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41.帰省

学園祭後の週末、俺は侯爵領に帰っていた。

入学後はなんだかんだ忙しく、初めての帰省となった。


家族への顔見せと学園生活の報告が主だが、俺の卒業後に従者2人の処遇予定を聞くのが目的だった。


「ところで父上、今ついております護衛と執事ですが、私の卒業後の予定は決まっているのでしょうか。」


「代々騎士爵の家に生まれたダンテはともかく、リカルドはルシオが拾ってきたが拾ってきたのだ。お前がリカルドの意向を汲んで今後の道を提示してやるのが筋ではないか。」


「ですが実際の雇用は侯爵家でしているわけですし…。」


「あれは居候みたいなものだ。衣食住の提供の代わりに働いているだけで、元々賃金で雇っているわけではないのだ。

学園行ったのもあれの意思だ。ルシオ達の生活費は渡しているが、リカルド個人に対してのお金は全て辞退された。

他家の執事にも劣らぬ働きをしてくれたからな、何か望みができた時には侯爵家としてできる限りのことはする。」

…初耳だった。

てっきり雇われて将来に向けお金を貯めているのかと思ったが、身銭が無くては何もできないではないか…。

生活が保障されるとはいえ無賃労働か、なおさらいつまでも束縛していてはいけないな。

拾われた恩義から言い出せない、と言うこともあるかもしれない。

リカルドほどの腕があればどんな仕事に就いても成功するだろう。


「ダンテはどうなるのでしょうか。」


「あれは騎士として訓練の時から評価が高かったそうだ。王宮騎士団にも入れる腕はあるだろうが、お前が卒業する時には23、4歳で入団には遅いかもしれないな。そもそも本人に出世欲とか、そういった意思はなさそうだが。

生まれもよく真面目で護衛としては最適、望めば侯爵家での実績を元に推薦状を書くこともできる。あれもまだ若い身、私自身は本人の意思を尊重し応援してやりたい気持ちはある。」


「何か将来について話されたことはあるのですか。」


「いいや、何も。自分からはそういったことを口にしないし、私も聞かない。お前も聞いてないだろう?」


「ええ、そうですね…。」


「あれが何も言わず、ルシオが手放すのであればこの屋敷付きにしてってもいいさ。」


父は良く言えば意思尊重、…放任や無関心とも言えなくもないが、俺自身が社交も勉強も好きにさせてもらっていたのは有り難いと思う。


手綱を握られていないということはダンテもリカルドも、本人の意思次第でどこにでも行けるということ。

ダンテは騎士団に入るのか、リカルドは国に帰るのか。

何をしたいのか聞きたい。


俺は…将来官僚試験に合格したとて、2人を雇えるだけの給料は見込めない。

大臣や事務次官レベルだと別だろうが。

なれるかは分からないし、なれたとして何年後になるだろうか。

そうなった時に2人には側にいてほしいと思うが、難しいだろうな。


…1人で生活する練習もしないといけないかもしれない。


「外から見るとお前達3人はなんか似ているな。もう少し誰かに甘えたり、欲を出してもいいのだ。

私は卒業後に出て行けと言ったこともないのに、なぜそんなに独り立ちを焦る?

昔から最低限の社交で、華美な服飾や貴金属も望まず、手も金も掛からぬ子だった。お前の親はそんなに頼りないか。」


「いえ、そんなことは。しかし、家は出ないといけないと勝手に思い込んでいたのは事実です。

もう少し自分の今後については考えてみたいと思います。」


「ああ。周りも自分自身ももう少し信用してやれ。思いやってるつもりが傷付けていることもあるからな。」

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