6.決意
さて、あれから1年以上過ぎゲームが始まる学園入学まであと2年となった春のある日のこと。
13歳となった俺は机で手帳と睨み合っていた。
あと2年あるとはいえ、無策で挑みBadエンドというのは絶対避けなければならない。
ということで状況の整理と今後の目標、対策を考えることにした。
実は、俺は男女の恋愛はできるのかを確認してみたことがある。
町にいる女の子に声をかけてみると、みんな既に好きな相手がいたり婚約済みで、
両親に縁談はないか聞いてみたところ冗談扱いされ笑い飛ばされてしまった。
そして、ここはやはりそういう世界なんだと理解した。
ゲームの大枠の内という制約はあるとしても、俺は俺としてこの世界で生きていくわけで卒業はゴールではない。
しかし俺自身に卒業後はどうしたいのか、どうなりたいのかといった目標がないことに気がついた。
主人公はどうだったかというと、恋愛に興味はなく目標もなかったが攻略対象との出会いで恋が芽生え目標ができていくという流れがあった。
そういえば俺もそんな主人公に共感したからこそゲームに没頭できてたんだった。
俺の場合は恋愛はできなかっただけで興味はあったが。
俺は侯爵家ではあるものの、一般的には家督を継がない次男以下の貴族令息は卒業と同時に家を出るのが普通だ。
その場合、騎士や官僚となり立身出世を狙うか、商才があれば町で店を持ち経営者となるか、後継者のいない家への婿入りを狙うことが多い。
運動神経皆無の俺はひとまず勉強を頑張り官僚を狙うのが1番現実的なところだろう。
本当にやりたいことができたとしても教養はあるに越したことはない。
カルロ先生という優秀な家庭教師もいるしな。
次に攻略対象との関わり方について。
全攻略対象全ルート回避はできないだろうし、恋愛ルートは無理だ。
俺が王妃になるような国はすぐに滅亡するだろう。
友情エンドを狙う場合、今ある情報だけで範囲で判断すると無難なところは幼馴染のエリオット、騎士のダンテ、執事のリカルド辺りか。
ひょっとすると複数もしくは全員友情の大団円エンドがあるかもしれない。
あるのであればそれが理想的だし、ゲーマーとしては是非とも攻略したい欲が湧き上がってくる。
しかしセーブもロードもできない1度きりの人生において、特定ルートを狙った暗中模索はリスクも大きい。
ここまで考えて、ふと…ゲーム世界とはいえ攻略のことばかり考えて生きて楽しいのか、後悔しないのかという考えが頭に浮かんだ。
好きなゲームを攻略するのは楽しいけど、それは主人公としてプレイしているのであって、俺が俺として生きると考えてみると、一旦ゲーム世界ということは置いておいて、俺自身が出会う人達と向き合い心のままに行動したほうが楽しいに決まっている。
当たり前だけど、それが人生だ。
そうして、一旦ルートや選択肢ということは考えず、全力でこの世界で生きるという目標ができた。
今回は主人公のみ。
今までゲームとしてどこか客観視で生きていましたが、自分自身の人生として生きることを決めます。




