38.望み(王子視点)
ルシオと出会ってから、いや出会う前からずっと気になっていた。
実際に会ってみたら王子に対する敬いや憧れや媚びといった目線ではなく、親しみ、懐かしみ、憐れみ…今まで感じたことのない感情のこもった目線で見つめられた。
一見冷めたようで強烈な熱を含んでいた。
初対面の際、気づいたら僕は挨拶もそこそこに名前で呼んでほしいと頼んでいた。
どんな声で僕の名前を呼ぶのか、彼の熱の正体を知りたかった。
しかし、なかなか会う機会がなく、アンナに相談したところすぐに彼を呼び出してくれた。
僕にあの目線を変わらず向けて惑わせるくせに、アンナや他のものにも愛想良くする姿は気に食わなかった。
僕に何かを求めるでもなく、近寄ってくるわけでもないが、彼の目線の熱は消えなかった。
恋慕によるものかと思い発破をかけてみたこともあるが反応は期待したものではなかった。
彼はその目に宿る熱を隠そうとしなかった。
いつも分かりやすく素直だが、目の前にあるのに肝心なものだけ掴めない。
時に腹立たしくもあったが、王子ではなく僕自身がこんなに振り回されている事実に気がついた時は僕も普通の人間だと感じることができて嬉しかった。
彼は一度だけ僕の前で涙を流したことがある。
彼はなんでもないと誤魔化していたが、あのひどく苦渋に満ちた表情を僕は見逃さなかった。
全く心当たりはないが僕の何かが彼をそうさせたのだろう。
何も言わない彼が本当にもどかしかった。
彼の周りには幼馴染以外にも懇意にしている者が何人かいる。
その者たちには僕にはなかなか見せない笑顔も見せているようだった。
学園に入学後はなんとか近くに置いておけないか考えたが、まるで僕を避けるように初日から部活に入っていた。
アンナにお互いの今後の今後も含めて話し合ったが、彼を成績を口実に引き込むのはどうかと言う話になった。
アンナは公爵家として王妃の話がくれば断ることはしないものの、ギリギリまでお互いの望む相手を見極め悔いのないような選択をしようという話になった。
…僕の、望みか。
ずっと彼から感じる熱が恋慕によるものであってくれと思っていた。
…つまりは僕が彼を欲しいのだ。
そして彼にも僕を求めてもらいたかった。
最初の試験で彼は満点を取り、予定通りそれを口実に生徒会に入れることができた。
そして、まるで最初から生徒会で仕事をする気があったかのように手際良く働いた。
彼は嫡男ではないため生徒会での繋がりや経験は将来の就職にも有用なはずだ。
そんな彼がなぜ生徒会入りを避けるような行動をしたのか、以前彼が見せた涙と繋がった気がした。
国には仕える意志はあるようだ。
となると、僕のことが嫌か、僕を王と認めないから仕えたくないのか。
いずれ王となる僕がたった1人、求めた相手に拒絶されるのか…。
今も僕を見るあの目に熱は残っているのだろうか。
意を決して問い詰めたところ、僕の認識は正しくなかったようだった。
抱きしめられたことは驚いたがこれからそばにいてくれることがわかり安心した。
…それだけでよかったはずなのだが、直後に真っ赤な顔で逃げ出す彼を見たら疑問が確信に変わった。
きっと彼も僕と同じ気持ちで、熱の正体なんだと。
改めて問いただすと、明らかに動揺していて可愛かった。
彼自身もまだ気持ちの整理ができていないようだったため、俺は待ってやることにした。
彼は男だということは誰が見てもわかる。
次代の王について、王家の血筋が必要であれば従兄弟やその子を養子に迎え王子に仕立てても良いのだ。
僕は彼の言う良き王を目指すと共に彼と互いに唯一無二の存在でありたい。




