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59.世代交代

学園生活最後の年、俺は生徒会の本格的な引き継ぎを行っていた。

業務の引き継ぎは去年補佐をしていた2年生が役員に繰り上がるためほとんどないのだが、俺独自の引き継ぎがあった。

それは…生徒会カレーだ。

去年好評だったことから生徒会の出し物として定番化することになったのだ。


「これは去年出した2種のカレーの作り方だ。去年と同じものを再現するもいいと思うけど、香辛料の配合を変えたり具材を変えてみて新しいものを作ってもいいと思うよ。」


「ありがとうございます!前回食べさせていただいたカレーが忘れられなくて自分達で作ってみたかったんです!…でも、自分達だけの特別なカレーも夢がありますね!新しい役員達と話し合ってみます!」


「ああ、とびきり美味しいのを頼むな。」


「はい!先輩達の分は準備しておくので必ず食べに来てくださいっ!」


次の生徒会長は声が大きく元気もいい。

これまでとはまた違った雰囲気の学園になるだろう。




園芸部は1年生の女の子が3人部員として加わった。

植えた野菜の収穫を終えた後は全て花を植えることになった。


「これはゼラニウム。虫除けにもなるし魔除けにもなるという伝承がある。こっちはラベンダーで鎮静効果がある。お茶にして飲んでもいいし、香りを活かしてポプリにして寝室に置くと安眠効果もある。どちらも観賞用にも実用にも向いた花だ。」


エリオットが新入部員に説明をしていた。


「部の活動成果を残す為に、今年は程よく育った頃に鉢植えにして施設に寄付する予定だ。次からは皆が主導でやってもらおうと思っている。来年は先ほど言ったポプリ作りもいいだろうな。同じポプリでも花が変われば効能も変わるから色々な種類を作るといい。」


これまで通りの野菜にしなかったのは、土も触れたことない子達に鋤だの鍬だのはさすがに難しいだろうとスコップでも作業ができるようにエリオットが提案したのだ。


「こっちの方が園芸部らしいな。」


「まあ、そうだな。野郎2人なら実用性に全振りでいいが女の子にはこういう方がいいだろう。」


「それはそうだ。」




今年の学園祭はようやくクラスの出し物に全員で参加できる。

今回の出し物は皆待望のお化け屋敷になったのだが、未だに暗闇を克服できていない俺は小道具や衣装作りと当日の受付担当にしてもらった。

準備から当日までのほんの少しの間だが勉強のことは忘れて思い出作りをしようと思う。


「採寸を言い訳になどせずとも好きに触っていいのだぞ。」


王子の吸血鬼衣装の為に採寸しようとしたところ、人のいない教室に連れて来られた。


「それでは両手水平に広げて…はい下ろして。…はい、終わったよ。」


巻尺を当て最低限の接触で採寸を終えた。


「もういいのか?それでは次は僕の番だな、好きに触らせてもらおう。」


そういう思い出は想定外だ。


「俺は作業に戻らないと。型紙担当に採寸結果を伝えて布を切ったり縫製したり…終わったら吊るす人形も作るから忙しいなぁ。」


「ふん、雰囲気をぶち壊すな。」


「そういえば今年新カレー出すって会長が言ってたよ。食べに行かないとね。」


「俺の話を聞いているか…?」


「聞いているよ。無視してるだけで。」


「なんだと?」


「こっちは真面目にやってるんだからな。アダルも他の人に迷惑かけないよう早く戻らないと。」


ごねる王子を宥め俺たちは準備に戻った。

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