28.入学式
ついにこの日がやってきた。
俺はダンテを連れて王立学園の校門の前に立っていた。
ゲーム背景でよく見た風景が目の前に広がっている。
乙女ゲームだったものに転生して15年、やっとスタート地点に立ったのだ。
校舎は想像以上に大きく、エントランスの噴水は小さかった。
見渡せばゲームの記憶が鮮明に蘇る。
…ほとんど王子関連ではあるが。
ゲームでは会話の選択肢とは別に、放課後と週末の行動選択で好感度パラメータが変動したりスチルイベントが発生していた。
王子の場合は生徒会への参加だ。
新任教師であるカルロも学校を知るためという理由で副顧問として関わってくる。
帰宅部だと生徒教師以外の攻略対象とのイベントが発生して、エリオットは確か園芸部だった気がする。
俺は今回生徒会にだけは入らないと決めている。
単純に忙しそうだ。
帰宅部もナシ。
暇なら生徒会入れとか言ってくるに違いない。
そうなると園芸部か攻略対象に関わらない部活だが、エリオットとは一緒に食事をする約束をしているので同じ部活の方が都合がいいだろう。
俺も何か育ててみたいしな。
エリオットはダンテに追いつくくらいのガタイに育っているが、領地のおかげか花を含む農作物を育てるのが昔から好きなのだ。
学園の一角が立派な農園になることだろう。
入学式の会場に向かうとちょうどエリオットがいた。
「エリオット、おはよう。」
「エリオット様、おはようございます。」
俺に続いてダンテも挨拶した。
「おう、おはよう。制服…似合ってるな。」
「エリオットもな。背が高いとやっぱり服が映えるな。」
「なんだよ珍しい。いつもみたいに嫉妬しないのか。」
「ふん、エリオットは今日断食したいらしいな。」
「冗談じゃないか、許してくれ。」
「まあいいや、今日は。ところで部活はもう決めてる?」
「園芸部かな。運動部はお金かかるしな。」
「そっか、俺も園芸部にしようかなと思ってるんだ。」
「一緒で嬉しいけどなんか意外だったな、生徒会とか入りそうなのに。」
「俺も何か育ててみたいと思って。生徒会は忙しそうだし。」
「まあそうだな。それでも入りたいっていう奴は多そうだ。」
「今年は特に殿下もいらっしゃるし、近づきたい人はさらに多いだろうな。」
「まあ俺には関係のない世界だな」
「俺ら、な。」
「そういやクラス分け見たか?」
「いや、事前に通知されてたっけ。」
「校門脇に掲示されてたよ。」
「そうか、気づかなかった。」
聖地巡礼に浮かれて本当に気が付かなかった。
「俺とルシオは同じクラスだったよ。殿下と公爵令嬢も。」
聖女がいないことを除けばゲームの通りだ。
1学年3クラス、貴族は等分に分かれている。
クラスは便宜上分かれてはいるが成績とは全く関係がない。
その後会場に着き、王子の新入生挨拶を聞き届けた。
大勢の前で堂々と振る舞う姿見るとさすが王子だと思った。
今日はこの後教室で自己紹介と今後の簡単な説明で終わりだ。
終わったら早速入部の手続きをしてしまおう。
俺達は教室に向かった。




