3.誕生会(前編)
「ルシオ、誕生日おめでとう。」
今日は俺の12歳の誕生日パーティで、王族も含めた歳の近い貴族の子女を招待している。
「アダルベルト殿下、本日は…
「ルシオ、そういう挨拶はいらないよ。こちらも相応に振る舞わなくてはいけなくなるじゃないか。」
「さようでござい…
「もう!堅苦しいんだって。」
「わかりました、最低限の敬語は許してくださいね。」
「頑なだなぁ。」
「殿下も、ですよ?」
「アダルでいい、様も陛下もいらないからな!もう12歳だし公の場との使い分けもできないわけではないだろう。」
「…はぁ。わかりましたよ、アダル。」
ため息をつきつつも、少し強引なやり方に年齢相応の人間味を感じ微笑ましくもある。
そういえば、ゲームの序盤から愛称呼びだったのは、地位関係なく“同級生”として過ごすためかと思っていたが、この頃からだったんだな。
ゲームは学園入学から始まるうえ、こういったやり取りは回想シーンにもなかったため設定資料集を読んでいるような気分になる。
発売前に転生してしまったけど。
「すまない、挨拶待ちの列ができてしまった。主役をあまり一人占めしていちゃいけないなから一度失礼するよ。またな。」
「ええ、お祝いありがとうございました。」
イヴレーア王国の第2王子のアダルベルト=イヴレーア。
主人公と同い年で生前唯一エンディング攻略したキャラクターだ。
金髪碧眼の眉目秀麗な正統派王子で、体が弱く引きこもりがちな第1王子よりアダルベルトを次期後継者として推す声も多い。
彼のルートはTrueエンドでは国王となり王妃は聖女、主人公は第二王妃となるが、Goodエンドでは国王とはならず大公として兄を支え主人公はその妻となる。
Badエンドは非常に多く、ほとんどが王位争いによるもので暗殺や国の分断、内戦と規模も大きい。
Normalエンドがいわゆる友情エンドだが、アダルベルトが継承権を放棄し市井に降るというなんとも後味が悪いもの。
このゲームの攻略ポイントはタイトルの通り心に灯火を、アダルベルトの場合は眉目秀麗な仮面の下にある兄へのコンプレックスや人間不信といった心の闇を受け入れて癒すこと。
闇を抱えつつも周囲に悟らせず期待に応えるために常に研鑽し続け、平民貴族といった垣根もなく接する姿は男の俺も心底かっこいいと思った。
この世界の根幹に関わるストーリーと難易度の高さも相まって俺の攻略意欲を掻き立てたが、この人生では絶対に彼のルートに入らないようにしないといけない。