22.聖女不在
帰ってきてまず書斎を調べた。
王家の歴史や伝承、王妃についてだ。
しかしゲーム中に登場するような聖女の記載はなかった。
敬虔な女性で司祭に認められると聖女と呼ばれるようになり地域住人からは崇拝の対象にもなったと記載はあるが、王族の婚姻とは無関係のようだ。
次にカルロの部屋へ向かう。
廊下に出たところでちょうどすれ違った。
外出から戻ったところだったようだ。
「カルロ先生、ちょうどいいところに。1つ質問があるのですがよろしいでしょうか。」
「ええ、もちろんです。」
「先生は聖女と呼ばれる方をご存知ですか。」
「聖女、ですか。教会で祈りを捧げる乙女の。」
「いえ、神の加護により奇跡の力で国を救うという聖女です。」
「うーん、そういったお話は初耳ですね…。申し訳ございません。どこかのお伽噺かなにかでしょうか。」
カルロは元神官だ。もし本当に知らないのであればこの世界には存在していないのかもしれない…。
「そうです、噂でそういった話があると聞いて興味を持ったのですが、なにぶん情報が少なく…、先生でしたら何かご存知かと思いお伺いしたのです。」
聖女が存在しない場合の影響を考えないと。
自分の心のままで生きていくとしても、流石に重要キャラの欠員は想定外すぎる。
既に自分の意志と無関係に強制力が働いているように感じる。
影響があるのは…王子だけか。
聖女は彼女の意思に関わらず次期国王の妃になり、Trueエンドでは王妃とはなるが形式上なのでそこに愛はない。側室の主人公が実質愛され妻なのだ。Goodエンドでは第1王子が国王となるのでその妃に。
聖女目線だと選択肢なく飼い殺しにされるのは非常にかわいそうではある。
しかし悪役令嬢のアンナ1人では片方しか席を埋められない。
それにしても女性の人員が少なすぎる…。
男はこんなにいるのに。
あ、だから乙女ゲームの:主人公が無双できるのかー。
今俺がやってるのは弾幕(好意)回避ゲームだけどな。
「そうでしたか、お役に立てず申し訳ございません。お時間をいただけるのであれば伝承に詳しい知人に聞いてみますよ。」
「ありがとうございます、是非お願いします。」
そういえば、もう1人この人生で全く話を聞いていない人物がいることに気づいた。
「もう1つだけ質問よろしいでしょうか。」
「もちろんです。」
「アダルベルト殿下は第2王子でいらっしゃいますよね。」
「はい。」
「では第1王子は…。」
「第1王子のアンスカーリオ殿下は残念ながら夭逝なされております。」
嫌な予感ほど的中する。
王妃になりたいなら僕に、と迷わず言ったことに違和感があったのだ。
既に王子は王太子、次期国王だったということだ。
「そうでしたか、伺いたかったのは以上です。ありがとうございました。」
俺が転生した時点で既に状況は違っていたのだ。
聖女がいなかったり、王子が1人しかいなかったり…。
知らないところではもっと大きな違いが出ているだろう。
しかし、王位争いによる内戦や国の分断が起きることは無くなった。
つまり王子のBadルートはほぼほぼ回避できたと言っていいだろう。
さらにアンナが王妃の座を狙えば丸く収まる。
これらのことは俺の心を少しだけ軽くした。




