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34.愛の種類

試験発表後の週末、俺はジェローラモと城下町に来ていた。


「しばらく見ないうちにまた背が伸びましたね。」


「はい、それでもまだまだ周囲には置いてけぼりですが。ジェローラモ様に比べるとまだまだ子供ですね。」


ジェローラモ様は22歳、俺よりも7歳上だ。

ダンテやエリオットに比べると細身だが、長身で目立つため横に並ぶ俺は本当に子供、よくて弟といったところだ。

恋人として見られたいわけではないが、早く友人として見られるようにはなりたいとは思う。


「すぐに伸びますよ。今のままでも愛らしいのですから背伸びなさらずありのままでいてください。」


歯の浮くような台詞に、つい苦虫を潰したような顔をしてしまう。


「すみません、そういった台詞には抗体がないもので…。」


「わかっていますよ、でもその反応も見るのが楽しいのですよ。」


追撃を喰らってしまった。

本人は爽やかな笑顔で本当に事もなげに言うため対抗する。


「…今日で会うのは最後にしましょう。」


「すまないすまない!ほどほどにするから怒らないでくれ!」


この手札を切ると俺が優位に立てることを知った上で使うのは、俺はこの好意をすでに受け入れているということなのかもしれない。


「やめてはもらえないのですね。」


「…私の楽しみの全てを奪うなんて残酷なことはしないでしょう?」


縋るような顔でこちらを見てくる。

明らかに芝居がかっているがついつい根負けしてしまう。


「何度も同じ手は通用しませんからね。」


「それでは新しい手を考えないといけませんね。」


この日はジェローラモが最近見つけたという路地裏のレストランで食事をした後、いくつか古美術商を回り解散となった。



最近、色々と予想外な出来事は多いものの充実しており日々が楽しい。

これは周りの人たちのおかげである。

凡庸な俺には本当にもったいないと感じるほどだ。

そしてそれは様々な好意のうえでのこと、ということもわかっている。



そういえば、前世では昔から女の子を好きになって、付き合って、結婚するのが当たり前で、それ以外はあり得ないと周りが言ってたし、自分自身もそう思ってた。


かわいいな、きれいだな、いい子だなって思う感情が“好き”ということだと思ってたし、それ以上の感情についてはゲームでよく見てきたけど、ストーリーを盛り上げるファンタジー要素のようなもので自分自身にはないものだと思っていた。


今感じている心地よさは友情によるものなのか。


少なくともジェローラモはかわいげげもあるしきれいでいい人である。


きっと相手が女の子だったら恋だと感じていたのではないだろうか。



男だから嫌いになるのか。



男だからとこの感情を否定するのか。



一緒にいて楽しいと感じ、もっと一緒にいたいと感じるのは男女に差はない気がする。



ジェローラモに対してだけじゃない。

今感じている気持ちが恋になりうるのかはわからないが、男だからという理由で切り捨ててしまうのは惜しい。


恋慕以外にも近い感情はある。

尊敬、友愛、憧憬、親愛、慈愛…そういった感情でもこれまで無視してきた、押し殺してしまっていた気がする。



俺の中で1人1人との気持ちが何なのかを考えて感じていきたい。



それが相手の望むものと違ったとしてもそれが真摯に向き合った結果であれば1つの答えになるんだと思う。

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