43.異国の料理
少し前、ジェローラモから近況報告の手紙が届いていた。
例の料理人の体調も万全となり出店の相談がしたいという内容だった。
帰省した際に父へ報告していたのだが、早速店の準備ができたと連絡が来た。
ジェローラモが客として店に行くとのことで俺は従者2人を連れて食事に同席することにしている。
ジェローラモはリカルドが同郷だと知っているし、リカルドが席に着くのならダンテもどうかとジェローラモが提案してくれた。
リカルドにはヴィゴーレの料理を出す店が新しく領内にできたからと伝えている。
リカルドは出身を明言したことはないが経緯から察していることはわかっているはずだ。
「ジェローラモ様お待たせしました。従者の同席も含め本日はありがとうございます。」
「アルタヴィラ侯爵様の力添えあってこそだからね、こちらも感謝しているよ。」
席に通される。
ジェローラモの行きつけの店のように奥に別室があった。
「見慣れない内装ですね。」
「ええ、ヴィゴーレ王国の伝統様式を模しているそうですよ。」
「なるほど、この内装だけでも来客の動機になりそうですね。」
「料理も期待してよいと思いますよ。挨拶は食後に。」
「わかりました。
あ、そういえば忘れないうちにこれを。」
「手紙に書かれていた、部活動で作った野菜ですか。」
「はい、日持ちするように酢漬けにしています。このままだと1ヶ月は十分持ちますが、開けた後は翌日には食べ切るようにお願いしますね。」
「この瓶詰めもルシオ様が?」
「はい。あ、きちんと煮沸しているので安心してください。」
「別に品質を疑っているわけではありません。ルシオ様から手作りの品をいただけたのが感慨深くて。
しばらくは寝台の傍に飾って朝と夜に眺めましょうかね。」
「…観賞用ではないですから早めにお召し上がりください。」
「是非ともワインと合わせて楽しみたいと思います。」
そうこうしていると料理が運ばれてきた。
角切りにした野菜のマリネや、ミネストローネにも似たトマトのスープ、一見米にも見える粒状のパスタ、挽き肉のパイ包み。
食後にはドライフルーツと蜂蜜が沢山かかかったパンケーキとミントティーが出てきた。
「どれも独特の香辛料が効いていて美味しかったです。」
「ほとんどの料理に同じものが使われているそうですよ。」
「見慣れない珍しい料理にもかかわらず違和感なく美味しく食べられたのは料理人の腕によるものでしょうか。」
「ええ。元々国賓を持て成すこともあったでしょうから、国毎に合う味付けも研究されていたことでしょう。」
「なるほど、それほどの方が市井にいらっしゃるのはなかなかに勿体ない気がします。」
「輸入が難しい野菜などはこの国のもので再現しているそうです。あと寒い時期は鍋料理がメインになるのですよ。」
「冬にもまた是非来たいですね、楽しみができました。
…ダンテはどうだった?」
「慣れない香りに驚きましたがどれも美味しかったです。」
「リカルドはどうだ。」
「はい、どれもとても美味しかったです。ルシオ様の口にあったようでしたら今後の食事にも取り入れられないか検討いたします。」
ダンテはいつも通りで当然ではあるが、予想と違いリカルドは不自然なほどいつも通りだった。
元々60話で最終回を迎えるつもりだったのですが少し延びそうです。
ストックがほとんどないため平日は2話がやっとになってしまいました。
週末は3話更新できるように目指します。




