか。ありがとう。」


「…お前のその面倒な沸点も、切り替えの早さも、それに付随する行動の思い切りの良さもだが、やっぱり変だ。お前魔族に対して何も感じないのか?どこか人間らしくない。」


「それは…あれだ。訳あって俺はこの世界のことを何も知らないんだ。」


「どういうことだ?あ、待て。その前に、さっきも言ったが私はお前に聞かなければならないことがある。

お前どうやってこの森に入った?お前はこの森の中心に近い所に突然現れたような反応を示した。コレは魔術の中でも特に魔力を食う転移魔術でなければあり得ない。人間に扱えるものじゃない。」


「俺が言ったことが嘘か本当か判別する手段はあるか?少し、信じてもらえるか自信がない。」


「なるほど……ちょっと待ってろ。今それができる魔道具を持ってくる。飲み物いるか?」


「俺飲み物飲めんのか?」


「基本的な身体機能は再現するようにした。」


「じゃあ頂くよ。」


「そこの椅子に座っててくれ。」


アマンが魔道具を取りに行った。俺もアマンに言われた通り木製の暖かみのある椅子に腰掛けた。

アマンはいい奴だった。第一印象と言動でだいぶ軽蔑していたが、いざ腹を割って話し合えばただ真面目で優しい話ができる奴だ。

相手の悪意は自分の写し鏡。

俺の少年院時代の恩人の櫻井先生の言葉だ。元の世界でソレを実感できたことはなかったがこの状況で初めてその言葉の意味を理解できた気がする。

そりゃ戦争中に敵が自国の近くで不審な行動をしていたら怖いだろう。混乱していたとはいえ俺はそういうことも考えずに…


「はぁ…」


うっかりため息ついてしまった。あっちはもう割り切ってるっぽいし俺もしゃんとしなくては。

考え事をしているうちに、アマンがティーカップと変なおもちゃを持ってきた。


「ココアだ。」


こっちにもカカオあるのか。


「ありがとう。…あーその、それ。それなのか?嘘を判別する魔道具。」


「見た目はふざけているが性能は保証しよう。

子供用のおもちゃとして販売されたが、性能が本物すぎて悪用するものが多かったため販売中止になったんだ。新魔王政府によって回収されたがその一部はこうして公務員の仕事に用いられる」


その魔道具はいわゆる魔族、の中年男性の上半身をコミカルにしたようなデザインで、頭頂部が見事に禿げ上がっていた。なんだコレ。


「嘘をつくと頭が光る。」


「なんだコレ。」


「まぁ細かいことは置いておけ。お前の話が聞きたい。」


「まぁ、分かったよ…」


なんか知らないが出鼻をくじかれた思いだった。

ココアを一口飲む。ホッとする味だ。


「じゃあまずは…」


俺は自分がこの世界と別の世界から来たらしいこと。元の世界は魔術とか魔族とかいなくて人間が科学技術を用いて単独で発展してきたこと。どうやって来たかは分からなくて、気がついたらこの森で倒れていたこと。腹が減ったから食べ物を探して歩いていたらここについたこと。これらを事細かに詳しく説明した。この間におっさんの頭が光ることはなかった。


「…今日はお菓子を食べるつもりはない」


おっさんの頭が光った。


「今日はお菓子をモリモリ食べるつもりだ」


おっさんの頭は光らない。

アマンがなんかしだした。


「どうした?」


「いや、突拍子がなさすぎてこの魔道具に故障がないか確かめたくなってしまって。

…本当のようだな今の話全て。」


「まぁ信じ難いだろうが、そうなんだ。」


「……少し考えさせてくれ。」


頭を抱えている。可哀想に。ココアを一口飲む。ちょっと冷めてしまった。だがこれはこれで悪くない。


「…1つ聞かせてほしい事がある」


「なんだ?」


「お前は今後どうしたい。」


「アマンの奴隷じゃないのか?」


「この話を聞いてそんな事言う奴は魔族じゃない。」


「そうか…俺は、元の世界に帰りたいと思っている。」


「そりゃそうだな…そうだと思ったから考え込んでいた。」


「どういうことだ?」




「お前は元の世界には帰れない。絶対に」

なんか矛盾あったらすみません。

主人公どうなるんですかね。

一応言っとくとアマンは女性で

主人公は男性です。

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