39.学園祭準備
新生徒会のお披露目は滞りなく終わった。
1年生中心のため異例ではあったが、事前に新任者の情報や王子の指名による人選であることが広まっていたため異を唱える人はいなかった。
今は学園祭に向け、クラスも生徒会も準備で慌ただしい。
俺達生徒会役員は全体準備で手一杯のためクラスの方はほとんど参加できていない。
簡易小屋を立て一軒のお店で食べ歩きもできるワッフルの出店に決まったとエリオットから聞いた。
そしてエリオットは次期領主にもかかわらず大工仕事を請け負っているらしい。
体を動かしている方が性に合っているそうだ。
当日も含めて手伝いができない俺達は、その分見回りの中で宣伝することを約束した。
学園祭までの間は毎日生徒会室に集まり報告することになっているため王子とも毎日会うが、以前にも増して距離が近くなったようで困っている。
「なぜ離れて座る。」
「アダルが寄ってくるから。」
「腹心になるんだろう?何がおかしい。」
「物理的にそばにいるという意味ではなかったんだが…。」
「ルシオはいつになったら素直になってくれるのか。」
「いつだって俺は素直だよ。」
「まあそれはそうなんだが。まだお子様なのか。」
「その通り、まだ俺は成長期真っ只中の子供だよ。」
「ふむ、子供のお前ももうすぐ見納めかと思うと名残惜しい気もするな。」
「一体なんなんだ、さっきからじろじろと。早く誰か来ないものか…。」
「お前こそなんなんだ。2人の時間を楽しもうとは思わんのか。」
「今は生徒会の時間だ。」
「まだ誰も来ないんだからいいじゃないか。」
チラッと王子がドアの方を見た。
「…もしかしてもう来ている?もしかして入ってこないように指示を…。」
「……いや?」
なかなか他の役員が来ないと思ったら…。
呼びに行こうとドアを開けたらドアの前にアンナが、少し離れたところに他の役員もいた。
もしかして覗いていたのか?
王子の指示か、気でも利かせたつもりなのか。
「…早く始めましょう。」
俺は小さくため息をつくと部屋に呼び込んだ。
…開始が遅れた分帰りも遅くなりそうだ。




