55.ピザ
2度目の夏休み、収穫祭。
エリオットと2人で今日は収穫した野菜でコーンピザを作る。
コーンは早々に間引いてヤングコーンとして収穫済みだ。
「普段もピザはよく食べるけど薄い生地だからな。たまにはパン生地のピザを食べたいよな。」
トマトとバジルといえばやはりピザだ。
「具盛りだくさんで作ろうぜ。」
転生の共通点が分かって以来エリオットとはさらに距離が近くなった気がする。
「唐辛子多めのとマヨコーンのも作ろう。」
「いいね。こっちだとそういうジャンキーなの無いしな。」
「エリオットって意外とそういうの好きなんだ?」
「ああ。なんかスローフードが多いしな。」
「確かに。俺は逆に和食を食べたいよ。醤油、味噌、ソースが恋しい。」
「そればっかりはどうしようもないな。」
「そういえば…いつから俺のことが好きなんだ?」
焼けたピザを食べながらずっと気になっていたことを聞いてみた。
「ゴホッ…なんだよ唐突に。」
「ごめん、無神経だった。忘れてくれ。」
「いや、大丈夫。むしろ聞いてくれ。
初めて同じクラスで隣の席になった時があっただろ、あの時かな。」
「小学生の時からってことか。」
「ああ。
最初は一緒にいるのが楽しいとか、ずっと遊びたいって思っていた。
アキラが他の人と遊ぶのがだんだん…嫌になってきたんだ。
俺だけを見てくれたらいいのにって。
アキラのことを気になると相談してきた子には、それは恋じゃなくて友達感情だって諭したりもした。
だんだんこれは友達としての感情じゃないと気づいたんだ。」
雲行きが怪しくなってきた。
そしてさらっと聞き捨てならないことを言ったぞ。
「俺の恋は一般的に受け入れられないことは分かっていた。
…それなら俺は友達のままもでいいから、せめてアキラが誰のものにもならないでほしいと思った。」
俺に恋人ができなかったのはエリオット…というかヒロが原因なのか?
「大人になって、乙女ゲームにハマっていると聞いたときは驚いたが、俺には朗報だった。
女の子が主人公で複数の男キャラと恋愛するゲームだし、アキラにもきっとそういう願望があるんだって。
…男の俺でも受け入れてもらえるかもしれないと思ったんだ。
結局伝える勇気もなく死んでしまったけど。
…ここで迎えた新しい人生、前世の記憶を持ち越したせいでずっと後悔する日々だった。
毎日のように夢で事故の瞬間がフラッシュバックするし、告白できなかった後悔とアキラのいない世界で生きていかないといけない現実が辛かった。
…でも、また会えたんだ。アキラに見た目も内面もそっくりなルシオに。
きっと神様が俺にチャンスをくれたんだと思ったよ。
前世よりしがらみもライバルも多かったが。
後は話した通りだ。
ルシオを迎えるべく領地立て直しを目指し父と頑張ったが厳しいだろう。
爵位返上することになるだろうが、これはルシオとは関係ないからな。
あくまでも家族の総意で決めたことだから。」
「そうか。今まで呑気に生きてきたことが申し訳ないな。」
「俺は土俵に上ることもせず勝負を放棄するのが嫌でこうして想いを伝えた。
だが一度失った辛さを考えると同じ世界で生きていけるだけでも十分なんだって今なら思えるから。
罪悪感とか同情とかで選んでも俺は…いや、それでも俺は嬉しいけど、ルシオがきっと後悔すると思うからやめた方がいいぞ。」
「分かった。ちゃんと考えるよ。
…それにしてもすっかりピザが冷めてしまったからもう一回窯に入れよっか。食べ終わってから話を切り出せばよかったな。」
「聞いてくれてよかったよ。こっちからは話題にしにくかったから。
…本当に、こうして聞いてくれて、
…それでも変わらずに接してくれるだけで、
…本当に嬉しいんだ。」
エリオットは泣いていた。
俺は窯に入れようとしたピザを卓に戻し、椅子に座っているエリオットの頭を撫でてやる。
すると俺の腰に抱きつき腹に顔を埋めてきた。
「…こうするのも2回目だな。」
「好きだ。…やっぱりどんな理由でもいいから俺を選んでほしい。」
俺は答えずそのまましばらく頭を撫でていた。




