33.畑
放課後、エリオットと花壇や畑の整備に取り掛かった。
事前に目印を作っていてくれたためその通りに土を掘り返していく。
ある程度は覚悟していたが、想像をはるかに上回る大変さだった。
「芋のあたりはもっと掘り返さないといけないから俺がするよ。」
「ああ、すまない。全然鍬が入らなくて。」
「初めては皆そんなもんだよ。」
「いやほんと、さすがだよ。エリオットのところだけもう土がふかふかだ。」
「畝毎に置いてある袋を開けて、中を全部出してくれ。肥料の計量は俺がやる。」
「了解。」
エリオットが鍬一本で器用に土を混ぜる姿を見守る。
あっという間に整備が終わり、実質手伝ったのは植える作業だけだった。
「すまない、ほとんど任せっぱなしだったな。」
「まあ次回から少しずつ作業を増やしていこう。」
「もっと体力つけないとな…。」
「体力だけの問題じゃないからな。姿勢と道具の使い方次第だ。花壇も畑も秋には総植え替えだから、ある意味今回より大変だぞ。」
「見て盗みますよ、師匠。」
夜、その日の出来事を振り返っていた。
まさか試験を頑張ったことが裏目に出るとは思わなかったが、悔やんでも仕方がない。
最低限の出席で良いとは言われたものの、生徒会役員という肩書をもらう以上はお飾りにならないようにはしたい。
そういえば役職について聞き忘れていた。
この学園の生徒会は大きく分けて各クラスの委員会から選出する委員長からなる専門委員会と執行部会とあり、俺は後者だ。
選挙制ではなく現役員による後任指名、もしくは会長による指名だ。
最低限でということは俺は定例での議事録係で書記になるのか…?
ゲームではコマンド選択だけでスチルイベントでも「2人きりだね」みたいな生徒会とは無関係な内容だったため役職については触れられなかった。
会計、庶務、広報は忙しそうな印象がある。
そして翌朝、王子へ挨拶がてら聞いてみた。
「おはようアダル。昨日の話だけど、そういえば役職がなんだったか聞き忘れててさ、俺は何をしたらいいんだ?」
「ああ、アンナと一緒に副会長だ。」
「副会長…?」
「僕の補佐役だ。」
「アンナ様がいるのであればもう1名の補佐役は既存の役員の方がいいのでは…?」
「それは実務に即した会計と庶務役にお願いしている。だから大丈夫だ。」
「何も知らない俺が副会長とかお飾り決定じゃないか。」
「それならずっとそばにいるか?公私共に腹心となるのも僕は歓迎するぞ。」
「それは…。」
否定しかけたが、ふと考えると、官僚も上り詰めると国王に近くなるわけで、いずれ腹心になるということではないかと考えた。
「…いずれそうなるかもしれないのかな。」
気づいたら遠回しとはいえ肯定する返事になってしまった。
「いずれとはどういうことだ、その気があるのであれば今でも問題ないだろう。」
「…いえ、官僚を目指す上で最終的に最終的に側仕えのようになる可能性があると考えただけで…。」
「官僚になるつもりだったのか?国に使えるのであれば僕に使えるのと同義だろう。」
間違っていないだけに否定が難しい。
「もちろん国に仕え、貢献したいという点では正しいんだけど、外交とか交易とか国益になるように…。」
「ああ、また小難しいことを捏ねるのか…まあいい、副会長というのは決定だからな。」
王子が先に折れてくれて助かった。
しかし頭の中では、副会長とは何をするのか脳内会議が忙しくなるのであった。




